ニュース 2017.08.01. 11:37

【侍ジャパンU-12代表】仁志敏久監督「指導者・保護者に伝えたいこと」

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選手に語りかける仁志敏久監督

僕自身も含め大人たちが潰してしまわないように


——仁志監督がU-12世代の子どもたちを指導する上で、何か心がけていることはありますか?
仁志監督 沢山ありますね。主に代表チームを通して、子どもたちの自立を目指しています。そのためには、自分で考え、自発的な行動ができる習慣を身につけることが大切ですね。子どもだからといって甘えを許していいことはありません。子どもたちだって父兄や、指導者の方の大きな期待を受けているはず。多くの子は「将来はプロ野球選手」といった目標があるでしょう。そのために少しでも良いきっかけになって欲しい。そして、子どもたちが成長していけばいつか指導者になる。僕らが今、教えていることをその先の世代に伝えていくわけです。そういったことを常に意識して僕は指導をしています。


——ちなみに、いまの子ども達と、昔の子ども達を比べて変化を感じることはありますか?
仁志監督 うーん、根本的にはおそらく昔と変わってはいないと思います。環境が変わったとしたら、それは大人側が変えただけであって。情報やおもちゃなど、作り出すのは結局大人ですからね。

グラウンド整備を行う子どもたち

——では、ご自身の少年時代に比べて、野球の技術面などは変化しているでしょうか?
仁志監督 僕が小学生の時この代表チームに入れたかというと、おそらく入れなかったと思いますよ。野球の能力に関しては今の方が上だと思います。ですが、子どもなので順調に成長していくのかどうかはわかりません。現実的に言ってしまえば、代表メンバーだってこの先誰かに追い抜かれる方が確率は高い。だから今のメンバーにも口酸っぱく「入ってからが勝負だよ」と言っています。これから自チームに帰ったときに周りから「打って当たり前、抑えて当たり前」といった視線を受けるはずです。沢山冷やかされるだろうし、おだてられるでしょう。そういったものを上手くかわしていくことも、成長していく上で大切なことなんですよ。


——いまの少年野球を見ていて、課題や疑問などはありますか?
仁志監督 僕から見ると子どもに「少し手をかけ過ぎ」な気がします。どうしても大人というのは子どもに教え、自分が上手くさせてあげたいと思ってしまうもの。だけど、実際に大人が子どもを上手にしてあげるということはあまりできない。むしろ、野球というのは形で教えてない方が良いケースになることが多いスポーツ。いかに子どもの伸び代を作るかがポイントです。子どもが自発的に上手くなる方法を見つけなければなりません。教えないということが、教える側からすると一番難しいことなのですが、そこはグッと我慢することも必要だと思います。

マウンド上の選手たちを見つめる仁志監督

——自分で考え、行動することの大切さを教えるわけですね。
仁志監督 この代表チームでも、グラウンド上では私たち指導者は一切子どもたちをサポートしません。試合になれば選手たちで改善点を見つけ、考えさせるようにしていますよ。


——監督が自ら子どもたちに打ち方や、守り方などの指導はしないということでしょうか?
仁志監督 多少時間があればそういったことは話しますが、僕から「ああしろ、こうしろ」とは一切しません。子どもたちを普段指導されている方の教えもあるでしょうし、その指導者の方が僕より多くの時間見ているはずです。その指導者の言葉をないがしろにせず、尊重しなければいけない。ただ、やっていてその子にとって無駄なことは教えないようにしていますね。それは先ほど言った「形」。野球はこの形が非常に多いですので「こういう風にやればこうなるよ」という発想などを与えるだけです。


——では、子どもたちを支える保護者にお願いしたいこと、伝えたいことはありますか?
仁志監督 これも指導者の方と同じで、あまり手をかけ過ぎないことが大事だと思います。どうしても子どもができないと、やってあげたくなってしまうのが親心ですがそこは我慢。やれる状況なのに、やらないのは凄く辛いとはとは思いますが、それが一番子どものためになるはずです。甘やかされた環境で育つと、良い選手には絶対にならないので。食べ物と同じで、甘いものはほどほどにといったことでしょう(笑)。

バッティングピッチャーを務める仁志監督

——自発的に動く習慣を身につけるのであれば、早いにこしたことはないですね。
仁志監督 そうですね、なるべく自分でやれることは自分でやらせる。飲み物だって水筒があれば子どもは自分で飲み物を入れられますし。野球だって基本的には子どもがやりたいからやるのであって、道具だって自分のお小遣いで買えるものがあれば買った方がいいですね。


——最後になりますが、これからの野球界に臨むことを教えてください。
仁志監督 それは沢山ありますね(笑)。ただ、子どもの世代と最高峰のプロ野球はリンクしています。小学生世代で能力の高い層が厚くならないと、日本の野球に大きな影響を与えてしまいます。現代は能力の高い子が他のスポーツに移ってしまうケースが多いので野球界にとっては深刻な問題です。子どもの数自体も減っているので野球人口も増えません。とにかく野球人口が激減しないようにしなければいけない。そして、この世代は大人に影響を受けやすいので、僕自身も含め大人たちが潰してしまわないように、接し方や教え方などに神経を使っていかなければいけませんね。


【ブルペンでのピッチング練習】


【牽制と盗塁練習】


(取材・写真:児島由亮)

プロフィール

仁志敏久
1971年10月4日生まれ。茨城県古河市出身。常総学院では甲子園に3度出場。早稲田大学を経て日本生命に進む。1995年にドラフト2位で読売ジャイアンツに入団。不動の二塁手として活躍し、通算安打数は1591本。引退後の2013年より、侍ジャパンの内野守備・走塁コーチを務めている。2014年からは侍ジャパンのアンダー世代であるU-12代表監督にも就任し、指揮を執る。
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