2試合を通して細かなミスは阪神よりも多かった印象…今こそ勝って兜の緒を締めるとき
いよいよ巨人のリーグ優勝が近づいてきた。
23日、甲子園球場で行われた阪神と巨人の今季最終戦は、前日に続き1点を争う投手戦となったが、7回表に1点を先制した巨人がそのまま1-0で逃げ切って勝利。天王山の2連戦を1勝1敗とし、優勝へのマジックを6から4に減らすことに成功した。
これで巨人は残り6試合で4勝以上すれば優勝が確定。1年目の阿部慎之助監督が歓喜のなか宙に舞うまで秒読み段階に入った。
一方の阪神は天王山で2連勝してもゲーム差なしの2位という絶体絶命の状況だったが、本拠地でまさかの痛み分け。逆転でのセ・リーグ連覇は相当厳しくなった。
「優勝します!」
23日の試合後、巨人・坂本勇人から堂々のV宣言が飛び出した。代打で殊勲のタイムリーを放ったのが酸いも甘いも知る35歳の元キャプテンだったことは、チームに更なる勢いをもたらしてくれるかもしれない。
ただし、今季のセ・リーグ優勝争いはそうは問屋が卸さない。9月に入って広島が急失速したように、最後まで何が起きるか分からないのが勝負の世界だ。
阪神との天王山を終えて、“2敗してもいい”状況に変わったことで、チームにある種の余裕が生まれ、それがいい方向に向かうこともあれば、大きな落とし穴になる可能性もあるだろう。
また、残り6試合でDeNAと3試合、広島、中日、ヤクルトとそれぞれ1試合ずつを戦うが、どのチームも3位争いや最下位回避の争いといった状況にある。中日はエース高橋宏斗をぶつけてくる可能性が高く、巨人もまだ予断は許されない。
さらに接戦を制した23日の阪神戦で、目立っていたのが巨人の小さなミスだ。
最も気になったのは巨人が先制した7回無死一塁の場面で岡本和真が坂本のお膳立てをする安打を放ったシーン。結果的に続く坂本のタイムリーで得点は生まれたが、岡本の左翼線への当たりは通常なら二塁打でもおかしくない当たり。
阿部監督は一塁から三塁に到達した吉川尚輝の走塁を褒めていたが、左翼手・前川右京の肩を考えれば無死二三塁にしておくべきだったのではないか。
他にも、先制した直後に二死満塁とチャンスを広げた場面で登場した代打・萩尾匡也が2ボールから凡フライを打ち上げたり、4回には吉川がバントを失敗したりする場面もあった。結果的に試合には勝利したが、2試合を通して細かなミスは阪神よりも多かった印象だ。
前日の菅野智之の125球完投や、23日のグリフィンの中4日登板、ケラーのイニング跨ぎなど、もし2連敗を喫していれば、チームにとって大きなダメージとなり得る采配もあった。それでも坂本の殊勲打と投手陣の粘りがそんな犠牲をすべて打ち消した。
もちろん巨人が優勝に近づいたのは紛れもない事実だろう。ただし、その後もクライマックスシリーズ、日本シリーズへと戦いは続いていく。ポストシーズンでは些細なミスが命取りになるケースも出てくるだろう。巨人は今こそ勝って兜の緒を締めるときだ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)