コラム 2021.09.20. 11:44

最年少100本塁打達成のヤクルト・村上。そのすごさは「成長速度」にあり

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試合後、通算100本塁打達成の記念ボードを掲げるヤクルト・村上
2021.09.19 17:30
東京ヤクルトスワローズ 5 終了 1 広島東洋カープ
神宮

清原、中西、松井、そうそうたる顔ぶれを抜き去る


 9月19日の対広島戦の初回、ヤクルトの若き主砲・村上宗隆が右翼席へ35号ソロ本塁打を放った。この特大弾で村上は通算100本塁打を達成。21歳7カ月での通算100本塁打到達は、1989年に清原和博(当時西武)が記録した21歳9カ月を抜くプロ野球史上最年少記録となった。

【通算100本塁打年少記録ベスト5】
1位 村上宗隆(ヤクルト) 21歳7カ月(2021年)
2位 清原和博(西  武) 21歳9カ月(1989年)
3位 中西 太(西  鉄) 22歳3カ月(1955年)
4位 松井秀喜(巨  人) 22歳10カ月(1997年)
5位 張本 勲(東  映) 23歳0カ月(1963年)

 その豪快な打撃から、村上の場合は本塁打に注目が集まりがちだ。もちろん、長いプロ野球の歴史において最年少での100号到達をやってのけるのだから、本塁打を打つ能力がずば抜けていることは確かだろう。ただ、村上のすごさはその「成長速度」にもある。

 21歳の村上は、高卒でプロ入りしてまだ4年目。そのわずかな年数のあいだにも急激な成長を続けていることが、これまでの成績を振り返ってみるとよくわかる。

【村上宗隆プロ個人成績】
2018年: 6試合 打率.083/ 1本塁打/ 2打点/ 2四球/ 5三振/OPS.548/本塁打率12.0/三振率.417
2019年:143試合 打率.231/36本塁打/96打点/74四球/184三振/OPS.814/本塁打率14.2/三振率.360
2020年:120試合 打率.307/28本塁打/86打点/87四球/115三振/OPS1.012/本塁打率15.1/三振率.271
2021年:110試合 打率.283/35本塁打/92打点/84四球/100三振/OPS1.015/本塁打率11.0/三振率.260

 村上の一軍デビューはルーキーイヤーの2018年9月16日の対広島戦。その後の活躍を思わせる初打席初本塁打をマークした。その年は6試合に出場したのみだったが、二軍では打率.288、17本塁打、70打点と高卒1年目にして文句のつけようがない数字を残している。


数字が物語る、村上の着実かつ急速な成長


 すると、プロ2年目の2019年には早速一軍でその力を発揮する。シーズン全143試合に出場し、リーグ3位の36本塁打をマーク。一方でワースト2位と40三振以上の大きな開きがあるリーグワーストの184三振を喫し、打率は規定打席到達者中最下位の「.231」。まさに「三振かホームランか」という打者だった。

 ところが、翌2020年にはそのウィークポイントを早くも克服。三振数は2年連続でのリーグワーストだったが、三振率(三振数/打数)は前年の「.360」から「.271」に大きく改善し、打率に至ってはリーグ5位の「.307」と急上昇した。

 本塁打は前年より数を落としているが、これはコロナ禍による試合数減の影響もあり、「1本塁打に必要な打数」を示す本塁打率は「15.1」と、前年の「14.2」と大差ない。長打率を見ても前年の「.481」からリーグトップの「.585」と大きく向上しており、むしろ長打力は飛躍的に伸びたと言える。

 また、もともとの選球眼のよさに加え、前年の活躍によって他球団の警戒がさらに高まったことで、選んだ87四球もリーグトップ。それにより出塁率も高まり、得点との相関関係が非常に高いとされる打撃指標・OPS(出塁率+長打率)1.012もリーグトップだった。

 「率も残せて長打も打てる強打者」となった村上は、もちろん今季もその成長を止めることはない。打率は「.283」と昨季よりやや落としているが、長打を期待される打者としては十分なもの。四球を選ぶ力も健在で、ここまでの84四球は2位・鈴木誠也(広島)の67四球を大きく引き離したリーグトップだ。そして、ここまでの長打率.603、OPS1.015、本塁打率11.0、三振率.260は、いずれもキャリアハイの数字となっている。

 何度でも言うが、こんな強打者がまだ21歳であり、しかもいまなお急速に成長を続けている。いずれ村上も壁にぶつかることがあるのかもしれないが、それでも史上まれに見る選手であることは間違いない。村上という選手の「完成形」はいったいどんな姿で、どんな成績を残すのか。使い古された言葉ではあるが、末恐ろしいとしかいいようがない。

※数字は9月19日終了時点

文=清家茂樹(せいけ・しげき)

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