今回の質問
「毎日投げたがる息子、肩の消耗が心配です」
息子の軟式少年野球チームでコーチをしています。野球経験は中学までしかなくいわゆる「お父さんコーチ」です。
チームでは私の息子がエースです。チーム自体が弱いということもありますが、よく打ち込まれ試合もなかなか勝てません。
本人も悔しいようで、暇があれば壁当てを行うなどもっと上手くなりたいようです。
また、私が自営業のため、学校から帰ってくるとピッチング練習の相手をせがみ、毎日5、60球くらい全力で投げています(もちろん、ストレートだけです)。
今のところ、肩が痛いなどとは全く言って来ませんが、「肩は消耗品」「小学生のうちから投げ込みは必要ない」という意見を最近よく耳にします。
この先、中学、高校でも野球を続けるならば、毎日の投げ込みはやらない方がいいのでしょうか?
または、もっと球数を減らしたり、毎日ではなく週に三回くらいなどに減らし、肩を休める日などを取り入れて続けた方がいいのでしょうか?
ちなみにチームの練習は週三回で、毎回ピッチング練習をしているわけではありません。ピッチング練習は試合が行われる週にやるだけです。(30代男性)
廣川さんの答え
「投球過多が障害を引き起こす」というのが日米ともに医学的な共通見解です。
下の表のように日本及びアメリカにおいては医学的な見地からガイドラインが設定されています。
ただ、「投球制限」は一定の効果があるものの、少年野球の現場には誤解もあります。
「うちのチームは球数を制限しているので大丈夫」と誇らしげに語る指導者がたまにいらっしゃるのですが、私は「球数制限」はそんな万能なものではないと思います。
(a)技術的な課題
そもそもの投球動作自体が「肩や肘に負担のかかる投げ方」になっているケースです。投手専門の指導者が少ない小学生の選手に多く見られます。ただ小学生の場合は筋力が弱いために負荷そのものが小さく、投球数を制限していると痛みを発症しないために問題が顕在化しにくいのが厄介です。こういう選手が技術的な課題を持ったまま中学硬式野球などに進むと、そこで故障してしまうケースがあります。急激に筋力が向上している時期も要注意です。
(b)試合中の疲れによる動作の乱れ
試合中の投球数が増えてくると、当然「疲れ」が出てきます。疲れはもともと理想的なフォームで投げていた投手の投球フォームの再現性を阻害し、「肘が下がる」など、動作の乱れを引き起こします。その状態のままで投球を継続すると、肩や肘に痛みが生じることがあります。
(c)慢性的な疲労による動作の乱れ
例えば前日に試合で完投した場合、その疲れが翌日に残る場合があります。私も高校時代や大学時代に連投をすることがよくありましたが、3連投くらいになるとボールの走りが悪くなります。その時に投球強度を高めて速度を維持しようとすることで投球動作を乱すことがあります。
(b)、(c)については投球数を制限することで効果があると思います。
(a)も効果がなくはないのですが、この場合は根本的には技術に問題があるので技術課題を解決しなければなりません。
(1)大きな動作での投球を心がける
動作が小さくなると「体の特定部位への負荷」が大きくなるので、体への負荷を分散させながらもいろんな部位の力を利用するためにも、できるだけ体を大きく使って投球することをお勧めします。
(2)スピードよりもコントロール重視で
全力投球は体への負荷もありますが、それ以上に「動作の乱れ」を引き起こしやすいです。投球動作を安定させるためにも少し力を抜いてコントロール重視で練習した方が動作の安定を保ちやすいです。「ボールが逸れる」は何かしらの動作の乱れが出ていることのアラームです。60-70%くらいの力で繰り返し同じボールを投げられるように練習しましょう。
(3)動作の乱れが多くなったら中止する
私は学童野球の指導者をしていた時は、仮に投球数が20球程度であっても動作が乱れてきたら「今日はこれくらいにしておこう」と言って投球練習を中止していました。無理に継続すると変な負荷がかかって故障に発展する恐れがあります。
(1)〜(3)に留意しながら、小学生の場合は中1日から2日、中学生の場合は2勤1休くらいのペースで練習するのが良いのではないかと思います。
*「ご用件」に「少年野球質問箱」と書いて、廣川さんに教えて欲しい悩みや疑問をお送りください。
【球歴】
えひめ西(現松山)、リトルリーグ、愛媛県立松山北高等学校、甲南大学(阪神大学野球連盟)、リクルート(社会人野球東京支部)
【受賞歴】
■リトルリーグ
-四国大会優勝
■高校野球
-愛媛県中予地区新人戦優勝
-秋季愛媛県大会準優勝(四国大会出場)
-第59回選抜高等学校野球大会出場
■大学野球
-阪神大学野球連盟2部リーグ最優秀投手賞
(→1部昇格)
-阪神大学野球連盟特別賞(3度)
・1試合最多奪三振記録樹立(18個/当時)
・通算最多奪三振記録樹立(351個/当時)
・通算最多登板記録樹立(57試合/当時)
-学生日本代表候補選手選出 など
【野球指導歴】
-学童野球コーチ
-中学硬式野球チームコーチ・監督
-その他高校・社会人野球臨時コーチなど多数。
下の表のように日本及びアメリカにおいては医学的な見地からガイドラインが設定されています。
ただ、「投球制限」は一定の効果があるものの、少年野球の現場には誤解もあります。
「うちのチームは球数を制限しているので大丈夫」と誇らしげに語る指導者がたまにいらっしゃるのですが、私は「球数制限」はそんな万能なものではないと思います。
投球障害が起こる主な原因
私は投球障害が起こる原因としては下記のものが挙げられると思います。(a)技術的な課題
そもそもの投球動作自体が「肩や肘に負担のかかる投げ方」になっているケースです。投手専門の指導者が少ない小学生の選手に多く見られます。ただ小学生の場合は筋力が弱いために負荷そのものが小さく、投球数を制限していると痛みを発症しないために問題が顕在化しにくいのが厄介です。こういう選手が技術的な課題を持ったまま中学硬式野球などに進むと、そこで故障してしまうケースがあります。急激に筋力が向上している時期も要注意です。
(b)試合中の疲れによる動作の乱れ
試合中の投球数が増えてくると、当然「疲れ」が出てきます。疲れはもともと理想的なフォームで投げていた投手の投球フォームの再現性を阻害し、「肘が下がる」など、動作の乱れを引き起こします。その状態のままで投球を継続すると、肩や肘に痛みが生じることがあります。
(c)慢性的な疲労による動作の乱れ
例えば前日に試合で完投した場合、その疲れが翌日に残る場合があります。私も高校時代や大学時代に連投をすることがよくありましたが、3連投くらいになるとボールの走りが悪くなります。その時に投球強度を高めて速度を維持しようとすることで投球動作を乱すことがあります。
(b)、(c)については投球数を制限することで効果があると思います。
(a)も効果がなくはないのですが、この場合は根本的には技術に問題があるので技術課題を解決しなければなりません。
どんな練習をすると良いか?
技術を高めながらも故障を回避するためにはどんなことが必要か?(1)大きな動作での投球を心がける
動作が小さくなると「体の特定部位への負荷」が大きくなるので、体への負荷を分散させながらもいろんな部位の力を利用するためにも、できるだけ体を大きく使って投球することをお勧めします。
(2)スピードよりもコントロール重視で
全力投球は体への負荷もありますが、それ以上に「動作の乱れ」を引き起こしやすいです。投球動作を安定させるためにも少し力を抜いてコントロール重視で練習した方が動作の安定を保ちやすいです。「ボールが逸れる」は何かしらの動作の乱れが出ていることのアラームです。60-70%くらいの力で繰り返し同じボールを投げられるように練習しましょう。
(3)動作の乱れが多くなったら中止する
私は学童野球の指導者をしていた時は、仮に投球数が20球程度であっても動作が乱れてきたら「今日はこれくらいにしておこう」と言って投球練習を中止していました。無理に継続すると変な負荷がかかって故障に発展する恐れがあります。
(1)〜(3)に留意しながら、小学生の場合は中1日から2日、中学生の場合は2勤1休くらいのペースで練習するのが良いのではないかと思います。
*「ご用件」に「少年野球質問箱」と書いて、廣川さんに教えて欲しい悩みや疑問をお送りください。
「廣川さん」プロフィール
廣川寿(ひろかわ ひさし)1969年生まれ。愛媛県出身。全国約7,000人の野球指導者及び保護者から絶大な支持を得ているFacebookページ「少年野球指導者のひとり言」管理人。【球歴】
えひめ西(現松山)、リトルリーグ、愛媛県立松山北高等学校、甲南大学(阪神大学野球連盟)、リクルート(社会人野球東京支部)
【受賞歴】
■リトルリーグ
-四国大会優勝
■高校野球
-愛媛県中予地区新人戦優勝
-秋季愛媛県大会準優勝(四国大会出場)
-第59回選抜高等学校野球大会出場
■大学野球
-阪神大学野球連盟2部リーグ最優秀投手賞
(→1部昇格)
-阪神大学野球連盟特別賞(3度)
・1試合最多奪三振記録樹立(18個/当時)
・通算最多奪三振記録樹立(351個/当時)
・通算最多登板記録樹立(57試合/当時)
-学生日本代表候補選手選出 など
【野球指導歴】
-学童野球コーチ
-中学硬式野球チームコーチ・監督
-その他高校・社会人野球臨時コーチなど多数。