ニュース 2019.03.12. 09:42

『天才は親が作る』の著者に聞く、トップアスリートの親たちの子育て、教育方針(前編)

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――これまで多くのツップアスリートのご両親、ご家庭などを取材されてきていますが、特に印象に残っているご家庭はありますか?
「どのご家庭も、親御さんも、同じように素晴らしかったですね。1997年から始めた取材記事をまとめた『天才は親が作る』(文藝春秋)が出版されたのが2003年。そして2冊目の『天才を作る親たちのルールトップアスリート誕生秘話』(同)が2016年。親御さんの基本的な考え方はどちらも変わりませんが、子育ての知識は増えていると感じました」

――今は子育てや教育に関する本や雑誌がたくさんありますし、ネットでも簡単に情報を拾える時代になりました。
「そうですね。ただ、トップアスリートの親御さんたちは、得た情報をそのまま鵜呑みにせず、自分たちの環境に合わせて子どものために活かしているという印象を受けました」

――情報が多すぎて迷ったときには、どうしたらよいのでしょうか?
「自分の子どもをよく見ること。そして、会話の中から気持ちを探ることですね。子どもの発言や反応について、本心をちゃんと見極めることが大切です。もし、子どもに“嫌だ”と言われたとしても、“NO”にもいろいろな意味があります。元女子プロテニス選手の杉山愛さんのお母さんは、愛さんの言動をすぐに判断せず、会話を重ねてじっくり様子を見て、どういう意味があるのかを少しずつ学んでいったそうです」

――『天才は親が作る』にありましたが、杉山愛さんが子どもの頃、散歩に行くためにスニーカーを履くのに、お母さんは手伝わずに本人が自分で履いて紐を結び終えるまで30分でも待っていたそうですね。
「子どもの時間に親御さんが合わせていましたね。それも、無理にではなく、自ら進んで。これも、取材したご家庭に共通していたことですね。
愛さんのお母さんは、『子どもが一歳にならお母さんも一歳。だから上から目線じゃなくて、一緒に育っていくの』とおっしゃっていました。愛さんのことを話すときも、“うちの娘”とか“愛”ではなく、“彼女”と呼んでいて、一人の人格として認めていらっしゃいました」

――現代の親の方が、子育てをする環境に恵まれていると思いますか?
「はい、それは間違いなく恵まれていると思います。ですが、子どもの運動経験という意味では逆だと思います。脳の運動野を発達させるためにも、スポーツをするなら小さい頃に足底筋を鍛える必要があるのですが、マンションの絨毯の上で生活しているとそれが難しいのです。
ですから今、東京23区出身者のオリンピック選手はほとんど生まれていません。近年では、野球の松坂大輔選手と水泳の北島康介さんくらいではないでしょうか? でも、松坂選手の場合は特殊でした。お父さんがトラックの運転手で、小さい頃から配達地域だった茨城県の田園地帯まで連れていってもらっていて、野原や川で降ろされて思いっきり走り回っていたそうです。そして、お父さんの仕事が終わったらまた東京の自宅に一緒に帰ってくるというのを繰り返していたみたいです。競技を水の中で行う北島さんも例外と言えますね」

――吉井さんの2冊の本を読むと、トップアスリートの多くが、小さいときに水泳をやっていたという共通点もあります。野球ですと大谷翔平選手(エンゼルス)、藤浪晋太郎選手(阪神)、井口資仁監督(ロッテ)。
「水泳をすると肩甲骨と股関節がやわらなくなり、他のスポーツにも応用が利くようになるんです。ゴルファーにも水泳経験者が多いですね。あとは剣道、体操をしていたという話もよく聞きますね」

――松坂選手も小学生時代に野球と並行して剣道を習っていたそうですね。
「子どもをスポーツ選手に育てたいのであれば、小さい頃からいろんな競技をやらせて、好きなものを自分で選ばせるのがいいと思います」

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