一軍帯同を続ける高卒2年目
ティーンエイジャー。なんとフレッシュなワードなのだろうか!
若さは武器という言葉を若い頃に言われた事が何度かあるが、40歳を越えてその意味がジワジワと理解できるようになってきた。10代に戻りたい戻りたくない議論はさておいて、やはり10代で感じた経験や刺激は人生の礎となっていると思う。
さて、今回ネクストブレイクと聞いて浮かんだのは、6月15日にティーンエイジャーを卒業し20歳になる、楽天イーグルス2年目の外野手・武藤敦貴選手(19)をご紹介したい。
福岡県・北九州市出身の武藤選手は親元を離れ、宮崎県の都城東高校に入学。高校時代は投手と外野手を経験し2019年の秋、ドラフト4位で指名を受けて楽天イーグルスに入団した。
昨年の春季キャンプで真喜志康永ヘッドコーチに武藤選手について聞くと、「肩もあるし、足も速いし、パンチ力があってスイングも速いのですごく楽しみにしている」と話してくださった。ルーキーイヤーの昨シーズンはケガもあり不本意なシーズンになったが、今年は2月のキャンプからずっと一軍に帯同し続けている。
嬉しいプロ初安打は同級生から!
そして東日本大震災から10年になる3月11日。
静岡草薙球場で行われた千葉ロッテとのオープン戦、途中出場にも関わらず武藤敦貴選手はマルチ安打を放ち、チームの終盤逆転勝利に貢献した。そして4月6日の埼玉西武戦で放ったプロ初安打は、鮮やかなセンター前ヒットだった。
なにかを起こしてくれそうな19歳、武藤選手の本音を沢山聞きたくなりインタビューさせてもらった。
―― プロ初ヒットおめでとうございます!綺麗なセンター返しでしたね。
「ありがとうございます!相手ピッチャーが同級生(井上広輝選手)と知っていたので、同級生には絶対負けたくないという気持ちで打席に立ったのが、いい結果に繋がったと思います」
―― ライバルはいたりするのでしょうか?
「今はやっぱり黒川かなと思っていますね。打撃センスも技術も負けているので、一歩でも追いついていけるようにと、心の中ではいつも思っています」
同期である高卒2年目の黒川史陽選手は4月16日、19歳最後の日に東京ドームで今季初ヒットを放った。それが勝ち越しのタイムリーとなり、翌日の20歳のバースデーもチームで唯一のタイムリーヒットを放った。
その黒川選手をライバルとして名前を挙げながら、リスペクトしている事も存分に伝わってきた。
「この人に付いていくしかないと思いました」
―― 6月15日で20歳になりますが、19歳でどんな爪痕を残したいですか?
「自分のスイングをして結果を出したいというのはあるのですが、今一番使っていただいているのは走塁と守備なので、そこではまずミスのないように、そして信頼を得られるような守備と走塁をしていきたいです」
―― 憧れの選手はいますか?
「辰己さんです。野球に取り組む姿勢や考え方だったり、野球に対する熱い気持ちがあって、それを見て僕はこの人に付いていくしかないと思いました。将来は辰己さんと一緒に試合に出てプレーすることを心に描いています」
プロ3年目・辰己涼介選手に『(武藤選手は)どんな19歳ですか?』尋ねると、「僕が高校を卒業した時の僕を見ているような感じです。野球に真面目で真っ直ぐで、なんでもかんでも取り入れようとする姿があります」と答えてくれた。
武藤選手にとって5学年上の辰己選手の存在は、身近にいるスーパースターなのだろう。できるだけ色々な事を吸収して自分のものにしたい、そして辰己選手と同じフィールドで目一杯暴れたい、そんな情熱が言葉から感じられた。
「意味のある練習をがむしゃらに、ひたむきに…」
また、鉄平一軍打撃コーチも「若手の有望株」として武藤選手を讃えた。
鉄平コーチといえば、かつて「九州のイチロー」と呼ばれ、高卒でプロ野球の世界へ。2009年にはパ・リーグの首位打者(.327)に輝いた。そして、リーグ最多三塁打を2シーズン(06年・09年)マークしている。
鉄平コーチに話を聞くと、「足の速さは(現役時代の)僕より武藤の方が速いと思うので、僕よりたくさん三塁打を打つ可能性は全然ありますね」という言葉があった。
走攻守において首脳陣からの期待も大きい武藤選手に将来の夢を聞くと、ひとつも悩まずにこう答えた。
「夢は一軍で3割30盗塁は絶対にしたいと思っています。その夢に一日でも早く近づけるように毎日必死にがんばります。意味のない練習をしても結果が出ないので、意味のある練習をがむしゃらに、ひたむきにやるだけだと思っています」
ピカピカ10代の、ギラギラとした目だった。
楽天イーグルス史上では、鉄平コーチ以来の首位打者に輝いてほしい。そして自身の好きな言葉である「がむしゃら」にまっすぐに突き進んで、突き抜けて、未来のイーグルスの宝になってほしいと願っている。
文・写真=河内一朗(かわち・いちろう)