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少年野球界も学びたい、ラグビー界の「自分で問題解決できる選手を作る」風土

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他競技のジュニアスポーツの現場から、少年野球界も学べることがあるのでは? そんな思いから、ワールドカップの興奮も冷めやらぬジュニアラグビーの現場、横浜市港北区のラグビー教室「ラグビーパークアカデミー」に伺ったレポートの後編です。




指導者に資格制度があるラグビー界


子どもたちに過度な勝利主義を押し付けたり、「行き過ぎた指導」があった場合には、JRFU(日本ラグビー協会)に相談できる窓口が設置されている。小中学生対象のラグビー教室「ラグビーパークアカデミー」(横浜市港北区)でも「コーチングポリシー9つの約束」をホームページに記載し、事前に保護者や生徒たちに伝えています。

<ラグビーパークのコーチ9つの約束>

・他者との比較で君を評価するのではなく、君自身の成長を大切にする
・君たち全員に対して常に公平であろうとする
・君を怖がらせる人間でもなければ、気やすい友達でもない
・君と過ごすすべての時間において、君の幸せ(安全・意欲・成長)を第一に考える
・君に答えを押し付けず、自分で考え、自分で答えを見つけ出すチャンスを大切にする
・君が他者に嫌な思いをさせることを許さない
・君の甘えやわがままを受け入れない
・君が自ら伸びようとする気持ちを最大限応援する
・君が意欲をもって臨むラグビーパーク以外のすべての活動を応援する

保護者が安心して子どもを預けられるコーチなのか。子ども自身が「学びたい」と思える環境なのか。「9つの約束」に基づいて指導を行う川合さんは「内発的動機付けで努力できる子ども」を、ラグビーを通じて育てています。練習では「激励」はあっても、怒鳴り声や、罵声はいっさいありません。

川合さん「私はJRFUで『指導者資格を運営するコーチング部門』の部門長をしていますが、ラグビーの指導者には『スタートコーチ』という入口の資格があって、チームのヘッドコーチ(監督)になるためには、まずその資格を取らなくてはいけないんです。なので、最低限のGOOD、BADは理解されているんです。もちろん、中には根性論や勝利至上主義に寄って行く指導者の方もいますので、JRFUとして『指導者は学ぶことを続けてください』と促してしています。大半がグッドコーチですが、たまに時代に沿わない指導をする方がいるので、それは無くしていかなくてはいけません。抑止力として、JRFUには『インテグリティ相談窓口』を設けています。指導に名を借りた暴力行為、いじめ、パワハラ、人権差別など細かい対象行為があり、年に数回の報告を受けている状況です。また、ラグビーは、命に関わる怪我が起こるリスクもあるので、間違った現場の指導は見逃してはいけないという意識で指導者養成に取り組んでいます。」

勝っているコーチがグッドコーチとは限りません


「ラグビー憲章」にある「品位、情熱、結束、規律、尊重」の5大原則。これを教えるのが指導者の義務・責任であると川合さんは言います。心身ともに未熟な低学年の小学生たちに、仲間意識や、相手への尊重をどのように教えているのでしょうか。社会問題にもなっている「指示待ち族を作らない」という点にも、心を配っているそうです。

川合さん「子どもたちに最初にラグビーを教えることは一つ。『ボールを持って走る』ということです。簡単です。初心者でも1日でできるようになりますね。続いて『パスをする』ということ。子どもは視野が狭いので、仲間にパスしたほうがトライできるのに、自分で行っちゃうんです(笑)。その時に『ラグビーって自分でトライするだけじゃなくて、仲間にトライさせるのも楽しいよ、君が仲間にトライさせる為にあそこで何ができた?』って話しかけ、主役だけじゃなくて、わき役の楽しさやスキルを育てるのも私たちの仕事です。
JRFUコーチング部門の指導者養成では、『自ら考え、課題を解決し、成長を続けられるプレーヤーを育てる』という選手育成の目標を掲げています。
ラグビーは試合中、グラウンドに監督がいない(指示を出さない)ので、ここでは指示待ち族は作りません。今日のスクールを見ていただいたらわかるように、私から特にこうしなさい、ああしなさいとはいいません。ヒントは与えますが、子どもたちが自分で考えられないといけないので。安全については厳しく指導しますが、それ以外のことについては、最初から答えを教えてしまうことは極力しません。トライアンドエラーをさせて、我々はたくさん質問をして、自分で自分を成長させるという意識を身につけさせることを目指しています。」

野球では戦術が1プレーごとにサインが変わるチームがありますが、ラグビーはキックオフの笛が鳴ったら選手たちが考えて動かなくてはいけません。「指示待ち族」では活躍できない構造が、ラグビーにあるのです。また「勝っているコーチがグッドコーチとは限りません」と川合さんは指導者講習会で明言しているそうです。特に育成年代のチームで結果を出すには、全てを型にはめてしまった方が勝率が高くなりますが、その方法は選手が自ら考える機会を奪ってしまうので、将来の可能性を潰してしまうケースもあるからです。育成年代の指導者は、選手一人一人の将来の可能性を大きくしてあげる指導ができているかも大事な評価基準となるからです。」

川合さん「フェアプレーの上で勝利を目指すのはもちろん大事です。ただ、行き過ぎた勝利主義だと、体を酷使するし、ケガをするし、ズルをしようとする。そういうチームはラグビー界では批判を受けます。今もそういうチームを見かけますが、ここ数年で、指導の現場が改善されてきていると感じます。その背景には、ワールドカップの自国開催という大義名分あったことよって行われた指導者資格の改定やルールの改定の影響が大きいと思います。」
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