コラム 2019.06.13. 11:30

好調・阪神の“象徴” 梅野隆太郎が切り開く道

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4月9日・DeNA戦でサイクル安打を達成し花束を掲げる阪神・梅野=甲子園(C)KYODO NEWS IMAGES

押しも押されぬ正捕手へ


 昨季は屈辱の最下位に沈んだ阪神。今季も開幕前の評価も決して高くなかったが、現在のところ首位・広島から1.5ゲーム差の3位と奮闘を見せている。

 二軍から“昇格”した矢野燿大新監督の下、好調・阪神のなかで象徴的な存在と言えるのが、正捕手の梅野隆太郎だろう。

 ルーキーイヤーの2014年から92試合に出場するなど、その能力は高い評価を受けていた。しかし、なかなかレギュラーを勝ち取れず、規定打席をクリアしたのは昨季が初めて。球団生え抜きの捕手では1988年の木戸克彦氏以来、実に30年ぶりの規定打席到達だった。

 ポジションを“守る”立場として臨んだ矢野監督1年目の2019年。今季も開幕マスクを勝ち取ると、ここまでチーム63試合中61試合に出場。開幕直後に左足薬指を骨折するアクシデントもありながら、わずか2試合に欠場しただけで復帰した。責任感の強さに加え、タフさも備わっている。


阪神を常勝チームへと導く存在に


 もともと買われていた打撃は春先から好調で、開幕してしばらくは首位打者争いにも絡むほど。4月終了時点で.340という高打率をマークし、5月終了時点でも.310を維持していたが、交流戦に入ってからやや失速。9日の日本ハム戦の第1打席に凡退してついに打率3割を割り込んだが、直後には5試合ぶりの安打を放つなど、現在は再び打率を3割台(.306)に戻している。

 このまま打率3割をキープすることは簡単ではないが、もし達成すれば、球団の捕手では2010年の城島健司氏以来で9年ぶりのこと。“生え抜き”に限れば、1975年の田淵幸一氏以来、実に44年ぶりの快挙となる。

 城島氏と田淵氏の間にも矢野燿大現監督と若菜嘉晴氏が3割を達成しているが、いずれも移籍組。阪神では「生え抜き捕手が育ちにくい」と言われ続けてきたが、昨季からの梅野の活躍ぶりを見る限り、しばらく正捕手の座は安泰だろう。


 守備面でも、リーグ2位の.400という高い盗塁阻止率をマーク。昨季の.320を上回っており、一段と強肩に磨きがかかっている。昨季まで賛否あったリード面も今季は飛躍的に向上。持ち前のリーダーシップもあり、投手陣をうまく引っ張っている。

 一方、イージーミスの多さは今季の課題か。失策はすでに昨季と同じ4個を記録。捕逸数もセ・リーグ最多タイの3個を数える。このあたりを改善できれば、球界を代表する捕手に成長していくだろう。

 昨季の最下位から一転、好調をキープする阪神にとって梅野は快進撃の象徴。今季は広島、巨人との優勝争いにも期待がかかるが、梅野は常勝チームへの道を切り開く存在になるかもしれない。


文=八木遊(やぎ・ゆう)

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