18年CS第3戦で先発予定も幻に
ツバメ投手陣再建のカギは、この男が握っているといっても過言ではない。ヤクルトの高卒5年目・高橋奎二だ。
今日14日に23歳の誕生日を迎えた若き左腕は、昨季20試合に登板して4勝6敗、防御率5.76という成績で4年目のシーズンを終えた。次代のエース候補は、今季さらなる飛躍が期待される。
京都・龍谷大平安高から15年ドラフト3位でヤクルトに入団。プロ3年目の18年10月2日のDeNA戦(神宮)で5回1失点と好投し、プロ初勝利を挙げた。同年、巨人とのCSファーストステージ第3戦で先発予定だったが、チームが2連敗でマウンドに登ることはなかった。
「小さいときは巨人ファンだった」いう高橋。その頃好きだった投手には、同じ京都出身で左腕の内海哲也(現西武)の名を挙げている。CS登板予定の前日、憧れのチーム相手に「明日になれば緊張すると思いますけど、その緊張をしっかり力に変えて投げたいなと思う」と話していた。大舞台での登板は幻に終わったが、当時からそれだけ首脳陣の期待は大きかった。
「左のエースになれるように」
今季からヤクルトの指揮官に就任した高津臣吾監督は、二軍監督時代から高橋を指導してきた。開幕ローテーション入りについては「入ってもらわないと困る」と話し、石川雅規、小川泰弘と共に「開幕投手候補」にも挙げていた。
その後、開幕投手は石川に決定。高津監督は高橋を「3番目の先発」としていたが、開幕が延期になったことで再びチャンスが訪れた。自身も開幕投手を狙う意欲を示しており、それだけ今季に懸ける思いは強い。
3月15日にメットライフドームで行われた西武とのオープン戦では、先発で5回途中まで4安打2失点、6奪三振という内容。150キロ以上の直球が魅力の高橋だが、この日は「変化球も調子が良かった」と、女房役の嶋基宏と相談して左打者へチェンジアップを投げ込み、「ああやって投げられたのは一つの収穫」と手応えを口にした。
ヤクルトの昨季の先発防御率は「5.05」と12球団ワースト。この状況を改善するために、高橋には先発の柱として大きな期待がかかる。高津監督も高橋に対して「今季は一本立ちしてほしいシーズンと常に思ってきた」と話す。
指揮官の期待に高橋は「プレッシャーはありますけど、去年良い経験をさせてもらったので、今年は自分の中でもやらなければいけないという気持ちはずっと思ってやっている」と意気込む。
「左のエースになれるように、石川さんを超えられるように、簡単ではないですけど目指してやっていきたい」
現役最多171勝を誇るベテラン石川の壁は厚いが、高橋にとって超えなければいけない目標だ。「左のエース」に成長するため、高橋にとってプロ5年目は覚悟をもって臨むシーズンとなる。
取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)