コラム 2024.11.05. 18:00

「打率.444」で文句なしのMVP!DeNA桑原将志と対照的…日本シリーズで明暗分けたソフトバンク「1番打者」の不振

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26年ぶりに日本シリーズを制し、MVPに選ばれたDeNAの桑原 (C)Kyodo News

桑原の1番抜擢が的中したDeNA


 今年の日本シリーズは、第3戦から4連勝したDeNAが優勝。1998年以来、26年ぶりとなる日本一の奪還にファンは酔いしれた。

 公式戦3位からクライマックスシリーズ(CS)を勝ち抜いたDeNAと、公式戦で91勝を挙げパ・リーグを独走したソフトバンク。戦前は史上最大の“格差シリーズ”とも呼ばれたが、終わってみればDeNAの勝負強さがキラリと光った。

 横浜スタジアムで幕を開けた今シリーズは、ソフトバンクが敵地で2連勝。序盤に先発投手を攻略し、一度もリードを許すことなく逃げ切る、王者にふさわしい試合運びに、「このまま4連勝」の声が上がったのも当然だろう。

 ところが、DeNAは第1戦、第2戦ともに簡単には諦めなかった。第1戦は最終回に、第2戦は中盤以降にソフトバンク投手陣を打ち崩し、反撃の糸口をしっかりつかんでいたのだ。

 それでもDeNAが福岡で最低2勝しないといけないという条件は厳しいと言わざるを得なかった。実際に第3戦からDeNAが4連勝するとは、その時点で誰も思っていなかったはずである。

 もちろんソフトバンクの選手たちも福岡の地で日本一の奪還を信じて疑わなかっただろう。ただ、2連勝した気の緩みからか、ソフトバンクの首脳陣や選手たちから軽口ともいえる発言が次々と飛び出した。詳細は省くが、第2戦終了後の山川穂高の発言や、第3戦の前後に首脳陣が発したコメントなどからもソフトバンクの“慢心”は明らかだった。


 そんな王者の心の隙を突いたことがDeNAの逆転につながったともいえるが、仮にソフトバンクに油断が全くなかったとしても、結果は変わらなかったのではないか。なぜなら両チームの明暗を分けたのは、“1番打者”の出来だったからだ。

 DeNAの三浦大輔監督は7年前の日本シリーズで打率1割台に低迷した桑原将志を大舞台で7年前と同じ1番に据えた。桑原は今季終盤に6番を打つことが多く、CSでも巨人ファイナル第5戦まではその打順に固定されていた。ところが三浦監督はCSファイナル最終戦で桑原を1番に抜擢すると、日本シリーズでも桑原1番を続けた。

 本来なら俊足、梶原昂希の1番が理想だったはず。実際にシリーズ前はそうなるだろうと予想したファンも多かった。ところが桑原は日本シリーズ新記録の5試合連続打点をマークするなど、全6試合で打率.444をマーク。攻守にわたってチームを引っ張り、文句なしのシリーズMVPに輝いた。


 一方で、ソフトバンクの小久保裕紀監督は、今季の公式戦で一度も1番を打っていなかった柳田悠岐を第1戦と第2戦の1番に据えた。結果的に柳田はその2試合で8打数1安打と機能しなかったが、チームは2連勝。それ以降も柳田1番で戦うかと思われた。

 ところが第3戦は、1番ダウンズ、2番柳田に打順を変更。その試合でダウンズが無安打に終わると、第4戦は再び柳田を1番で起用した。ここで柳田が2安打を放ち意地を見せたが、小久保監督は第5戦に笹川吉康、第6戦に周東佑京を1番に据えるも打開策とはならなかった。

 結局、目まぐるしく入れ替わったソフトバンクの1番打者は、6試合で24打数3安打(打率.125)と低迷。時にチームを勢いづける役割も担う打順だけに、打率.444を残した桑原との差が如実に表れたともいえるだろう。第3戦以降も1番柳田を貫いていれば、シリーズの流れも少しだけ違っていたかもしれない。

文=八木遊(やぎ・ゆう)

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