DeNAと2差も、後ろを振り返れば虎が迫る
9月に入り、プロ野球もいよいよ佳境。全チームが残り20試合を切ってきたなか、セ・リーグの覇権争いは混沌としている。
8月24日に首位・巨人にマジックが点灯したものの、2位・DeNAの猛追もあって1週間で消滅。その後は8月31日から9月6日まで6連敗を喫するなど失速してしまい、9月7日終了時点で2位との差は「3.5」ゲーム。残り試合と優勝ラインの計算を見れば巨人有利は変わりないものの、このあとDeNAとの直接対決が6試合も残っていることに加え、そのうち5試合が横浜スタジアムでの戦いとなることを考えると、追われる巨人に余裕はない。
一方、巨人のマジックを消したDeNAも、ここに来て3連敗と元気がないのは気になるところ。火曜日からはじまる巨人との直接対決を前に嫌な流れは断ち切っておきたい。それだけに、8日にプロ初先発となる齋藤俊介がどういった投球を披露するのか。大きな注目が集まる。
そして、そのDeNAを2ゲーム差で追いかけているのがリーグ3連覇王者の広島。DeNAとの直接対決こそ1試合しか残っていないものの、巨人とDeNAが激しく競っている間隙を縫っての上位進出という芽はまだまだある。一方、上だけを見ていては、足元をすくわれる可能性も。現時点で4位・阪神とも2.5ゲームの差しかなく、どこかで歯車が狂えば4位転落という恐れも十分ある。極めて難しい状況だ。
初の規定到達・2ケタ勝利へ…
そのなかで、チームを引っ張っていくひとりが大卒3年目の左腕・床田寛樹である。
2016年のドラフト3位で入団した大卒左腕で、1年目から開幕ローテーション入りを果たすと、プロ2度目の登板で初勝利。長らくチームに不在だった日本人左腕エース候補として大きな期待を受けていた。
ところが、3戦目の登板で左肘の痛みを発症して途中降板。その後、トミー・ジョン手術を受けることになり、残るシーズンは全休。2018年も一軍復帰はかなわなかった。
それでも今季、2年ぶりに一軍復帰を果たした左腕。4月末までに4勝1敗、防御率1.83をマークする復活を遂げると、完全に先発ローテーションの一角に定着。安定感抜群の投球でチームを支えていたが、5月に入ると流れが一変。勝てない日々が続く。
5月3日の巨人戦から8月30日のDeNA戦までの間に計16試合に登板して、2勝5敗と3つの負け越し。ただし、そのなかでクオリティ・スタート(=QS/6回を投げて自責点3以内)は9度記録しているように試合を作ることはできており、防御率も3.22と極端に打ち込まれていたわけではなかった。打線とのめぐり合わせが悪かったと見ていいだろう。
そんななか、9月5日のヤクルト戦で7回1失点の好投。7月27日以来となる7勝目をマークした。長らく苦しい戦いを強いられてきていただけに、このひとつの勝利は本人にとっても大きなものとなったことだろう。加えて、これで投球回数も128回となり、規定投球回まで残り15回となった。2ケタ勝利の可能性も残り、この2つの目標は今後の登板に向けてのモチベーションとなるに違いない。
現状の先発投手陣を見渡してみると、野村祐輔が離脱したこともあり、床田は大瀬良大地やジョンソンに次ぐ3番手の位置づけとなる。そのため、残り試合での床田の登板数は2~3試合ほどになることが予想される。
初めて経験するCS争いという激しいプレッシャーの中での戦いにもなるが、様々な苦境を乗り越えてきた男はどのようなピッチングを見せてくれるのか。広島の命運を握る3年目左腕から目が離せない。
▼ 床田寛樹(広島)
ポジション:投手
投打:左投左打
身長/体重:181センチ・85キロ
生年月日:1995年3月1日
経歴:箕面学園高-中部学院大-広島(2016年・3位)
[今季成績] 22試(128.0回) 7勝6敗 防2.74
※数字は2019年9月7日終了時点