国指定の難病「黄色じん帯骨化症」から復帰を目指して
次代の守護神候補はこの試練をどう乗り越えてマウンドに帰ってくるのか。
タイガースは8月25日、湯浅京己が福島県内の病院で「胸椎黄色じん帯骨化切除術」を無事に終え、退院したことを発表した。
「黄色じん帯骨化症」は国指定の難病。昨年の不振から逆襲を期した今季は3月上旬に体調不良で離脱するなど、万全のコンディションで腕を振れない期間が続いていた。
「入院期間で寝ていることが多かったので、戻ってこられて安心しています」
鳴尾浜で行われた報道陣への囲み取材で右腕は率直な心境を口にした。今春キャンプでは投球フォームが固まらず2軍降格。先述の体調不良が回復しても、右足に力が入らない“謎の症状”が長く続き苦悩の日々を過ごしてきた。
「正直苦しかったですし、いろんなトレーニングをしていても足に力が入らないので。本当にどうしていいか分からない期間はすごく長かった」
当初は病名はもちろん、原因も分からず試行錯誤が続いた。投球フォームも一から作り直し、トレーニングメニューもキャンプ中に遡ってやり直すなど、ゼロから再出発。
6月中旬にはようやく「やっとですね。(以前と)感覚は全然違う」と直球のリリースの感覚が戻り、2軍の実戦で結果を積み上げていくべく意気込んでいた。だが、7月10日のウエスタン・リーグのくふうハヤテ戦での登板を最後に再び戦線離脱。ようやく右足の脱力症状などの原因が「黄色じん帯骨化症」であることが判明した。
「手術をした方がいいと言われた時は不安にもなりましたし、怖さというか恐怖感が襲ってきましたけど、先生の説明を受けている中で自分自身最善の選択をして頑張ろうという気持ちになりました」
復帰への道が簡単でないことは分かっている。ただ、球界には同じ病気から復帰した先輩たちもいる。
ベイスターズの三嶋一輝やドラゴンズの福敬登はリハビリを経て1軍のマウンドにカムバック。湯浅はLINEグループを作ってもらい、この2人に術後のリハビリの内容や症状の経過などを相談。球団の枠を越えたサポートにも背中を押された。すでにリハビリもスタートさせ、来春キャンプでチーム練習に合流することが当面の目標だ。
「(ファンから)たくさんのメッセージをいただいて本当にありがたいですし、嬉しかったという気持ちが一番出てきた。また甲子園で元気に投げている姿を見てもらえるように少しずつですけどリハビリを頑張りたい」
湯浅には“帰るべき場所”がある。聖地のマウンドで火を噴くような直球を再び投げ込んでみせる。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)