ニュース 2018.05.30. 16:37

【少年野球質問箱】カーブの投げ方を教えてください(後編)

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今回の質問



「カーブの投げ方を教えてください」

この春から中学生の息子(軟式でピッチャーをしてします)が、「中学では流石にストレート1本では通用しない」と考え、変化球の中でも肩・肘への負担が少ないと言われているカーブの習得を目指しています。ですが、これが思いの外難しくて苦戦しているようです。

息子は右のオーバーハンドですが、カーブの時は曲げたい意識が強いあまり、肘が大きく下がってサイドスローのようになり、無理くり手首を捻って投げています。見ているだけで肘を壊しそうで怖いです。

本人も顧問や先輩から教わったり、youtubeなどで色々調べて試行錯誤してるようなのですが、これまであんまりしっくりくる「カーブの投げ方」に出会ってないようです。

カーブ以外の変化球を習得した方が良いのかなとも思うのですが、まだ体も細く未発達なので肩・肘を壊しそうで怖いです。カーブの投げ方を分かりやすく教えていただけませんでしょうか?(40代 男性)


廣川さんの答え

前回は球種としてカーブを習得することのメリットについてお伝えしました。


今回は具体的なカーブの投げ方について書きたいと思います。

具体的な投げ方の前に「軌道イメージ」の形成が重要です

カーブ以外の球種のほとんどは「打者がストレートと錯覚すること」を狙って投げるものが多いので、できるだけストレートに近い軌道を目指して投げます。しかしカーブはそもそもストレートとは全く異なる軌道を描きます。そのため私は「どんな軌道を描いて捕手のミットに収まるか?」というイメージをしっかり持つことが重要だと思います。カーブの制球力が良い投手はこの「軌道イメージ」をかなり明確に持っている選手が多いです。

図1


そしてこの軌道イメージを持っている投手は「ゆっくり大きく曲がる」「小さく手元で鋭く落ちる」「斜めに落とす」などカーブのバリエーションを持たせることができるようになります。

では具体的な投げ方の解説に入りたいと思います。

大切な「2つのスペース」

私はカーブの投げ方を指導する時に「2つのスペース」が大切だと説明しています。この2つのスペースを作ることができるとカーブ自体が良く曲がるだけでなく、ストレートにも良い影響があります。

(1)正対した時、耳の横に作るスペース
トップ → 正対 → リリースと投球動作が連続する中で、正対した時に耳の横にスペースを作ることが重要です。カーブはリリース時に手首を寝かせることで縦回転をかける変化球ですが、カーブを投げることが下手な投手の多くは手首が寝ないことでスライダー回転がかかってしまうことが多いです。「手首を寝かせる」と指導しても選手にはなかなか伝わりにくいので、私は「耳の横にバスケットボール1個分くらいのスペースを作る」と指導しています。
この「耳の横のスペース」は「手首を寝かせる意識」だけでなく、「肘の高さを確保する」という効果もあります。これはストレートを投げる時にも必要です。

図2


(2)フォロースルーの時、胸の前に作るスペース
カーブの習得がうまく行かないもう一つの原因として、手前でバウンドしてしまうケースをよく見かけます。これを「パワーが足りない」と言って強度を高めて投げさせようとすると肘を故障してしまいます。カーブがワンバウンドするのは前述の「正対した時に十分な肘の高さを確保できていないケース」と「フォロースルーが小さいケース」に大別されます。フォロースルーの時にも「胸の前に大きなスペースを作るイメージ」で投げるように指導しています。
「フォロースルーを大きく取る」は「ボールを長く持つ意識」と踏み出した足への負荷がかかるため、「下半身主導の投球」にも良い影響を与えます。


図3

鋭く曲げたい時にはストレートと同じ「スパイラルリリース」を使う

カーブに回転をかける方法は2つあります。
①のようにカーブを「強く捻る」という意識を持ちすぎると肘が下がりやすくなったり、肘の内側側副靭帯への負荷が上がることで肘の故障に繋がることがあります。技術的にも「捻る」とリリースのタイミングが安定しにくいので、制球の難易度は上がります。
私は高校までは①の方法で投げていましたが、大学生の時に②の方法に変えました。あくまでも個人的な感想ですが、②の方法の方が強い回転がかけやすく、肘への負担も小さく感じます。②は手首を内旋させるので、ストレートを投げる時の「スパイラルリリース」と同じです。
①は比較的「大きくゆっくり」、②は「小さく鋭く」曲がります。


図4

カーブは奥が深い球種です

私は現役時代に3種類くらいのカーブを使い分けていました。
・緩く大きく曲げる「ドロップ系のカーブ」
・球速が高めで鋭く曲がる、今で言う「パワーカーブ」
・斜めに曲がるカーブとスライダーの中間くらい、今で言う「スラーブ」

スライダー・シュート・スプリットなども投げられたのですが、試合ではこの3種類のカーブしか使いませんでした。私が一度も肘を故障することなく社会人野球までプレーできたのは、変化球はカーブを主体にしていたのが大きな理由だと今でも思っています。



*「ご用件」に「少年野球質問箱」と書いて、廣川さんに教えて欲しい悩みや疑問をお送りください。


「廣川さん」プロフィール

廣川寿(ひろかわ ひさし)1969年生まれ。愛媛県出身。全国約7,000人の野球指導者及び保護者から絶大な支持を得ているFacebookページ「少年野球指導者のひとり言」管理人。

【球歴】
えひめ西(現松山)、リトルリーグ、愛媛県立松山北高等学校、甲南大学(阪神大学野球連盟)、リクルート(社会人野球東京支部)

【受賞歴】
■リトルリーグ
-四国大会優勝

■高校野球
-愛媛県中予地区新人戦優勝
-秋季愛媛県大会準優勝(四国大会出場)
-第59回選抜高等学校野球大会出場

■大学野球
-阪神大学野球連盟2部リーグ最優秀投手賞
(→1部昇格)
-阪神大学野球連盟特別賞(3度)
 ・1試合最多奪三振記録樹立(18個/当時)
 ・通算最多奪三振記録樹立(351個/当時)
 ・通算最多登板記録樹立(57試合/当時)
-学生日本代表候補選手選出 など

【野球指導歴】
-学童野球コーチ
-中学硬式野球チームコーチ・監督
-その他高校・社会人野球臨時コーチなど多数。


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