ニュース 2017.12.19. 18:52

「文武両道 目指すは甲子園出場と難関大学合格!」東筑高校野球部(前編)

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名門私学を相手にしても、全くひるまない。

「自分たちができることだけをしよう。ミスがあっても前向きに修正し戦おう」

東筑の選手のベンチは試合中、そんな声が交わされている。公式戦だと言うのに気負いが全く感じられない。打席で萎縮しない。この明るさは何なのだろう?自信?ひらきなおり?興味が高まった。

青野監督に率直な疑問をそのままぶつけると「夏、甲子園で戦った経験力だけでしょう! だってこいつら、ほとんど練習してないですもん」と、豪快に笑った。

写真|東筑高校を率いて今夏の甲子園出場を果たした青野浩彦監督
2016年より再び母校を率いる青野浩彦監督

甲子園から帰り2週間後に秋の大会が開幕。バッテリー含め、5人の経験者が残ったが、主軸を打っていた3年生が抜け、打順が組めない中でのスタートだった。
そんな中でも、エース石田旭昇(あきのり=2年)投手の活躍で福岡県大会優勝。準々決勝では、甲子園出場経験のある福工大城東戦を10-0、7回コールドで退けるなど、堂々とした勝ちっぷりを印象づけた。

この試合で、7回5安打3三振の好投を見せたエースの石田は、テンポよくストライクを取り、無失点投球を見せた。その落ち着いた投球術に感心すると「ありがとうございます。6回に100球を超えてしまったことが反省です。今日は変化球のキレが良くて、三振を狙いに行ったから、球数が増えてしまいました!」と、明るい表情で、冷静に、自己分析をしていた。

写真|2年生ながらエースとしてチームを甲子園へ導いた石田旭昇
夏の甲子園も経験したエースの石田旭昇

目の前の勝利に興奮しすぎず、すぐに次への課題を挙げる姿勢。石田投手だけではなく、他の選手も同じような話しぶりで、状況判断がコントロールできている印象を受けた。青野監督の言うとおり、夏の甲子園出場が選手たちを成長させたことは納得できるが、彼らはどんな生い立ちで、ここまで野球に向き合っていたのか? その部分にも興味が沸いた。

メンバー入りを目指す田中陽樹選手(2年、内野手)は、京都大学工学部を目指す理系クラスの野球部員だ。指導者たちが「文武両道のお手本」と推薦する彼に、1日のタイムスケジュールを聞いた。毎日、課題(宿題)を提出しなければいけない選手たち。野球との両立に工夫が見える。

写真|京都大学工学部を目指す田中陽樹
メンバー入りを目指す田中陽樹は京都大学工学部を目指す理系クラスの野球部員

「朝5時半に起床し、車と電車と徒歩で通学時間は約25分。7時半からの補習(0限)の前に、ウエートルームで毎朝トレーニングをしています。授業の間の休み時間は、主に小テストの勉強と、予習。昼休みに自主練習をしたい時は、早弁をして、時間を調整しています。家に帰ったら、風呂と食事とストレッチを1時間ちょっと。そこから2時間、課題をします」。就寝時間を24時と決め、そこから逆算する。


京都大学工学部を目指す田中陽樹の1日のタイムスケジュール

「見たいテレビは食事の時間にまとめて見ます」。適度に“娯楽”を入れながら、気分転換することも忘れない。好きな教科は数学で、苦手は英語。子供の時、家事をする母親のそばで宿題をやってきた習慣があり「勉強の集中力はある方だと思います」と話す。

「勉強はやった分だけ結果が出るけど、野球はそうはいかない。野球の方が難しいです」

勉強との両立に悩む、野球少年へのアドバイスをお願いすると「勉強で身についた集中力は、野球に生かされるので、そう思って頑張って欲しいですね」と控えめながら、でもしっかりとした口調で話した。(取材・撮影:樫本ゆき)


東筑高校

1898年(明治31)創立、1900年(明33)創部。文武両道、質実剛健が校是。部員数2年=25人、1年=18人。女子マネージャー=5人。山本哲也部長(52)、青野浩彦監督(57)。甲子園出場は春2回、夏6回。全日制普通科(共学)。スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定校。主なOB=仰木彬(元オリックス監督)、高倉健(俳優)、福山龍太郎(元ダイエー)、大村孟(ヤクルト育成)ほか。所在地=北九州市八幡西区東筑1-1-1

青野浩彦(あおの・ひろひこ)

1960年(昭35)6月29日生まれ。福岡県北九州市出身。東筑高―筑波大。高3夏に主将、捕手として甲子園出場。大学卒業後、保健体育科教諭として北九州高監督に就任。94年4月に母校で副部長、監督として16年指導。96年夏、98年センバツ出場。鞍手高を経て16年から再び東筑高の監督に就任した。

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