ニュース 2019.09.18. 17:43

日本の野球は、成長するにつれて弱くなる?

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「どんなスポーツでも、日本は小さいときは優秀なんですが、練習をやりすぎて、大きくなると弱くなるんですね」過日、筆者は「球数制限」の取材でスポーツ庁の鈴木大地長官に話を聞いたが、この言葉が強く印象に残っている。


■U18ワールドカップで5位に終わった日本

野球で言っても、リトルリーグやボーイズリーグ(中学硬式野球)のレベルでは、日本は世界屈指の強豪だ。何度も国際大会で優勝している。
しかし先日のU18ワールドカップでは、日本は5位に沈んだ。年齢が高くなると勝てなくなるのだ。なぜなのか?

■過酷な練習による故障、怪我のリスク

一つは、小さいころから長時間の過酷な練習をする日本では、多くの子どもが十代半ばで故障をして挫折してしまうことがある。
小中学校の野球ではようやく「球数制限」が本格的に始まったが、それまでに多くの子どもが健康被害にあっている。
日本の野球少年は早い段階で、肘や肩を故障することが多いのだ。深刻な場合には野球を断念することさえある。

■若いころに練習しすぎると「成長が止まる」

実はもう一つ、大きな問題がある。ベースボールドクターの古島利三医師なども指摘しているが、小さなころから走らせすぎたり、練習させすぎたりすると、子どもの成長が止まってしまうのだ。
外国の選手の中には十代半ばで見上げるような高身長の選手がいる。私たちはそれを人種の違いだとか、生活習慣の違いだとか考えがちだが、同じアジア系の韓国や台湾でも欧米の選手に負けない大きな選手がいるのだ。特に脚が長く、大きなストライドを持つ選手が多い。
これは、若いころに十分に栄養と睡眠時間を取っているからなのだという。
日本では、小さな子どもに毎日走らせたりする。それに十分な休養を取らせずに長時間、練習や試合をさせたりする。
その結果として、両親の身長から割り出せば、当然達するべき身長に達することなく伸びが止まってしまうこともあるのだ。

■しばらく練習を休んでいる間に背が伸びた?

野球肘検診でOCD(離断性骨軟骨炎)などの異状が見つかり、1年ほどチームを離れて野球をしなかった子どもの身長が、その間に急に伸びることはよく見られることだ。
子どものころは、適度な練習とともに十分な食事、適度な休養、そしてたっぷりとした睡眠が非常に大事なのだ。
そして野球だけではなく、スポーツは背が高いほうが有利なのは間違いない。

「少年時代に過酷なトレーニングをさせると成長が止まってしまう」
このことは医学界では広く知られているのだが、野球指導者の中には全く無知な人もいる。
野球界はこういう常識に疎い指導者が多いために、過酷な練習をさせてしまい、まさに野球も背も“伸び悩んで”しまうのだ。

■大人の認識不足が最大の問題

特に少年野球は、ライセンスなどを持たない地域のボランティアが指導していることが多い。高齢の指導者も多い。野球医学の本はおろか、一般的な指導書も読まないようなレベルで「たくさん練習すれば、どんどんうまくなる」と頑なに思っている人がたくさんいる。こういう大人に指導された子どもは本当に災難だ。野球が上達しないだけではなく、身長も止まってしまう。

父母の中にも、小さいころからハードなトレーニングをすることで子どもの才能を他の子どもよりも早く開花させることができると思い込むことが多い。しかし、それは大きな間違いなのだ。

■芸術とスポーツは同じではない

確かに、音楽や美術など、芸術、感性の世界では早熟の天才が、大人になっても大活躍するケースは多い。また、囲碁や将棋などブレインワークの世界でも、天才棋士が注目されることがしばしばある(もちろん「二十歳過ぎればただの人」という例も少なくないが)。「早熟の天才」が大成する事例はたくさんあるのだ。

それとスポーツの世界を、同一だと思うのは大きな間違いなのだ。
スポーツは肉体を使って自己表現をする。その肉体は、成長期には日々成長し、変化していく。極端に言えば、毎日のように子どもの体は変化する。成長期に多くの子どもが「成長痛」を経験するのは、子どもの体が日々変化している証拠なのだ。
その微妙な時期に、ハードなトレーニングを積むことは、自然な成長曲線に不自然で決して子どものためには良いとは言えない影響を与えてしまうのだ。

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