プロ初出場で初本塁打を記録
背中を見れば、その期待値の高さがわかる。ヤクルトのドラフト4位ルーキー・元山飛優は、かつてヤクルトの一時代を築いた名遊撃手・宮本慎也氏が背負った「6」を、1年目から受け継いだ。
まだ実績のない新人がつける背番号としては重い番号にも思えるが、元山にはヤクルトの新しい時代を担うスター性を感じる。
デビュー戦は3月27日の阪神戦(神宮)の3回途中、遊撃の守備からだった。この日、5回に一塁への内野安打を放ちプロ初安打を記録すると、「チャンスをいただいたのでどんな形でも良いので結果が欲しかった。当たりは良くないですが1本打てたので少しホッとしています」と胸を撫で下ろした。
さらに9回、今度はライトスタンドへプロ初本塁打となる1号2ランを放ち、初打点も記録。試合後には「ベースをちゃんと踏むようにして、踏み外さないように」意識したと振り返った。
同じ日に阪神のドラフト1位ルーキーで同学年の佐藤輝明もプロ初本塁打をマーク。元山は「同級生には負けたくない。常に1番でいたい」と気持ちを高ぶらせた。
ヤクルトの新人がプロ初出場で本塁打を放ったのは2018年の村上宗隆以来となる。その村上もルーキー時代、ロッテの安田尚憲や日本ハムの清宮幸太郎には「負けたくない」という気持ちを表していた。ライバルへの強い意識も活躍の原動力となっている。
西浦直亨との正遊撃手争い
チーム内にもライバルがいる。8年目・西浦直亨とは正遊撃手争いを繰り広げる。今春の一軍キャンプに参加した元山は、キャンプ中から「常に1番でいたい」という思いで「競争」に打ち勝つ意欲を示していた。
キャンプ中の守備練習では、森岡良介内野守備走塁コーチから熱心に指導を受ける姿も見られ、「捕球姿勢はいろいろ教えてもらったんですけど、それにつなげるステップの仕方を教えてもらいました」と指導の内容を明かしてくれた。
さらに、「ファーストの方に対する送球姿勢を教えてもらいました。何個かこうやってみたらというのを提案されて、それをいろいろやっていたんですけど、まだつかめていないという状態です」と、試行錯誤している様子だった。
現在は実績のある西浦が正遊撃手の座に就いているとはいえ、実戦で経験を重ねながら守備面も強化できれば、レギュラーを奪い取るチャンスはある。
西浦に代わって今季3度目のスタメン出場を果たした4月18日の阪神戦(甲子園)では、4打数3安打でプロ初の猛打賞をマーク。7回は左前へ2点適時打を放ち「スタメンでチャンスをいただいたので、何としてでも結果を出したかった」と、自身の置かれている立場は理解している。
また、22日の広島戦(マツダ)では、3回無死一塁の第2打席でライトスタンドへ2号2ラン。「1打席目と同じような場面だったので何とかしたかったです。右方向に強い打球を心がけた結果、良い角度で上がってくれました」と、第1打席の凡退を取り返す一撃を放ち、8回一死三塁の場面では貴重なスクイズも決め、この日3打点を挙げた。
元山はここまで14試合に出場。打率.304、2本塁打、7打点の成績を収めている。このまま一軍に定着し、攻守で存在感を見せつけたい。将来はスワローズの顔として成長し、球界トップクラスの遊撃手にもなり得る22歳だ。
取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)