「今年は新型コロナ禍で中止も検討していたが、開催できてよかったです。」
フタバ産業野球部の柴田亮輔監督は語る。
柴田監督は地元幸田町の出身、愛工大名電高校時代には内野手、主将として春の甲子園で優勝。
2005年の高校ドラフト3巡目でオリックス・バファローズに入団。俊足の左打者として大先輩のイチローに続く活躍が期待されたが、実力がアップした矢先に肉離れによって戦線離脱。2013年に福岡ソフトバンクホークスに移籍するも同年、引退。
引退後は郷里に戻ってフタバ産業でプレー、2018年から監督に就任。チームを全国大会に進出させるなど、手腕を発揮している。
「会社のご理解で、私たちは野球を続けさせていただいていますが、社会人野球を取り巻く環境は年々厳しくなっています。ただ野球をしていればいいのではなく、職場や地域に貢献する活動も必要だと思います。
私自身、プロ時代は故障に泣きましたから、野球の実技だけでなく、身体のケアや栄養など生活管理も必要だと思っています。
昨年の教室のときは、管理栄養士にも来ていただいて、保護者の方に話していただきました。今年は新型コロナ禍で、そこまではできませんでしたが、そういう部分もやっていきたいと思います」
柴田監督は、イベントの合間に選手を集めて
「ただ子どもにボールを投げたりするだけではだめだ。子どもが喜ぶように、大きな声でほめたり、励ましたりしなければ。子どもが喜んで帰ってもらうことが目的なんだから、もっと盛り上げるように」
と指示を与えていた。
社会人野球の置かれた境遇を知っている指導者ならではの指示だと思われた。
フタバ産業野球部は、この日の午後には、岡崎市内の少年野球チームに対して野球教室を行った。
社会人野球チームの中には野球教室を行っているところもあるが、フタバ産業野球部の活動は、小学校低学年を対象にした普及活動も行っている。これは特筆すべきだろう。
野球の活動が、フタバ産業のCSR(社会貢献活動)になっているのだ。
愛知県の高校の硬式野球競技人口は、2011年には8425人だったが、2020年には7381人と10年で12.4%も減少している。野球離れを食い止めるためにも、フタバ産業野球部の取り組みに注目していきたい。(取材・文・写真:濱岡章文)