ニュース 2019.12.26. 17:00

子どもの巧緻性を高める「野球太極拳」ってなんだ!?


■地面反力を意識した足上げ


次に行ったのは両腕を開いた状態で足を上げて移動する動きだ。ここで大事なのは地面反力を上手く使うこと。市来崎さんの見本のように足を高く上げようとすると、どうしても体が傾いてしまい、軸足が地面から離れてしまう選手が目立ったが、それでは地面反力を上手く使えているとは言えない。そして足を上げることを意識すると動きのスピードはどうしても遅くなる。野球も地面反力を利用して、指先やバットの先端などの末端をいかに速く正確に動かせるというかが重要になってくる。そういう意味でも、地面反力を利用して足を上げるという動きも野球に通じる部分が多そうだ。


 


■周辺視野を意識した目のトレーニング


今回のプログラムには体だけではなく、目を動かすものも取り入れられていた。武術では相手の動きをとらえるという意味で目が非常に重要であり、横からの攻撃などに察知できる周辺視野を鍛えることを日常的に行っているという。遠くを見た後に近くを見る、指を動かしながらそれを追うといった目の動きを繰り返すことで、見る力も養われるという。野球でもボールを見るのはもちろんだが、守備では相手のランナーや味方の動きをとらえる周辺視野も重要であり、この点も野球に生きる部分が多いと言えるだろう。

■その他の動き




 

指導の中で市来崎さんが再三話していたことが、いかに力を抜くかということ。ただ脱力するだけでなく姿勢を安定させたまま、一度力を抜いてから動き出すことでしなやかで速い動きが得られるという。そして頭と気持ちを協調させないと上手に力を抜くことはできないということも再三話していた。この点も巧緻性の向上に伝わるヒントがありそうだ。

今回紹介した野球太極拳は立花さんと市来崎さんが1年以上をかけてやりとりして、作り上げたものだという。今後、この動きが全国的に広がっていくことが巧緻性の向上に確実に繋がると感じられるデモンストレーションだった。(取材・文:西尾典文/撮影:編集部)




立花龍司さんプロフィール
1964年生まれ。大阪府出身。浪商高校(現大体大浪商)、大阪商業大でプレーし、大学時に学生コーチに転向。天理大でスポーツ医学の単位を取得し、1989年に近鉄バファローズのトレーニングコーチに就任。その後ロッテ、ニューヨーク・メッツ、楽天でもコーチを務めた。現在は大阪と千葉で『タチリュウジム』を開設して後進の指導に当たりながら、全国各地で講演活動も行い、note(https://note.mu/tachiryu89)でもこれまでの経験をもとに様々なことをテーマに発信している。筑波大学大学院修士課程修了、阪堺病院内SCA主宰、日本野球科学研究会会員、筑波大学野球研究班研究員。

市来崎大祐さんプロフィール
1987年生まれ。大阪府出身。6歳より武術を始めると14歳で武術太極拳のジュニア代表に選出され、17歳で日本チャンピオンに。高校卒業後は大阪体育大に進学し、2010年のアジア大会では銀メダルを獲得するなどの実績を持つ。現在は普及活動のために全国各地でイベントや演武活動を行い、活躍の場を広げている。