第41回:2023年の先発ローテに食い込むのは…
「チャンスはうちの場合多いですよ。先発投手にしろ、リリーフ投手にしろ。いろんな枠を多くとってやっているので」
2月の浦添春季キャンプにて、ヤクルトの伊藤智仁投手コーチが投手陣の現状を話してくれた。この回では先発陣について紹介する。
昨季、先発ローテを支えた小川泰弘やサイスニードについては「ある程度イニング数を計算できる投手だと思う」とし、今季も先発の軸として期待を寄せる。
完投能力のある高橋奎二は、昨季17試合に登板して自己最多となる8勝をマークした。25歳の左腕は今季さらなる飛躍が期待されるが、侍ジャパンのメンバーにも選ばれているだけに、シーズンの開幕に向けた調整にやや不安は残る。
では、この3人以外に誰が先発ローテの枠に食い込むのか。43歳の大ベテラン・石川雅規はもちろん、復活を目指す奥川恭伸、ドラフト1位ルーキーの吉村貢司郎や新外国人投手にも注目だが、伊藤コーチはあくまで冷静だ。
「新戦力はなかなか計り知れない。出てきてくれればラッキーぐらいしか思っていません。そんな急にうちの先発投手のスキルが上がると思っていないですし、ある程度の余裕を持ってローテーションを回していかなければいけないなと思っています」
“振り子投法”が特徴の吉村については「いろんな球を投げているので、コンビネーションの投手かなと思っている」と話し、社会人出身の即戦力右腕として期待は大きいものの、まだプロ1年目。過度にプレッシャーを与えたくないという思いが感じられる。
開幕ローテ期待の2人
余裕を持ったローテーションでシーズンを乗り切る。そのためにも、この2人の活躍に期待したい。昨季7勝を挙げた高梨裕稔と、育成から支配下契約を勝ち取り昨季2勝をマークした小澤怜史だ。
彼らについて、伊藤コーチはこのように話す。
「(高梨は)制球が課題になってくると思いますし、ある程度ストライクゾーンに腕を振って投げられればある程度計算はできる。順調には進んでいると思います。(小澤は)去年先発したのが2回ぐらいしかないですし、まだ先発としての準備段階という感じです」
そんな伊藤コーチの言葉を受けて、高梨と小澤にキャンプでの取り組みを聞いてみた。
高梨は「球速とか以上に感覚的にはいいので、いい感じにはきている。決め球のフォークの精度はもうちょっとですけど、真っすぐとカーブは割としっかり投げられている」と話し、さらに、新球として「小さなスライダー」を投げ始めている。イメージとしてはカットボールとスライダーの間ぐらいの球だという。
新球について、高梨は「有効な球にはなるんじゃないかなというのはあるので、打者に投げつつ、ブルペンで練習しつつ、もっといい感覚をつかんでいければいい」と、自身の新たな武器にしていく。
「1年間(ローテで)回るということが重要だと思うので、そこを一番に目指して、それができた上で2ケタというのをしっかり勝ちたいなと思います」。日本ハム時代の2016年以来となる2ケタ勝利達成となるか。その右腕に期待がかかる。
今季から背番号「45」に変更となった小澤は「体力つけたり球種を増やしたりして(打者に)対応していこうと思って、カットとツーシームを練習しています」と明かした。真っすぐとフォークのコンビネーション以外に、新しい投球スタイルを身につけようとしている。
先発だけでなくリリーフも可能だが、「先発でも中継ぎでも1年間一軍でやりたい。去年ある程度経験させてもらって、今年が一番大事だと思うので、何とか結果を残したい」と、並々ならぬ決意を語った。
高梨も小澤も共に力強いストレートが特長の投手だ。その持ち味に加え、相手打者に対抗するため新たなことに取り組んでいる。
2人の挑戦が実を結べば、リーグ3連覇への大きな原動力となるに違いない。
取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)