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変わりつつある高校野球、「厳しい指導」は令和の時代に有効か?

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■「今の子どもは昔と違うから」


5年ほど前、筆者はある高校野球指導者から話を聞いたことがある。その高校はこのところ甲子園には出場していないが、強豪校の一角と言われた時期もあり、その指導者も良く知られていた。
「この頃の子どもは、親に手をあげられたことも怒鳴られたこともない。だから昔と同じような指導をしてもついてこないんだ。そんなことをすれば子どもはすぐに落ち込むし、場合によってはやめてしまう。また父母からクレームが来る。だから、今は口でやさしく教えるようにしているんだ」と言う。
この時期、野球以外の体育系の部活の指導者の取材もしたが、その多くが「今の子どもは昔と違うから」と言った。部活指導者の間ではそういう認識が広がっていたのだ。

その野球指導者は、
「今の子どもは確かにひ弱だが、それは子どもの責任ではない。親や学校、教育の責任です。今の子どもはかわいそうだね」と言った。
その口ぶりからは、昔の勝利至上主義、スパルタ主義の指導は間違っていない。それについてこられない今の子どもに問題があると言わんばかりだ。
「でも、そういう子どもも根気よく指導して、徐々に厳しさを教えていけば、厳しい練習にもプレッシャーにも耐えることができる、昔と変わらないたくましい高校球児になるんだよ」
「球数制限」が議論され、長時間の練習や、厳しい環境での練習に批判が集まるなど、高校野球は変わりつつある。
「名将」と呼ばれる著名な指導者も「昔のままの指導はもうできない」「子どものうちは勝利至上主義ではだめ」と言い始めている。
しかし、こうした名将たちも、小中学校など「エントリー」の段階では優しく接するべきだが、高校に入れば勝利を目指して厳しい指導をすべきだ、という意見をもっているようだ。

■高度経済成長期と今では異なる「求められる人材」


筆者はその野球指導者に「厳しい指導をすれば、子どもはどう変わりますか?」と聞いた。
「そりゃ忍耐力が付くよ。どんな辛いこと、苦しいことにも耐えられるようになる。精神が鍛えられるんだ。それに厳しい上下関係を学ばせることで、礼儀正しい立派な人間になるんだよ」と即座に応えた。

20世紀の高度経済成長は、「企業戦士」といわれるサラリーマンが、自己を犠牲にして仕事に打ち込んだことで達成された。その戦士たちの中には、学生時代に野球や他のスポーツで厳しく鍛えられた人がたくさんいた。彼らは強靭な精神力で困難を克服した。また会社や上司に対して忠誠心を持ち、滅私奉公の気持ちでがんばった。その時代には、野球指導者の言う「厳しい指導」は有効だっただろう。

しかし時代は大きく変わった。企業は年功序列、終身雇用をやめて、能力主義になりつつある。昔は「言われたことを忠実に実行する」人材が「優秀」とされたが、今は「課題に自ら取り組み、自分で解決策を見出し、実行する」人材が求められている。
ビジネスマンたちも新たなチャンスを求めて転職するようになっている。
自分で判断できず、言われたことをするだけの「指示待ち族」は、いくら忍耐力があってもこれからの世の中では成功するのは厳しくなる。
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