今回の質問・お悩み
「故障しない『正しい投げ方』ってどんな投げ方?」
中学の部活でいわゆるお父さんコーチをしています。日々勉強の毎日です。
昨今、球児たちの投げ込みが問題視されており、私も何となく1日50球くらいにするようにと指導しています。まだまだ未熟なので、打者がバットをたくさん振るようにピッチャーにももっと投げ込みをさせた方がいいのかなと思いますが、やはり肘、肩の故障が怖いです。
しかし、最近読んだ本でプロ野球OBのある名投手がこんなことを言っていました。
「投げ込みの数が問題なのではなく、正しい投げ方ができていないことが問題」
また、ヤキュイクの以前のチーム取材記事の中でも、有名チームの監督さんが「正しい投げ方をしていれば、小学生でも変化球を投げても肘・肩は痛めない」というようなことを言っていたかと思います。
そこで、教えて欲しいのですが、「正しい投げ方」とは具体的にはどんな投げ方なのでしょうか?
お恥ずかしい話ですが、子供たちの投球フォームを見ていても、正しい投げ方ができているのかどうなのか良くわかりません。肘・肩を壊さないための正しい投げ方のポイントなどを教えてください。
廣川さんの答え
『正しい投げ方』という言葉は野球の現場でもよく使われる言葉ですが、この言葉はとても定義が曖昧です。ちょっと言葉遊びのようになりますが、『正しい』とは目的に即した手法を指す言葉なので、『目的』が変われば当然ながら正解も変わります。
「球速が高くなる投げ方」
「制球力が向上する投げ方」
「投球数を多く投げられる投げ方」
「故障を発生させにくい投げ方」
…etc
今回のご質問は「故障を回避すること」が目的だと思いますので、「故障回避」に着目して回答したいと思います。今回は選手の年齢に関係しない「大前提」と「小学生における留意点」について書きたいと思います。中学生以降の留意点と具体的な投げ方については次回に説明したいと思います。
【大前提(どの世代も同じです)】
投球による故障は「関節」または「靱帯」への異常または過剰な負荷によって発生することがほとんどです。関節は曲がる方向が決まっていますし、靱帯も耐えられる負荷には限界があります。本来曲げるべきではない方向に関節を曲げると骨折などを起こしたり、靱帯へ過剰な負荷を繰り返すと靱帯損傷などを起こします。
【小学生の場合】
小学生は骨や関節が柔らかく、筋力が未発達であることが特徴です。
身体が柔らかいので大人だったら怪我するような体勢になっても、柔軟性で怪我を回避することがあります。一方で筋力が弱いために反復運動において同じ動作を維持することが難しい傾向があります。これは仮に「正しい投げ方」で投げたとしても、「正しい投げ方で投げ続ける」が困難であることを意味します。綺麗なフォームで投げることができる子も疲れなどによってフォームを崩すことで故障に至るケースが多々あります。
まず小学生は「多く投げ過ぎない」を重視して頂きたいと思います。
あと「大人の投げ方を子供に教えてはいけない」という方もいます。
私もそう思います。
高校生くらいになると身体の使い方の無駄を極力省くことで「より球威のあるボール」を投げようとしますが、同じことを小学生がやると腕が振れ過ぎてしまって肩に強い遠心力がかかり、結果として肩を故障してしまうケースもあります。
「強度の高いボールを投げる=身体に強い負荷がかかっている」
という認識を指導する側は強く意識すべきだと思います。
小学生のうちはあまり技術的なことは気にせず、以下の3点を重視して練習することをお勧めします。
【1】身体全体を大きく使って投げる(身体への負荷が分散します)
【2】コントロール重視で投げる(投球動作が安定します)
【3】たくさん投げない(疲れからくる動作の乱れによる故障を回避します)
特に【3】は重要だと思います。
投球動作の微妙な乱れはかなり専門的な知識がないと気がつかないです。繰り返しますが「速いボールを投げる投げ方」と「負荷の高い投げ方」はほぼ同義です。だから球が速い選手ほど多投させないような配慮が必要だと思います。
選手の故障を防ぐためには技術指導も大事ですが、それ以前の「指導者の考え方」が大事だと思います。良い選手ほど無理をしようとします。「今は無理する時じゃない」とブレーキを踏めるのは指導者だけだと思います。
後編では技術的な留意点についても触れていきたいと思います。
*「ご用件」に「少年野球質問箱」と書いて、廣川さんに教えて欲しい悩みや疑問をお送りください。
【球歴】
えひめ西(現松山)、リトルリーグ、愛媛県立松山北高等学校、甲南大学(阪神大学野球連盟)、リクルート(社会人野球東京支部)
【受賞歴】
■リトルリーグ
-四国大会優勝
■高校野球
-愛媛県中予地区新人戦優勝
-秋季愛媛県大会準優勝(四国大会出場)
-第59回選抜高等学校野球大会出場
■大学野球
-阪神大学野球連盟2部リーグ最優秀投手賞
(→1部昇格)
-阪神大学野球連盟特別賞(3度)
・1試合最多奪三振記録樹立(18個/当時)
・通算最多奪三振記録樹立(351個/当時)
・通算最多登板記録樹立(57試合/当時)
-学生日本代表候補選手選出 など
【野球指導歴】
-学童野球コーチ
-中学硬式野球チームコーチ・監督
-その他高校・社会人野球臨時コーチなど多数。
「球速が高くなる投げ方」
「制球力が向上する投げ方」
「投球数を多く投げられる投げ方」
「故障を発生させにくい投げ方」
…etc
今回のご質問は「故障を回避すること」が目的だと思いますので、「故障回避」に着目して回答したいと思います。今回は選手の年齢に関係しない「大前提」と「小学生における留意点」について書きたいと思います。中学生以降の留意点と具体的な投げ方については次回に説明したいと思います。
【大前提(どの世代も同じです)】
投球による故障は「関節」または「靱帯」への異常または過剰な負荷によって発生することがほとんどです。関節は曲がる方向が決まっていますし、靱帯も耐えられる負荷には限界があります。本来曲げるべきではない方向に関節を曲げると骨折などを起こしたり、靱帯へ過剰な負荷を繰り返すと靱帯損傷などを起こします。
【小学生の場合】
小学生は骨や関節が柔らかく、筋力が未発達であることが特徴です。
身体が柔らかいので大人だったら怪我するような体勢になっても、柔軟性で怪我を回避することがあります。一方で筋力が弱いために反復運動において同じ動作を維持することが難しい傾向があります。これは仮に「正しい投げ方」で投げたとしても、「正しい投げ方で投げ続ける」が困難であることを意味します。綺麗なフォームで投げることができる子も疲れなどによってフォームを崩すことで故障に至るケースが多々あります。
まず小学生は「多く投げ過ぎない」を重視して頂きたいと思います。
あと「大人の投げ方を子供に教えてはいけない」という方もいます。
私もそう思います。
高校生くらいになると身体の使い方の無駄を極力省くことで「より球威のあるボール」を投げようとしますが、同じことを小学生がやると腕が振れ過ぎてしまって肩に強い遠心力がかかり、結果として肩を故障してしまうケースもあります。
「強度の高いボールを投げる=身体に強い負荷がかかっている」
という認識を指導する側は強く意識すべきだと思います。
小学生のうちはあまり技術的なことは気にせず、以下の3点を重視して練習することをお勧めします。
【1】身体全体を大きく使って投げる(身体への負荷が分散します)
【2】コントロール重視で投げる(投球動作が安定します)
【3】たくさん投げない(疲れからくる動作の乱れによる故障を回避します)
特に【3】は重要だと思います。
投球動作の微妙な乱れはかなり専門的な知識がないと気がつかないです。繰り返しますが「速いボールを投げる投げ方」と「負荷の高い投げ方」はほぼ同義です。だから球が速い選手ほど多投させないような配慮が必要だと思います。
選手の故障を防ぐためには技術指導も大事ですが、それ以前の「指導者の考え方」が大事だと思います。良い選手ほど無理をしようとします。「今は無理する時じゃない」とブレーキを踏めるのは指導者だけだと思います。
後編では技術的な留意点についても触れていきたいと思います。
*「ご用件」に「少年野球質問箱」と書いて、廣川さんに教えて欲しい悩みや疑問をお送りください。
「廣川さん」プロフィール
廣川寿(ひろかわ ひさし)1969年生まれ。愛媛県出身。全国約7,000人の野球指導者及び保護者から絶大な支持を得ているFacebookページ「少年野球指導者のひとり言」管理人。【球歴】
えひめ西(現松山)、リトルリーグ、愛媛県立松山北高等学校、甲南大学(阪神大学野球連盟)、リクルート(社会人野球東京支部)
【受賞歴】
■リトルリーグ
-四国大会優勝
■高校野球
-愛媛県中予地区新人戦優勝
-秋季愛媛県大会準優勝(四国大会出場)
-第59回選抜高等学校野球大会出場
■大学野球
-阪神大学野球連盟2部リーグ最優秀投手賞
(→1部昇格)
-阪神大学野球連盟特別賞(3度)
・1試合最多奪三振記録樹立(18個/当時)
・通算最多奪三振記録樹立(351個/当時)
・通算最多登板記録樹立(57試合/当時)
-学生日本代表候補選手選出 など
【野球指導歴】
-学童野球コーチ
-中学硬式野球チームコーチ・監督
-その他高校・社会人野球臨時コーチなど多数。