ニュース 2018.05.25. 17:10

子どもを野球肘から守るために知っておきたい3つの症状

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投げる動作を繰り返すと、肘関節に負担がかかります。その負担が子どもの身体的な許容範囲を超えて増え続けると、やがて「野球肘」になってしまうことになります。肘関節は、股関節や肩関節に比べると関節そのものが小さいため、外力に対しても弱い部位と言えます。「野球肘」になる前に知っておきたい、痛みの出る3つの部位の症状とその原因を紹介します。

(1)内側型


投球動作でボールをリリースするまでの加速期に、肘には内側に強い牽引力(引っ張る力:外反ストレス)が加わります。投球動作の繰り返しが肘の内側側副(ないそくそくふく)靭帯を傷めたり、上腕骨の肘関節付近に障害が起こったりします。一度の外力(投球)で激しい痛みを起こすこともありますが、「痛いけれど投げられる」という状態を繰り返していると、やがて肘内側の損傷が進行し、まったく投げられない状態にまで悪化してしまいます。「痛いけれど投げられる」状態はケガをしているのと同じであり、投げ続けることはより痛みを悪化させることに他なりません。

(2)外側型


成長期の投手に多い障害の一つです。骨が成長段階にあるときに投球動作を繰り返すことによって、肘関節が強制的に外反され(外に反り返る状態)、橈骨(とうこつ:肘から手首にかけての骨、親指側)の肘側の骨頭が衝撃を受けて血行障害が起こる状態です。ひどい場合は骨の一部が軟骨とともに剥離骨折します。投球動作を中止し、安静にすることで骨への物理的ストレスを軽減し、経過が良くなる場合があります。

(3)後方型


肘の後方が投球動作によって圧迫されたり、引っ張られたりして起こります。特に投げ終わりに下半身を十分に使えず、上体だけで投げてしまうと、投球ストレスは肘で受けてしまうことになります。右投手であれば投げ終わったあとに左の股関節にしっかりと体重が乗るようにし、肘は鞭のようにしならせるのではなく、体に巻き付けるように投げ終わると加速した大きな力をうまく逃すことができます。

「痛いけれど投げられる」はケガをしているのと同じ!


このような症状が見られたり、こうした状態が続く場合は、一度医療機関を受診して医師に相談をするようにしましょう。「投げられるから」といって続けていると、後々肘痛によって長い期間練習を休んだり、骨が変形してしまったりすることも考えられます。長くプレーを続けるためにも痛みがあるときはムリをしないことを心がけましょう。

肘関節は小さく、外力には弱いので痛みが続く場合はムリをしないことが大切


著者プロフィール



アスレティックトレーナーの西村典子さん

アスレティックトレーナー/西村典子(にしむらのりこ)
日本体育協会公認アスレティックトレーナー、NSCA-CSCS、 NSCA-CPT。東海大学スポーツ教育センター所属。高校、大学など学生スポーツを中心としたトレーナー活動を行う一方で、スポーツ傷害予防や応急処置、トレーニングやコンディショニングに関する教育啓蒙活動を行う。また一般を対象としたストレッチ講習会、トレーニング指導、小中学生を対象としたスポーツ教室でのウォームアップやクールダウンといったさまざまな年齢層への活動がある。一般雑誌、専門誌、ネットメディアなどでも取材・執筆活動中。
大阪府富田林市出身。奈良女子大学文学部教育学科体育学専攻卒。


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