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仙台育英ではなぜ1年生が活躍できるのか? 須江監督に聞いてみた

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今夏の甲子園でベスト8入りした仙台育英は、メンバー18人中4人が1年生でした。4人のうち笹倉世凪投手、伊藤樹投手が初戦、準々決勝で先発を任され、この試合は1年生捕手・木村航大選手がスタメンマスクをかぶりました。1年生から活躍することを夢見て準備している中学生にとって、高1夏の甲子園デビューは憧れでしょう。同校OBで2018年1月から監督に就任した須江航監督(36)に起用の動機、チーム作りのテーマについてお聞きました。




「仙台育英はなぜ1年生が活躍できるのですか?」。

その質問に須江監督はきっぱりと言いきりました。
「年功序列じゃない文化が、仙台育英にはあるからです」。

佐々木順一朗前監督(現学法石川監督)から仙台育英の文化を引き継いでもうすぐ2年になります。部員の不祥事による謹慎からのスタートでしたが、チームを1から立て直し、2018年夏、2019年夏(8強)、茨城国体(4強)、神宮大会と、チームを4度全国大会に導きました。須江監督はこの実績について「(東北勢初の)全国制覇に向けた通過点」と言いますが、甲子園で積極的に1年生を起用する采配や、1試合で頻繁にバッテリーを変えていく継投策は「新しい高校野球のスタイル」として全国で話題になりました。「年功序列じゃない文化」とはどういうものなのでしょうか。詳しく聞いてみました。

「メンバー入り選手を決めるとき、データに基づいて実力のある選手を平等に選びます。そこに3年生だからとか、1年生だからという理由はありません。『特待生だから』とか『中学チームとの関係』など、大人の事情で優遇されるようなこともありません。その選手がもっている実力を評価します。どの選手に対しても、扉が開いた状態でいるのが仙台育英のやり方です」。

須江監督はこれまで、陽の当たる選手人生ではなく「裏方」の道を歩んできました。埼玉の中学を卒業後、仙台育英に入学。2年秋に佐々木監督からGM(グランドマネージャー)に任命され、選手と監督を繋げる大役を務めました。高3春、2001年センバツで準優勝に輝き、八戸大でも学生コーチに。卒業後、母校の系列校・秀光中等教育学校(以下秀光中)野球部の監督を12年務めます。

「部員3人、軟式ボール2個」からスタートしたチームはやがて全国大会常連校となり、2014年には全中で日本一を達成。この時に主将をつとめた西巻賢二(楽天―ロッテ)ら、多くの選手を高校へと送り、仙台育英の強さを支えてきました。佐藤世那(元オリックス・秀光中出身)を擁して甲子園準優勝を修めた2015年夏のメンバー18人中6人が秀光中だったことも広く知られ、東北の野球少年たちが中高一貫の「6年計画」で大きな目標を達成するという一つのカタチが、結実した結果となりました。

現在、須江監督が仙台育英で指導している選手の多くは秀光中で自分が指導してきた選手です。それだけに能力把握や、意思疎通がしやすくメンバー選びも楽なのではないかという仮説が浮かびますが、須江監督は「そういうわけではありません」と首を横に振ります。「現に、いまのキャプテン田中祥都は兵庫加古川市(松陽中)の出身。これまで仙台育英のキャプテンは5年連続で秀光中出身の選手でしたが、キャプテンシーが優れている田中がしっかりと務めています。秀光中出身だからメンバーに選ばれるとか、優位だとか、そういう簡単な世界ではありません」と話します。

夏の甲子園初戦でスタメンマスクを任された木村航大(1年・秀光中出身)は「甲子園ではブロッキングができる捕手ということでたまたま使ってもらえましたが、この先も同じように出続けられるという保証はない。他にもいい捕手がいるのでもっとレベルをあげていかないと」と危機感を口にします。1年生で甲子園マウンドデビューした笹倉、伊藤も同じ。神宮大会では笹倉はエース番号を向坂優太郎(2年)に譲る形となり、伊藤はメンバーから外れ、悔しさを味わいました。センバツが有力視されているこの冬は「甲子園でレベルアップした姿を見せたい」と、原点に返って練習に燃えています。
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