名門私学を相手にしても、全くひるまない。
「自分たちができることだけをしよう。ミスがあっても前向きに修正し戦おう」
東筑の選手のベンチは試合中、そんな声が交わされている。公式戦だと言うのに気負いが全く感じられない。打席で萎縮しない。この明るさは何なのだろう?自信?ひらきなおり?興味が高まった。
青野監督に率直な疑問をそのままぶつけると「夏、甲子園で戦った経験力だけでしょう! だってこいつら、ほとんど練習してないですもん」と、豪快に笑った。
甲子園から帰り2週間後に秋の大会が開幕。バッテリー含め、5人の経験者が残ったが、主軸を打っていた3年生が抜け、打順が組めない中でのスタートだった。
そんな中でも、エース石田旭昇(あきのり=2年)投手の活躍で福岡県大会優勝。準々決勝では、甲子園出場経験のある福工大城東戦を10-0、7回コールドで退けるなど、堂々とした勝ちっぷりを印象づけた。
この試合で、7回5安打3三振の好投を見せたエースの石田は、テンポよくストライクを取り、無失点投球を見せた。その落ち着いた投球術に感心すると「ありがとうございます。6回に100球を超えてしまったことが反省です。今日は変化球のキレが良くて、三振を狙いに行ったから、球数が増えてしまいました!」と、明るい表情で、冷静に、自己分析をしていた。
目の前の勝利に興奮しすぎず、すぐに次への課題を挙げる姿勢。石田投手だけではなく、他の選手も同じような話しぶりで、状況判断がコントロールできている印象を受けた。青野監督の言うとおり、夏の甲子園出場が選手たちを成長させたことは納得できるが、彼らはどんな生い立ちで、ここまで野球に向き合っていたのか? その部分にも興味が沸いた。
メンバー入りを目指す田中陽樹選手(2年、内野手)は、京都大学工学部を目指す理系クラスの野球部員だ。指導者たちが「文武両道のお手本」と推薦する彼に、1日のタイムスケジュールを聞いた。毎日、課題(宿題)を提出しなければいけない選手たち。野球との両立に工夫が見える。
「朝5時半に起床し、車と電車と徒歩で通学時間は約25分。7時半からの補習(0限)の前に、ウエートルームで毎朝トレーニングをしています。授業の間の休み時間は、主に小テストの勉強と、予習。昼休みに自主練習をしたい時は、早弁をして、時間を調整しています。家に帰ったら、風呂と食事とストレッチを1時間ちょっと。そこから2時間、課題をします」。就寝時間を24時と決め、そこから逆算する。
「見たいテレビは食事の時間にまとめて見ます」。適度に“娯楽”を入れながら、気分転換することも忘れない。好きな教科は数学で、苦手は英語。子供の時、家事をする母親のそばで宿題をやってきた習慣があり「勉強の集中力はある方だと思います」と話す。
「勉強はやった分だけ結果が出るけど、野球はそうはいかない。野球の方が難しいです」
勉強との両立に悩む、野球少年へのアドバイスをお願いすると「勉強で身についた集中力は、野球に生かされるので、そう思って頑張って欲しいですね」と控えめながら、でもしっかりとした口調で話した。(取材・撮影:樫本ゆき)
1898年(明治31)創立、1900年(明33)創部。文武両道、質実剛健が校是。部員数2年=25人、1年=18人。女子マネージャー=5人。山本哲也部長(52)、青野浩彦監督(57)。甲子園出場は春2回、夏6回。全日制普通科(共学)。スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定校。主なOB=仰木彬(元オリックス監督)、高倉健(俳優)、福山龍太郎(元ダイエー)、大村孟(ヤクルト育成)ほか。所在地=北九州市八幡西区東筑1-1-1
「自分たちができることだけをしよう。ミスがあっても前向きに修正し戦おう」
東筑の選手のベンチは試合中、そんな声が交わされている。公式戦だと言うのに気負いが全く感じられない。打席で萎縮しない。この明るさは何なのだろう?自信?ひらきなおり?興味が高まった。
青野監督に率直な疑問をそのままぶつけると「夏、甲子園で戦った経験力だけでしょう! だってこいつら、ほとんど練習してないですもん」と、豪快に笑った。
甲子園から帰り2週間後に秋の大会が開幕。バッテリー含め、5人の経験者が残ったが、主軸を打っていた3年生が抜け、打順が組めない中でのスタートだった。
そんな中でも、エース石田旭昇(あきのり=2年)投手の活躍で福岡県大会優勝。準々決勝では、甲子園出場経験のある福工大城東戦を10-0、7回コールドで退けるなど、堂々とした勝ちっぷりを印象づけた。
この試合で、7回5安打3三振の好投を見せたエースの石田は、テンポよくストライクを取り、無失点投球を見せた。その落ち着いた投球術に感心すると「ありがとうございます。6回に100球を超えてしまったことが反省です。今日は変化球のキレが良くて、三振を狙いに行ったから、球数が増えてしまいました!」と、明るい表情で、冷静に、自己分析をしていた。
目の前の勝利に興奮しすぎず、すぐに次への課題を挙げる姿勢。石田投手だけではなく、他の選手も同じような話しぶりで、状況判断がコントロールできている印象を受けた。青野監督の言うとおり、夏の甲子園出場が選手たちを成長させたことは納得できるが、彼らはどんな生い立ちで、ここまで野球に向き合っていたのか? その部分にも興味が沸いた。
メンバー入りを目指す田中陽樹選手(2年、内野手)は、京都大学工学部を目指す理系クラスの野球部員だ。指導者たちが「文武両道のお手本」と推薦する彼に、1日のタイムスケジュールを聞いた。毎日、課題(宿題)を提出しなければいけない選手たち。野球との両立に工夫が見える。
「朝5時半に起床し、車と電車と徒歩で通学時間は約25分。7時半からの補習(0限)の前に、ウエートルームで毎朝トレーニングをしています。授業の間の休み時間は、主に小テストの勉強と、予習。昼休みに自主練習をしたい時は、早弁をして、時間を調整しています。家に帰ったら、風呂と食事とストレッチを1時間ちょっと。そこから2時間、課題をします」。就寝時間を24時と決め、そこから逆算する。
「見たいテレビは食事の時間にまとめて見ます」。適度に“娯楽”を入れながら、気分転換することも忘れない。好きな教科は数学で、苦手は英語。子供の時、家事をする母親のそばで宿題をやってきた習慣があり「勉強の集中力はある方だと思います」と話す。
「勉強はやった分だけ結果が出るけど、野球はそうはいかない。野球の方が難しいです」
勉強との両立に悩む、野球少年へのアドバイスをお願いすると「勉強で身についた集中力は、野球に生かされるので、そう思って頑張って欲しいですね」と控えめながら、でもしっかりとした口調で話した。(取材・撮影:樫本ゆき)