今回の質問・お悩み
「一塁手がベースを踏む時の足」
息子は一塁手をやっております。右投げです。
三塁からの送球が右側へ逸れた球を左足でベースを踏んで、伸びながら取ったら監督に「左足でベースを踏むんじゃねーよ、恥ずかしいよ」と言われました。
私も野球経験があり「一塁手は両足を使え」、「イレギュラーに備え、送球に対して体を正面に」、「本塁を狙われる場面で送球が右に逸れたら、左足でベースを踏み、本塁送球に備える」と教わりました。
左足でベースを踏むなと言う明確な理由を監督から聞いておりませんが、大きなデメリットはありますか?
廣川さんの答え
まずは算数の問題です。
下図1の長方形で(1)縦、(2)横、(3)対角線、で一番距離が長いのは(3)の「対角線」ですよね?
人間の身体も同じで「指先→反対足のつま先」が最も距離が長くなります。
これを前提に今回の質問に答えていきたいと思います。
前提でも触れた通り、人間の体で最も長い距離が取れるのは「手の指先→反対足のつま先」です。右利きの場合は左手で捕球するので「右足→左手」が最も長い距離が取れるので、一塁手が原則として右足でベースを踏むことになります。一番長い距離を取れる体勢を作って送球に備える必要があります。左利きの場合は右足になりますね。これが「原則」です。
一塁側に転がったバントを処理した野手からの送球や本塁ベース付近に転がったゴロの処理をした野手の送球を受けるときには一塁手の利き腕にかかわらず「左足」でベースを踏みます。またご指摘のように送球が右側に大きく逸れた場合には「ベースを踏むこと」にこだわらず、まずは捕球をしなければなりません。ベースから離れて捕球した場合には左足で踏んだ方が早く踏める場合には、どちらの足で踏むかにこだわらず「早くベースを踏める方の足」で踏むことになります。
「送球に対して体を正面に」というのは場面によって判断が異なると思います。走者なし、または走者1塁の場面であれば、送球が逸れても体を伸ばしてアウトを狙うという判断もあり得ます。スコアリングポジションに走者がいる場合は、一塁手が後逸すると失点につながりますので、打者走者を生かしてしまっても、「送球を後ろに逸らさない」を優先させて体の正面で止めに行くという判断になるかと思います。
自分と利き腕が逆の選手を指導するのは難しいです。投手専門の指導者でも「左投手のことは全くわからない」と言われる指導者も多数いらっしゃいます。私は左利きなので子どもの頃から自分の感覚や理論を右利きの人に説明したり、右利きの選手や指導者の言葉を左利きに置き換えて咀嚼することに慣れていますが、慣れない人にとっては難しいと思います。
そういう場合は「教える」ということにこだわらず、選手に両方やらせて「どっちがやりやすかった?」と尋ねながら「一緒にベストな形を創っていく」という指導法でも良いと思います。私も指導者になりたての頃は選手との感覚の違いを「選手と会話しながらギャップを埋めていくこと」で私自身も選手から指導法を学びました。
*「ご用件」に「少年野球質問箱」と書いて、廣川さんに教えて欲しい悩みや疑問をお送りください。
【球歴】
えひめ西(現松山)、リトルリーグ、愛媛県立松山北高等学校、甲南大学(阪神大学野球連盟)、リクルート(社会人野球東京支部)
【受賞歴】
■リトルリーグ
-四国大会優勝
■高校野球
-愛媛県中予地区新人戦優勝
-秋季愛媛県大会準優勝(四国大会出場)
-第59回選抜高等学校野球大会出場
■大学野球
-阪神大学野球連盟2部リーグ最優秀投手賞
(→1部昇格)
-阪神大学野球連盟特別賞(3度)
・1試合最多奪三振記録樹立(18個/当時)
・通算最多奪三振記録樹立(351個/当時)
・通算最多登板記録樹立(57試合/当時)
-学生日本代表候補選手選出 など
【野球指導歴】
-学童野球コーチ
-中学硬式野球チームコーチ・監督
-その他高校・社会人野球臨時コーチなど多数。
下図1の長方形で(1)縦、(2)横、(3)対角線、で一番距離が長いのは(3)の「対角線」ですよね?
人間の身体も同じで「指先→反対足のつま先」が最も距離が長くなります。
これを前提に今回の質問に答えていきたいと思います。
(図1)
1塁ベースの踏み方(原則)
一塁手は「他の選手からの送球を『ベースを踏みながら』捕球する」ということがとても重要な役割です。送球は必ずしも正面に飛んでくるとは限らず、送球が逸れても「ベースを踏みながら」捕球することが求められます。そのためには「ベースを踏む足」「ボールを捕球する手」を結んだ距離が最も長くなるような形で捕球することが必要です。前提でも触れた通り、人間の体で最も長い距離が取れるのは「手の指先→反対足のつま先」です。右利きの場合は左手で捕球するので「右足→左手」が最も長い距離が取れるので、一塁手が原則として右足でベースを踏むことになります。一番長い距離を取れる体勢を作って送球に備える必要があります。左利きの場合は右足になりますね。これが「原則」です。
(図2)
一塁ベースの踏み方(例外)
「原則」もあれば「例外」もあります。一塁側に転がったバントを処理した野手からの送球や本塁ベース付近に転がったゴロの処理をした野手の送球を受けるときには一塁手の利き腕にかかわらず「左足」でベースを踏みます。またご指摘のように送球が右側に大きく逸れた場合には「ベースを踏むこと」にこだわらず、まずは捕球をしなければなりません。ベースから離れて捕球した場合には左足で踏んだ方が早く踏める場合には、どちらの足で踏むかにこだわらず「早くベースを踏める方の足」で踏むことになります。
「送球に対して体を正面に」というのは場面によって判断が異なると思います。走者なし、または走者1塁の場面であれば、送球が逸れても体を伸ばしてアウトを狙うという判断もあり得ます。スコアリングポジションに走者がいる場合は、一塁手が後逸すると失点につながりますので、打者走者を生かしてしまっても、「送球を後ろに逸らさない」を優先させて体の正面で止めに行くという判断になるかと思います。
補足:指導時に留意したいこと
難しいのは例外的な場面に「どちらの足でベースを踏むか?」の判断は一塁手の利き腕によって異なることです。自分と利き腕が逆の選手を指導するのは難しいです。投手専門の指導者でも「左投手のことは全くわからない」と言われる指導者も多数いらっしゃいます。私は左利きなので子どもの頃から自分の感覚や理論を右利きの人に説明したり、右利きの選手や指導者の言葉を左利きに置き換えて咀嚼することに慣れていますが、慣れない人にとっては難しいと思います。
そういう場合は「教える」ということにこだわらず、選手に両方やらせて「どっちがやりやすかった?」と尋ねながら「一緒にベストな形を創っていく」という指導法でも良いと思います。私も指導者になりたての頃は選手との感覚の違いを「選手と会話しながらギャップを埋めていくこと」で私自身も選手から指導法を学びました。
*「ご用件」に「少年野球質問箱」と書いて、廣川さんに教えて欲しい悩みや疑問をお送りください。
「廣川さん」プロフィール
廣川寿(ひろかわ ひさし)1969年生まれ。愛媛県出身。全国約7,000人の野球指導者及び保護者から絶大な支持を得ているFacebookページ「少年野球指導者のひとり言」管理人。【球歴】
えひめ西(現松山)、リトルリーグ、愛媛県立松山北高等学校、甲南大学(阪神大学野球連盟)、リクルート(社会人野球東京支部)
【受賞歴】
■リトルリーグ
-四国大会優勝
■高校野球
-愛媛県中予地区新人戦優勝
-秋季愛媛県大会準優勝(四国大会出場)
-第59回選抜高等学校野球大会出場
■大学野球
-阪神大学野球連盟2部リーグ最優秀投手賞
(→1部昇格)
-阪神大学野球連盟特別賞(3度)
・1試合最多奪三振記録樹立(18個/当時)
・通算最多奪三振記録樹立(351個/当時)
・通算最多登板記録樹立(57試合/当時)
-学生日本代表候補選手選出 など
【野球指導歴】
-学童野球コーチ
-中学硬式野球チームコーチ・監督
-その他高校・社会人野球臨時コーチなど多数。