華麗なる完全復活
2位に4つの差をつける14勝、WHIPはリーグ唯一の1を切る0.98、勝率.875、QS数18、完投数3はすべてトップと個人成績で見事な数字が並ぶ東克樹。
先週の敵地での広島戦も連敗からの中5日で完投勝利を挙げ、14日も同じ連敗のシチュエーションで9回途中3失点でチームを救う快投を披露。トミー・ジョン手術からの復活を期し、22年には開幕投手を任されながらももがき続けた左腕は今年、華麗なる完全復活を遂げた。東の活躍なくして、Aクラスはなかったと断言できるほどチームへの貢献度は高い。
14勝目を挙げた14日、お立ち台に上がった際は「昨日一昨日と負けてしまっている中で、今日はなんとしても勝とうと祐大と話し合ってスムーズに試合に入ることができました」といつも通り女房役・山本祐大を称え、ファンの喝采を浴びた左腕。この勝利で1993年の野村弘樹氏の13連勝を塗り替え「本当に球団の記録として名前が残ることは、野球選手として嬉しいことなので、もっと上を目指してできることをやりたいと思います」と笑顔。14勝は1999年の斎藤隆現チーフピッチングコーチに並び「本当に1試合1試合、集中して自分のやるべきことを祐大とお互いで確認しあってここまできている」と記録ラッシュに充実感も漂わせた。
落ち着き払ったマウンド捌き
今シーズンの好投の要因は落ち着いたマウンド捌きも見逃せないポイント。
登板数は21回で規定投球回数にも到着し「シーズン始まる前から目標として勝利よりも規定投球回数を投げることが今シーズンの目標でしたので、ひとつクリアできたことは非常に嬉しく思ってます」と自己評価。「打たせて取ることができて、ヒットでランナー出したとしても、得点圏にランナーを進められたとしても、その後をしっかりと抑えることを意識」したと明かすように、ピンチを背負うことを念頭に置くことでが心の余裕を生んでいることが伺える。
そのイニングを“喰える”要因のひとつは、今シーズンわずか14しか許していないフォアボールの数にある。チーム全体でも取り組んでいる「ストライク先行でゾーン内に投げること」を一番体現しており「出す場面、出すバッターを注意してやっていく必要があるのかなと思ってます。祐大と話し合ってここはフォアボールでもいいという気持ちで試合をやっている。フォアボール出すことが完全に悪ではないと思うので、いい場面を考えながらやっています」と割り切っているが、ゾーン勝負が結果的に相手の早仕掛けを呼んでいる。あくまでもフォアボールを出さないことに重点を置いているわけではないと強調しながらも「リズムという点ではいいんじゃないかなと思います」と好循環を産んでいることは明確で、平均7イニング以上を投げ切れているポイントとなっている。
チームの最大目標であったリーグ優勝は夢と消えたが「CSから日本シリーズ、日本一に向けての戦いがあるの、あとの残り試合戦い抜きたいと思います」と次のターゲットに向けて決意を新たにした東克樹。元々もポテンシャルに加え、苦難を乗り越えた左腕の“頂戦”はここからが本番だ。
取材・文=萩原孝弘