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「発育発達学に基づくコーチング〜年齢に応じた野球が上手くなる心と体の作り方〜」講演レポート(後編)

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2月15日に立花学園高校(神奈川県)で、神奈川県西部の高校野球、少年野球指導者らを対象とした講演会が東京農業大学応用生物科学部の勝亦陽一准教授を招いて行われました。講演のテーマは「発育発達学に基づくコーチング 〜年齢に応じた野球が上手くなる心と体の作り方〜」。講演レポートの後編は、子どもの生まれ月が野球に及ぼしている影響などのお話を中心にご紹介します。




子ども年代で大切なのは「選抜」ではなくて「育成」


モニターに映し出されたとあるグラフ。ジュニア期に活躍する選手たちの身長、体重が全国平均よりも大きく、早熟傾向であることを示すグラフです。

「『発育スパート期』は1年間で身長が約10cm伸びます。ボールのスピードは身長が1cm伸びると大体1.5キロぐらい速くなります。中学生時代にスピードが1年間で10〜15キロ伸びる子もいます。問題はこの『発育スパート期』が子どもによって違うということです」

勝亦先生の研究によると、ジュニア期に全国大会で活躍した選手は「発育スパート期」が12.1歳で訪れるのに対して、一般の中学球児は13.0歳で訪れています。つまり元々体も大きかった選手たちは発育のピークも早く、一般的にいう早熟ということになります。

中学年代では「全国大会が早熟だらけの野球大会になっている」と勝亦先生は指摘します。
「高校で身長が伸びる子もいます。私が知っている中では高校で15cmも伸びた子がいました。その子は小学生の時は補欠でしたが高校ではエースでした。こういう例もあるのです。でももしかしたら指導者がそういう可能性を潰してしまうかもしれない。指導者が心がけなければいけないのは、『花咲く時期は子どもによって異なる』ということです」

早生まれの子たちが野球を辞めていく現状


○選抜チーム
4−6月生まれ(56.1%)
7−9月生まれ(24.9%)
10−12月生まれ(14.8%)
1−3月生まれ(4.2%)

○全国大会出場チーム
4−6月生まれ(45.2%)
7−9月生まれ(29.9%)
10−12月生まれ(18.5%)
1−3月生まれ(6.4%)

○一般野球選手
4−6月生まれ(26.9%)
7−9月生まれ(25.1%)
10−12月生まれ(25.5%)
1−3月生まれ(22.5%)

上の数字を見てもらうとわかると思いますが、選抜チームや全国大会出場チームは約80%が4−6月、7ー9月生まれの子達になります。4−6、7ー9月生まれの子は体の成長が早いから、生まれが早い子が多いチームが勝つという現状が見えてきます。

中でも一番問題なのは、早生まれ(1−3月)の子たちが野球を辞めていくということだと勝亦先生は警鐘を鳴らします。
「小、中、高と進む中でそれぞれのカテゴリー野球人に占める割合の中で1−3月生まれの子どもたちは22.5% → 19.6% → 17.8%と減っているのです。なぜか? 成長が遅い早生まれの子は体が小さいことが多く、試合に出してもらえないからです。
極端に言えば、4ー6月生まれの子たちがピッチャー、キャッチャー、センターラインを固めて主軸を打つ。早生まれの子たちはセカンドを守り、8、9番でバントや四球を求められる。そういった役割も野球の中では大事ではあります。でもそういう体の育っていない早生れの子達が野球を辞めて行っているのです。これが私が調べてきたデータの中で一番残酷な野球界の現状を表しているデータではないかと思います」

○早熟の子達(4ー6月生まれ)は、小さい頃から試合に出て、いいポジションを任されて、選抜チームに選ばれて、野球が好きになって、野球が上手いと言われ、やる気がアップして、自主練もする、上達するという『良い循環』になることが多くなります。しかし、「良い循環」になれなかった早生れの子たちが辞めていっているという現状があります。
そうやって野球を辞めていった子たちが、将来自分の子どもに野球をやらせるでしょうか?
「それが今の野球人口減少にもつながっている」
と勝亦先生も指摘します。
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