「いままでで一番練習した」
広島・遠藤淳志の飛躍は、確固たる技術面の進化に支えられている。
今季はここまで登板17試合(先発16:救援1)で4勝6敗。新型コロナ感染による離脱などで白星こそ伸び悩んでいるものの、防御率は3.22と安定感が光る。
確かな成長は「与四球数の減少」から見て取れる。
今季は投球回数97回2/3で与四球は16個。6イニングで1四球しか与えておらず、チーム内では大瀬良大地や森下暢仁、床田寛樹よりも少ない計算になる。
3年目だった2020年は107イニングで52四球を数えていた。これは2イニングに1つ四球を与えるペース。開幕から先発ローテーションを守り切ったとはいえ、制球面を課題として残す1年となった。
「先発として打たれる怖さや重圧を知っていくうちに、制球面が課題となっていった。投げる度に怖さが増していく感じがありました」
そして、4年目の昨季は登板2試合に終わる不振に陥った。制球面の不安定さが原因の一つだった。
そこで昨季途中、二軍首脳陣から復調計画を立てられた。
投球から離れてウエート強化期間を設ける案などが検討された中、実際に課されたのは二軍本隊に同行せず、小林二軍投手コーチと投球フォームを見直すことだった。
実戦からは2カ月間離れた。その間に「立ったまま投げる」フォームの習得を目指した。
修正したのは、リリースの際に左太ももと胸が付くほどの前傾姿勢で投げていた点。下半身を沈み込ませず、上体を起こしたまま投げることで投球フォームの安定を目指した。下半身の形が崩れない分、地面を蹴って球に力を伝えられるようにもなった。
オフ期間は新フォームを完成させるために、ボディービルダー指導のもとウエートトレに多くの時間を割くなど、身体の強さを求めた。
筋肉で体の柔らかさを失わないようにヨガやダンスも取り入れ、今オフは「いままでで一番練習した」と言い切れるほどに追い込んだ。
2試合連続の無四球ピッチ
取り組んできた新フォームが間違いなかったと確信したのは、開幕直前のことだった。
キャンプからのアピールが認められ、今春初の先発機会を与えられた3月13日の日本ハム戦。4回を無四球・無失点に抑えて、開幕ローテーション入りを決定づけた。
「狙ったコースや低めに意識して投げられた。投げ終わって何が良かったのかを考えて、次の日も自分の考えを整理し、“よし、この形のままで大丈夫だな”と思えたのは、あのオープン戦だった」
開幕後は安定した投球で先発として存在感を高めながらも、6月下旬に新型コロナウイルスに感染して離脱。一軍復帰後は離脱前の安定感を見せられずに苦しんだ。
それでも、8月27日の巨人戦で7回2失点と好投すると、9月3日のDeNA戦では7回を無失点に抑えて101日ぶりの白星を挙げた。
この2試合は、いずれも無四球。制球の安定感が本調子を取り戻したサインとなった。
「3年目のときは一軍で投げさせてもらっていたけど、自分の投げ方が分かっていなかった。いまは違う」
確かな自信を得た今季も残りわずか。1年間、地道に首脳陣の信頼を積み上げたことで、シーズン最終盤の順位争いの力になっている。
文=河合洋介(スポーツニッポン・カープ担当)