今回の質問・お悩み

キャッチボール練習にはどんな意味、どんな種類がありますか？

「キャッチボールは野球の基本」とよく言われます。私の息子の中学でも実際にそのように指導されています。
ただ、どのようなところに「キャッチボールは野球の基本」と言われる所以があるのか？　野球未経験者の私にはよくわかりません。

廣川さんのチームではキャッチボールの際、子供達にどんなことを意識させていますか？　また、普通に捕って投げる以外に、キャッチボール練習にはどんなバリエーションがありますか？

廣川さんの答え

 

最優先は「相手が捕れるボールを投げること」

キャッチボールの際に私が選手に最も重視していることは「相手が捕れるボールを投げること」です。アメリカではキャッチボールのことを「Play Catch（捕って遊ぶ）」と言います。つまり「捕る方が主役」の練習です。どんなに速いボールを投げても相手が捕れなければ意味がないと思います。相手を想い、捕り易いボールを投げることを意識させることがチームスポーツの一員として必要な心構えだと思いますし、結果として技術も向上し易いように思います。

 

投げ方を含めた「身体の使い方」を身に着けることが重要

技術面では「投げる」「捕る」を手の動きだけに頼らず、身体の様々な部分を使って行うことが技術向上および故障回避のために重要だと思います。私が指導しているチームでは５つのエクササイズを取り入れて「キャッチボールにおける身体の使い方を学んでもらっています。

今回は動画を使って説明したいと思います。モデルは私自身ですが、私は本来左利きです。左投げの動画だと分かりにくいと思いますので今回は動画を反転させています。ご了承ください。

 

（１）正面投げ

送球の最も基本的な動作です。ポジションに関わらずボールを投げるための最小限のエッセンスが凝縮されています。



１.投げる方向に向かって正対してください。
２.両腕を内側に捻りながら「弓を引く」ようなイメージで右手を引きます。
３.グローブを投げる方向にかざし、右手をつむじに当たるくらいの高さに上げます。
４.右肘を前に出しながら、ボールが目の横を通るようなイメージで送球。
５.腕は振り切らず、投げた方向に突き出すようにフィニッシュ。

<ポイント>
・頭の位置を動かさない
・２〜３で「身体の捻り」を上手く使う
・４でボールと目の距離が離れすぎないように

 

（２）開脚投げ（体重移動なし）

送球時に「内転筋の力を有効に使う」ための練習です。



１.足を５足分くらい開き、左足のつま先を投げる方向に、右足は投げる方向に対して90°に向けて体制を作ります。
２.ゆっくり右足の方に体重を移します。この時に背筋は地面に対して垂直にしましょう。
３.肩を地面と平行にしてトップ位置を作ります。
４.内転筋を素早く締めて骨盤を投げる方向に対して正対させます。
５.腕を振り下ろして投球します。

<ポイント>
・２で背筋が前傾してしまうと③の回転速度が低下してしまいます。
・４では投げ急がず、骨盤を先に正対させることで「上半身との捻れ」を感じましょう。
・５の投球後は右足が地面から離れないように。これが離れてしまうと内転筋の力が使えず、体重移動だけでボールを投げる癖がついてしまいます。

 

（３）開脚投げ（体重移動あり）

（２）とよく似ていますが、ここでは「体重移動」を使ってボールを投げる練習です。

１〜４は（２）と同じです。
５で左足に体重を移動させながらボールをリリースします。



<ポイント>
・（２）-４で行なった「内転筋を締める動作」のあとで５の体重移動への移行を意識しましょう。
・５の投球後は左足だけで立てるくらいの体重移動を行いましょう。一塁側、もしくは三塁側に体勢が流れてしまうのは、正確な体重移動が行えていない可能性が高いです。
・５で左足の踏ん張りが効かないと腕は振れません。しっかり左足で土を踏みしめましょう。

 

後編へ続きます。

「廣川さん」プロフィール

廣川寿（ひろかわ　ひさし）1969年生まれ。愛媛県出身。全国約7,000人の野球指導者及び保護者から絶大な支持を得ているFacebookページ「少年野球指導者のひとり言」管理人。

【球歴】
えひめ西（現松山）、リトルリーグ、愛媛県立松山北高等学校、甲南大学（阪神大学野球連盟）、リクルート（社会人野球東京支部）

【受賞歴】
■リトルリーグ
-四国大会優勝

■高校野球
-愛媛県中予地区新人戦優勝
-秋季愛媛県大会準優勝（四国大会出場）
-第59回選抜高等学校野球大会出場

■大学野球
-阪神大学野球連盟2部リーグ最優秀投手賞
（→1部昇格）
-阪神大学野球連盟特別賞（３度）
・１試合最多奪三振記録樹立（18個/当時）
・通算最多奪三振記録樹立（351個/当時）
・通算最多登板記録樹立（57試合/当時）
-学生日本代表候補選手選出　など

【野球指導歴】
-学童野球コーチ
-中学硬式野球チームコーチ・監督
-その他高校・社会人野球臨時コーチなど多数。