ニュース 2019.05.29. 12:00

【球数制限を考える】「待球作戦」は子どものためにもならない

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アジア野球連盟審判長 の小山克仁氏は、東京六大学や甲子園、さらにはオリンピックなど国際大会での豊富な審判としてのキャリアを有している。小山氏に「球数制限」について聞いた。




投手はストライクゾーンに投げるのが仕事


日本と他の国の野球で決定的に違うのは、投球に関する考え方です。
日本以外の国では、投手はストライクゾーンに投げるのが仕事です。2ストライクになったら、次もストライクを投げる。
でも、日本の投手は初球からボールで入ったりする。2ストライクになれば、1球外すことが多い。そういう発想は日本だけですね。
そもそも、日本以外の国では、細かいコントロールはありません。ストレート系の勢いのある球で抑えるのが野球という発想です。ボールになるのは投げそこないです。意図的にボールを投げることはありません。
私はシドニーオリンピックで、フル代表の審判を務めましたが、日本以外はほぼそういう野球でした。
選手たちは、「投手は打者が打てるところに投げるものだ」ということをよく教育されているのです。
2000年のシドニーオリンピックでは、私はアメリカと韓国の試合の主審をしましたが、ベン・シーツも、ロイ・オズワルトも全球157㎞/h前後の速球をストライクゾーンに投げていましたが、韓国打線は打ち損じていました。


飛びすぎる金属バットの問題


高校野球の投球数が増えるもう一つの原因は、金属バットだと思います。
金属バットは反発係数が高いので、しっかり引き付けなくても打球が飛んでいきます。安打も増えますから、投球数も増えていきます。
それに、ものすごく打球速度が速いので危険です。プロよりも打球は速いと思います。
僕の法政大学の同期だった銚子利夫君(元大洋)は、市立銚子高校時代、甲子園で顔面に打球を喰らって退場しています。あんなバットで打っていては、その後木製バットに持ち替えたときに苦労します。
昨年の高校日本代表選手で、今年大学に入った中にも苦労している選手がいます。韓国や台湾も木製バットに変えました。 アメリカでは、金属バットでも木製バット並みの低反発のバットを使っています。 日本でも考えなければならないと思います。 今の日本の金属バットは、打者にも投手にもよくないと思います。

ルールの抜け穴を見つける日本野球


日本とアメリカでもう一つ違うところがあります。
それはルールに関する考え方です。
アメリカでは、野球のルールは「事例集」のように見なされています。
もともとは野球のルールは20しかありませんでした。それが試合を続けていくうちに判断すべきことが増えていって、大きなルールブックになりました。でもルールは判例であって、そこに書かれていなくても、公平、公正な条件で野球をするうえで、おかしなことはしないのが、アメリカの考え方です。「事例集」から「野球のルールの精神」をくみ取るということです。
しかし日本では、野球の規則を「法律」のように解釈します。ルールブックに書かれていないことは、法律の抜け道を見つけるように、何をやってもいいと思う指導者が多いのです。
よく「どこまでだったらボークにならないのか」と聞かれますが、その前に「正しく投げる」「だましたりひっかけたりしてはいけない」そう指導するのが、本来の指導者だと思います。
日本の指導者は何でもルールぎりぎりを狙いますが、それは野球の精神に反しています。
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