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「頑張れない状態」になった子どもに監督・コーチができること

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「あいつは頑張っているから試合に使おう」、「試合に出るための頑張りが足りないんじゃないか?」。野球に限らず、多くの育成年代のスポーツの場面でこのような会話がされているのではないだろうか。特に部員数の多いチームでレギュラーやベンチ入りメンバーを決める時には、この『頑張り』を重視していることも少なくない。しかし果たしてその『頑張り』は簡単に評価できるものなのだろうか? 発達科学やコーチングについて研究し、ヤキュイクでもおなじみの東京農業大学准教授、勝亦陽一准教授に話を聞いた。




——先日、勝亦先生のTwitterで「頑張ってない選手は試合に出さない、という人の気持ちも良く理解できる。でも、頑張れ(ら)ない状態になってしまった人が、そこから抜け出すのは難しい。だからこそ、特にジュニア期の選手に関わる監督・コーチは、気持ちや行動が良い方向に変わる機会(きっかけ)を選手に与え続けるべきだと思う」と発言されていました。今回はそういった『頑張り』についてまずお話を伺いたいと思いますが、このように感じられたきっかけを教えていただけますか?

勝亦「そう思ったのは、野球ではなく、現在私が部長をしている大学のバドミントン部での出来事がきっかけです。試合に出場するメンバーを決める時に『あの選手は頑張っているから』『頑張っていないから』という話が選手からありました。でも、それを本当に評価の基準にしていいのかなと。まず「頑張っている・頑張っていない」は、主観的で曖昧な指標です。自分で頑張れた、頑張れなかったというならまだ分かりますけど、他人が自分の頑張りを決めようとすると更に曖昧になる。じゃあ頑張っていないと言われている選手の特徴を考えていくと、そもそも試合に出るきっかけを与えられていない、試合に出場することを諦めているケースが多いです。そうなると目標も自然と低くなって、チームのための行動、プレーができなくなる。そういう悪循環が起きて、周りから頑張っていないと見られてしまっている場合もあるように思います」

——先生ご自身の経験としてはいかがですか?

勝亦「私の場合は高校までは比較的早くから試合にも使ってもらっていて、チームが勝つためのプレーをするのが当たり前でした。ただその一方で単純に速いボールを投げる、遠くへ打球を飛ばすなどの、チームプレーではない個人の能力を伸ばすための練習は疎かになっていたような気がします。チームに貢献して試合には勝っているけど、個人の能力が上がっているかは疑問でした。それは中学時代くらいから感じていましたね。それに対して当時は個人の能力を伸ばすための情報も簡単に手に入らない状況でした。そこで、大学ではトップレベルの選手が集まる早稲田大学野球部で、どうやったら自分のレベルを上げられるのか、全国から集まってくる上手い選手はどういう練習をしているのか学ぶことにしました」

——大学はあえて厳しい環境を求めていったわけですね。

勝亦「ある程度、厳しいことは覚悟していました。そんな中でも入学した頃は自分の能力を上げていけば、チャンスはあるとも思っていました。ただ当然なんですけど、自分だけではなく、他の選手も上手くなっていきますよね(笑)。更に上手い下級生もどんどん入ってきます。私の1学年下にはちょうど鳥谷(敬・阪神)、青木(宣親・ヤクルト)、比嘉(寿光・元広島)、由田(慎太郎・元オリックス)など4人もプロに入る野手がいました。さらに全国から優秀な選手が集まり、部員は100名以上います。私にはなかなか試合に出るチャンスもない。そういう状況が続くと、高校までは散々試合に出ていたのに、だんだん試合に出ることが怖くなってきたんですね。1打席、一つのミスで評価されてすぐ外されてしまうわけですから」

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