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選手の成長の機会を奪う「サイン伝達」。カンニングと同じという意識を

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選抜高校野球大会で大きな話題となったサイン盗みとフェアプレー。この問題について、高校野球の抱える問題を提起した『甲子園という病』(新潮新書)の著者、スポーツジャーナリストの氏原英明さんにお話を伺いました。




――この春はサイン盗み(伝達)が大きな話題となりましたが、氏原さんはどうご覧になりましたか?
「サイン伝達が悪い理由はフェアプレーに反しているからというのはもちろんです。ただ、それ以上に悪いと思うのはその選手の課題を見つける機会を奪っていることだと思います。言ってみればカンニングですよね? カンニングで点数とっても何の意味もないことです。どんな球種にも対応する、どの球種が来るかを自分で考える、高校野球という育成年代でそういう成長の機会を奪っているというのが個人的には大きな問題だと思います」

――確かにその場では打てるかもしれないですけど、先には繋がらないですね
「この前、週刊誌のインタビューにも答えたのですが、高校通算何十本もホームラン打っているスラッガーだった選手がプロでは全く打てなくなって守備の人になる、そういうケースが結構ありますけど、それはサイン伝達の影響もあると思います。どんな球にも対応できる打撃技術を身につけずに、カンニングして結果を残してきたわけですから。そういう学校は確実にあると思いますね」

――「勝利至上主義」が後々まで響いているとも言えますね
「そうです。そこで打てない、負けたという経験を生かしてあげることができていないわけですから。大阪桐蔭は絶対にそういったことをやらないですよ。あれだけ技術が身について、プロでも打てる選手が多いじゃないですか。西谷監督の凄いところはとにかく情報をしっかり集めていること。野球に限らず、少なくとも他のスポーツで結果を出しているチームや指導者のことをよく勉強されています。だからあれだけ勝ちながら選手がプロでも活躍しているのだと思いますね」

――指導者が指示していなくて、選手たちでやっているという話も聞きますが
「それも結局は指導者の問題だと思います。練習試合でも負けたら罰走で何周も走らされる、となったら選手は何をしても勝とうとするじゃないですか。中には控えメンバーの塁審がサイン伝達していたというのも聞いたことがあります。そういうのも失敗すること、負けることを認めない風潮が背景にあるからだと思います」

――最近よく言われるフェアプレーについてはどうお考えですか?
「日米野球の時も、この前のマリナーズとアスレチックスの日本での開幕戦もそうだったんですけど、試合前にフェアプレーは大事ですよという映像がオーロラビジョンに流れたんですね。アメリカは相手チームの選手を称えている写真や映像が流れたのですが、日本は侍ジャパンの選手が胸に手を当てて君が代を歌っている映像だけでした。おそらく探したけどなかったのではないか? と思ってしまいました。メジャーで一番感動的だったのは、ホームラン性の当たりをフェンス際でキャッチされたバッターが相手の守備に対して拍手しているシーンだったんですけど、日本ではそういうシーンを見かけることがないですよね」

――相手のことを思いやるシーンが確かに少ないかもしれませんね
「最近、高校野球で相手チームのマスクを拾ったり、相手の選手に(コールド)スプレーをかけに行ったりしていますけど、あれもやらされている感がありますよね。試合は相手があって成立するものですから、相手を尊重するのは本来当然のことだと思います。それなのにそういうシーンが日本の野球には見られないというのを、もっと野球関係者の人には広く知ってもらいたいですね」

プロ野球から子どもまで、フェアプレーが当たり前に行われるように、まずは現状を知ることが大事ですね。お忙しいところありがとうございました!

(取材:西尾典文/写真:ヤキュイク編集部)







氏原英明(うじはら ひであき)
スポーツジャーナリスト。1977年、ブラジル、サンパウロ生まれ。奈良新聞社勤務を経て2003年にフリーランスに。プロ野球、アマチュア野球幅広く取材し、高校野球の問題点を提起した『甲子園という病』(新潮新書)を2018年8月に上梓。菊地雄星(マリナーズ)についても長年取材を続けており、今年3月に発売になった『メジャーをかなえた 雄星ノート』(文藝春秋)の構成を担当した。
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