■炎症がおさまるまでは激しい運動禁止
「肉離れ」は筋肉の中にある筋線維が伸ばされたときに傷んだり、部分断裂をしたりした状態です。
このような状態になったときはひとまず応急処置として、患部を安静に保ち、氷などで冷やすRICE処置(Rest・安静、Icing・冷却、Compression・圧迫、Elevation・挙上 )を行うようにします。
ケガの急性期は48〜72時間(2〜3日)程度と言われており、その期間は患部に炎症症状(痛み、出血、腫れ、熱感など)がある状態です。
肉離れを起こした後は、こうした炎症症状がおさまるまでは激しい運動はやめておきましょう。
急性期を過ぎた時期からは、安静による機能の低下を防ぐため、積極的に患部を動かしていくようにします。
以前は痛めた部位をストレッチすることは禁忌(きんき:やってはいけないこと)とされていましたが、筋肉が短縮した状態のままにしておくと、修復過程でできたかさぶたのような瘢痕(はんこん)組織ができて硬くなり、運動再開後に肉離れを再発するリスクが高まると言われるようになりました。
そこで筋肉が十分な柔軟性を回復できるようにストレッチを行うのですが、早い段階でのストレッチは痛みを伴うことが多いため、必ず医師の指導のもとに実施する、もしくは病院のリハビリにおいて行うようにしましょう。
■柔軟性と筋力を回復
また柔軟性とともに筋力も回復する必要があります。
たとえば太ももの裏側(ハムストリングス)を強化する場合、筋線維を伸ばすような動作は避け、ヒップリフトやレッグカールなど、筋肉を縮めながら力を発揮するエクササイズを行います。
ヒップリフトは膝を立てた状態で仰向けになり、お尻を挙げて横から見て体が一直線になるように両足で支えます。
30秒程度キープし、これが楽にできるようになれば今度は片足支持でも行ってみましょう。
ケガをした側(患側)とケガをしていない側(健側)では多少なりと筋力差が存在しますので、左右の筋力がほぼ同じ程度に回復するまで続けるようにします。
■再発しやすい肉離れ
肉離れが再発しやすいといわれている原因の1つが、こうした筋力強化を十分に行わないまま競技復帰することが挙げられます。
筋肉の柔軟性を回復するとともに、筋力についてもケガをした時点よりもより強い状態まで回復させることが理想的です。
また左右の筋力バランスを整えるだけではなく、実際のランニング動作、切り返し動作など、ケガをした時と同じ動作を行っても不安がないレベルまで動けるようになってから、競技復帰することが大切です。
著者プロフィール
アスレティックトレーナー/西村典子(にしむらのりこ)
日本体育協会公認アスレティックトレーナー、NSCA-CSCS、 NSCA-CPT。東海大学スポーツ教育センター所属。高校、大学など学生スポーツを中心としたトレーナー活動を行う一方で、スポーツ傷害予防や応急処置、トレーニングやコンディショニングに関する教育啓蒙活動を行う。また一般を対象としたストレッチ講習会、トレーニング指導、小中学生を対象としたスポーツ教室でのウォームアップやクールダウンといったさまざまな年齢層への活動がある。一般雑誌、専門誌、ネットメディアなどでも取材・執筆活動中。
大阪府富田林市出身。奈良女子大学文学部教育学科体育学専攻卒。