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代表に聞いた、「罵声なし、週に半日だけ練習」のチームが誕生した理由

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神奈川県川崎市に新しく結成された少年野球チーム「ブエナビスタ少年野球クラブ」。チーム設立からわずか半年ほどで30名超の子ども達が集まり、メディアでも紹介され話題となりました。少年野球人口が減少しているといわれる現在、なぜ短期間に多くの子ども達が集まったのか? チームを立ち上げた宇田川淳GMにお話しを聞いてみました。




ーーヤキュイクでも、いわゆる「勝利至上主義」を否定したチームを紹介すると、「勝つことが成長につながる」「勝つことを目的にしないで何を目的にするのか?」「そんなので将来甲子園に行けるわけがない」といった批判的な声があがることもあります。そういった声をどのように思いますか?

色んな人がいますので、そこはいろんな考えがあっていいと思っています。うちはうちのペースでやるだけです。信念というか理念を曲げるつもりありませんし、現に(チーム立ち上げから短期間で)人が集まってきていますし、(多くの子どもや親たちに)野球を知ってもらうチャンスができたわけですから、こういう理念のチームができることは、野球界にとっていいことだと思っています。強くなるかどうかは、もっと先の話だと思っていますので。

ーー強くする前にもっとやるべきことはあるということでしょうか?
そうですね。たとえば(小学校の野球は)6年生が9人いて、大人が主導してある程度(走塁やトリックプレーなどを)型にはめて練習で叩き込んで、サインも10個くらい覚えさせれば、ある程度は強くなると思うんです。でも、やっているのは子どもなので、当然大人の思い通りに行かないこともたくさんあるわけです。そうなったときに、大人の怒声、罵声が飛び交ったりするわけですよね。だったら、今日の(ノーサインで行なった)紅白戦でもありましたけど、自分で考えてプレイボール直後にセーフィティーバントをやってみたりだとか、そういう(自分で考えて野球をやってきた)子のほうが、将来の可能性が広がる感じがするんですよね。それは野球に限った将来ではなくて。

ーーGMがチームを立ち上げたきっかけは?
息子が半年ほどあるチームに入っていたんです。長時間練習をするチームだったのですが、それは知っていて入ったのでまぁいいんですけど。ある時、試合でボロ負けしたことがあったんですけど、相手チームが帰るや否や「はい、腕立て」みたいなことがあって。なんで負けたら罰を受けなければいけないのか? また、ある時は怪我明けの子に指導者が無理をさせるようなことがあったり。それはちょっと違うんじゃないかという思いが芽生えて。
部員数も少なかったので、少しでも部員を増やしたいと思っていましたし、非常におこがましいんですけど、チーム(の方針)を変えなければいけないと思いました。そんな時にネットで「春日学園少年野球クラブ」のことを知りまして、視察までさせていただいて。こんなやり方をしているチームもあるんだと感銘を受けて、そういうことをチームに伝えたんですけど、わかってもらえず。ならばもう自分でチームを作るしかない、という思いでブエナビスタを立ち上げました。

ーー息子さんは前のチームでは楽しそうにやっていたんですか?
同級生が3人いたので野球そのものは楽しそうにはやっていましたよ。でも練習が長時間なので、帰ってきた後は体力がもうなくて宿題をする気力も、ごはんを食べる気力もなくて。朝から晩までの練習は大人も大変ですよ。練習に付き合うだけの僕ですら「来週の練習、雨降らないかな」って思っていましたからね(笑)。

ーー練習でお腹いっぱいになってしまうんですね。
練習でお腹いっぱいにさせないことは本当に大切だと思います。絶対それが大事ですよ。6割、7割にさせてあげることで、帰ってからも、もうちょっと野球やりたいなってなりますから。

ーーこの辺りは割と野球がOKの公園、広場が多いようですね。
子どもたちだけで野球遊びも普段からしているみたいですね。大人が介入しない、そういう子どもたちだけの野球遊びって本当に大事だと思うんですよ。遊びの中でチーム分けをしたり、ルールを作ったり、子どもたちがするわけですからね。変に大人が全部決めるといいことないですよ。

ーー設立当初はこんなに部員が集まると思っていましたか?
思わなかったですね。10人くらいかなと思っていました。

ーー短期間でこれだけの部員が集まった要因はどこにあると思いますか?
この地域に潜在的に、そういう(同じような思いを持っていた)親や子がいたということでしょうか。ちょうどそこに器となるチームができたというだけであって。

ーーリーグや連盟には所属しているのですか?
所属はしていないですが、スポーツ少年団には入りました。

ーー公式戦や試合は?
来年は大会に出たいなと思っています。できればトーナメントではなくリーグ戦に参加したいですね。とりあえず、来年は15試合くらいを目指したいと思っています。

ーー対外試合に出場する選手はどのようにして選ぶのでしょうか?
基本的には5年生、4年生がメインですね。紅白戦は全員出場するようにしていますけど。対外試合は公式戦を見据えて、基本的には実力ということになりますね。

ーー初めて対外試合、公式戦をやってみて、試合後の子どもたちの反応が気になりますね。
負けると悔しがると思いますよ。紅白戦ですら負けると泣くことがありますからね。今日はいなかったですけど、1回目と2回目の紅白戦の時は泣いている子が何人かいましたね(笑)。

ーーいいですね(笑)。
子どもたちは得点を競い合う「得点もの」が好きなんですよね。だから、基本的には明るく、楽しく。でも負けたら悔しいという感じでやっています。あとは怪我せずに。

ーーちなみに部員数の上限は?
今の人数(33人)くらいが、今いる大人で見られる限度かなと思っています。ただ、うちのチームの場合、全員が一度に練習に来ることはあまりないので、もう少し増やしてもいいのかなとは思っていますが、それでも40人くらいが目安のように感じています。

ーー色々、お話を聞かせていただきありがとうございました!


取材から数日後、初めての対外試合が行われ、結果は13対2でブエナビスタの勝利。3投手の継投で球数は1人25球程度。3投手とも四死球は0だったそうです。
チーム創設から約半年、「練習は週に1/4」のチームが初めての試合でここまでできたとは驚きです。子どもたちが、このチームの方針が間違っていないことを証明したと言えるのではないでしょうか。ブエナビスタのこれからに注目です。

(取材・写真:永松欣也)
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