今回の質問
「5回にいつも崩れるピッチャー、その原因と対処法は?」
部員15人の弱いチームで5年生(春から6年生)の息子はピッチャーをやっています。球は他のチームの子に比べて速い方だと思います。ですが、いつも5回くらいから急にストライクが入らなくなります。毎回5回の先頭打者にフォアボールを出します。そこからフォアボール、フォアボール、痛打という繰り返しです。5回の先頭打者をフォアボールで出すと、ベンチも父兄も「またか・・・」という空気になります。。。
監督さんや野球経験のある父兄からは「5回からいつもボールがお辞儀をする」「腕が振れてないない」「肩のスタミナがない」と言われます。
これらの問題を克服するにはどんな練習をすればいいのでしょうか?(40代女性)
廣川さんの答え
今回頂いたご質問は、私が比較的得意としている「投手」についてですね。実際にご子息の投球を見たわけではないので、「一般的によくあるケース」として回答させて頂きます。
学童野球や中学野球のグラウンドの現場に行くと、よく「腕を振れ!」と声をかけている指導者の方が多いです。そしてよく聞かれる「肩のスタミナ」という言葉。よく使われる言葉ですが、分かりにくいですよね。
<腕が振れるメカニズム>
右投げ投手の場合、左足を踏み込んだ後に右腕を振ってボールを投げますが、この「左足の踏み込み」が重要になります。質問者のお子さんは「球は速い方」という記載がありますので、
(1)腕の振りが速い
(2)右足→左足への体重移動の速度が速い
のいずれか、もしくは両方が他の子たちより優れていると考えられます。
そして(1)(2)はどちらとも「踏み出した足への強い負荷」がかかります。
<腕が振れなくなる原因>
そもそも投球は踏み込んだ左足で体重移動のエネルギーをせき止め、上半身に「慣性」が働くことで強い腕の振りが生み出されます。恐らく、ご子息の場合は5回くらいに足に疲れが出ているために体重移動をせき止める力が弱くなり、「慣性」が働かなくなって腕が振れなくなっているものと考えられます。つまり、こういうケースで「腕を振れ!」という指導者が多いのですが、実際は「腕が原因ではないケース」が圧倒的に多いのです。
<対処方法>
こういうケースで「腕を振れ!」というアドバイスはとても危険です。
左足が崩れた状態でいつもと同じ球速を出そうとすると、いつもよりも強度高く腕を振る必要があるからです。本来の形を崩した上にいつもより強い強度で投げるわけですから、当然のように肩や肘を故障するリスクが高まります。
私の場合は投手の足元が不安定になってきた時には、たとえ2回や3回でも交代させます。なぜかというと、試合中の修正がかなり難しく、故障のリスクばかりが高くなるからです。ご子息の場合、現時点では4回終了時点で交代させるのが妥当な判断だと思います。
<トレーニング方法>
「どうしても最後まで投げたい!」ということであれば、下半身の強化が必要です。小学生だと強度の高い筋力トレーニングはあまりお勧めできませんので、アジリティディスク(下記画像参照)などを使った練習が良いのではないかと思います。これならご自宅の室内でもできますし、ランニングなどに比べると小学生でも楽しんで取り組めます。
<最後に>
他に制球を乱す理由としては「握力の低下」も考えられますが、変化球を投げない学童野球では握力の低下による制球力低下は現象としては少ないケースだと思います。上半身に異常が出る前に下半身が疲れてくるケースのほうが圧倒的に多いです。
野球選手の動作は投球、打撃、守備などありますが、ボールを持つのもグローブをはめるのも、バットを握るのも「手」なので、どうしても関心が上半身に向いてしまいがちです。しかし動作不全の原因は足の使い方や下半身の筋力に原因があるケースが多いのです。
「木を見て森を見ず」の指導にならないよう留意する必要があります。
*「ご用件」に「少年野球質問箱」と書いて、廣川さんに教えて欲しい悩みや疑問をお送りください。
【球歴】
えひめ西(現松山)、リトルリーグ、愛媛県立松山北高等学校、甲南大学(阪神大学野球連盟)、リクルート(社会人野球東京支部)
【受賞歴】
■リトルリーグ
-四国大会優勝
■高校野球
-愛媛県中予地区新人戦優勝
-秋季愛媛県大会準優勝(四国大会出場)
-第59回選抜高等学校野球大会出場
■大学野球
-阪神大学野球連盟2部リーグ最優秀投手賞
(→1部昇格)
-阪神大学野球連盟特別賞(3度)
・1試合最多奪三振記録樹立(18個/当時)
・通算最多奪三振記録樹立(351個/当時)
・通算最多登板記録樹立(57試合/当時)
-学生日本代表候補選手選出 など
【野球指導歴】
-学童野球コーチ
-中学硬式野球チームコーチ・監督
-その他高校・社会人野球臨時コーチなど多数。
「アーム式の投げ方、どうやって直せばいいの?」 「息子が中学でピッチャーをしているのですが、コントロールが安定しません。ストライクをバシバシ取ってコントロールが良い日があったかと思えば、全然ストライクが入らないコントロールが悪い日があったり、毎試合『投げてみないと分かりません』という状態です。 田舎ののどかな中学で、顧問の先生も熱心ではありますが野球経験は中学までしかないらしく、どちらかというと根性重視の指導で専門的な指導は受けられません(夫も野球未経験者です)。 以前に対戦したチームの先生から、『ボールは速いけどアームですね』と言われ、息子と一緒に『アーム投げ』についてネットで調べました。よくない投げ方だというのはなんとなくわかったのですが、どうやったら直せるのか、どんな練習をすればいいのかが分かりません。何か方法があれば教えていただけませんでしょうか。宜しくお願い致します。』(40代女性) 学童野球や中学野球のグラウンドの現場に行くと、よく「腕を振れ!」と声をかけている指導者の方が多いです。そしてよく聞かれる「肩のスタミナ」という言葉。よく使われる言葉ですが、分かりにくいですよね。
<腕が振れるメカニズム>
右投げ投手の場合、左足を踏み込んだ後に右腕を振ってボールを投げますが、この「左足の踏み込み」が重要になります。質問者のお子さんは「球は速い方」という記載がありますので、
(1)腕の振りが速い
(2)右足→左足への体重移動の速度が速い
のいずれか、もしくは両方が他の子たちより優れていると考えられます。
そして(1)(2)はどちらとも「踏み出した足への強い負荷」がかかります。
<腕が振れなくなる原因>
そもそも投球は踏み込んだ左足で体重移動のエネルギーをせき止め、上半身に「慣性」が働くことで強い腕の振りが生み出されます。恐らく、ご子息の場合は5回くらいに足に疲れが出ているために体重移動をせき止める力が弱くなり、「慣性」が働かなくなって腕が振れなくなっているものと考えられます。つまり、こういうケースで「腕を振れ!」という指導者が多いのですが、実際は「腕が原因ではないケース」が圧倒的に多いのです。
<対処方法>
こういうケースで「腕を振れ!」というアドバイスはとても危険です。
左足が崩れた状態でいつもと同じ球速を出そうとすると、いつもよりも強度高く腕を振る必要があるからです。本来の形を崩した上にいつもより強い強度で投げるわけですから、当然のように肩や肘を故障するリスクが高まります。
私の場合は投手の足元が不安定になってきた時には、たとえ2回や3回でも交代させます。なぜかというと、試合中の修正がかなり難しく、故障のリスクばかりが高くなるからです。ご子息の場合、現時点では4回終了時点で交代させるのが妥当な判断だと思います。
<トレーニング方法>
「どうしても最後まで投げたい!」ということであれば、下半身の強化が必要です。小学生だと強度の高い筋力トレーニングはあまりお勧めできませんので、アジリティディスク(下記画像参照)などを使った練習が良いのではないかと思います。これならご自宅の室内でもできますし、ランニングなどに比べると小学生でも楽しんで取り組めます。
<最後に>
他に制球を乱す理由としては「握力の低下」も考えられますが、変化球を投げない学童野球では握力の低下による制球力低下は現象としては少ないケースだと思います。上半身に異常が出る前に下半身が疲れてくるケースのほうが圧倒的に多いです。
野球選手の動作は投球、打撃、守備などありますが、ボールを持つのもグローブをはめるのも、バットを握るのも「手」なので、どうしても関心が上半身に向いてしまいがちです。しかし動作不全の原因は足の使い方や下半身の筋力に原因があるケースが多いのです。
「木を見て森を見ず」の指導にならないよう留意する必要があります。
*「ご用件」に「少年野球質問箱」と書いて、廣川さんに教えて欲しい悩みや疑問をお送りください。
「廣川さん」プロフィール
廣川寿(ひろかわ ひさし)1969年生まれ。愛媛県出身。全国約7,000人の野球指導者及び保護者から絶大な支持を得ているFacebookページ「少年野球指導者のひとり言」管理人。【球歴】
えひめ西(現松山)、リトルリーグ、愛媛県立松山北高等学校、甲南大学(阪神大学野球連盟)、リクルート(社会人野球東京支部)
【受賞歴】
■リトルリーグ
-四国大会優勝
■高校野球
-愛媛県中予地区新人戦優勝
-秋季愛媛県大会準優勝(四国大会出場)
-第59回選抜高等学校野球大会出場
■大学野球
-阪神大学野球連盟2部リーグ最優秀投手賞
(→1部昇格)
-阪神大学野球連盟特別賞(3度)
・1試合最多奪三振記録樹立(18個/当時)
・通算最多奪三振記録樹立(351個/当時)
・通算最多登板記録樹立(57試合/当時)
-学生日本代表候補選手選出 など
【野球指導歴】
-学童野球コーチ
-中学硬式野球チームコーチ・監督
-その他高校・社会人野球臨時コーチなど多数。