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「少年たちは野球を楽しんでいるか」小学生から酷使される選手の肩

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その原因の一つには、小学校レベルでの大会、公式戦が多過ぎることが挙げられるでしょう。高校野球の場合は多少の地域差はあっても、基本的には春、夏、秋の大会が行われる程度です。しかし少年野球に限れば、区や市、私設リーグの大会が頻繁に行われ、週末には大会を掛け持ちし、ハシゴしているチームも少なくありません。その結果、チームによっては年間二百数十という試合をこなすことになり、それを自慢気に語る監督までいるのですから、事態は相当に深刻だと言わざるを得ません。しかも何百という試合を本当に限られた数の投手で回しているチームも多く、考えただけで恐ろしさを覚えてしまいます。

この問題を解決するには、指導者が正しい知識を得て、指導のレベルを上げていく以外に方法はありません。基本的に子どもと大人の体はまったく違うもので、幼い頃に肘が変形すると、その子は本当に野球ができなくなってしまうことなど、医学的な理解を広め、深めていく必要があります。これに関しては、慶應義塾高校野球部前監督の上田誠さんが地道な啓蒙活動を続け、私も間接的にお手伝いしていますが、本当に話を聞いてほしい指導者には届いていないのが実情です。

進歩的で勉強しようという意思を持った指導者は講習会や勉強会に来ますが、本当に変わらなければいけない指導者は出席しません。これは高校野球とも共通する部分で、固定観念に縛られた指導者は、「俺はいままでこのやり方でうまくいってきた」と意固地になり、変わらないままでいるのです。

小学生の段階であれば、その子の好きなように野球をさせて、中学校や高校でも頑張りたいと思う子どもを一人でも多く送り出すのが、本来、少年野球に求められている役割だと思います。体力や技術は中学校や高校の段階で身に付けても、何も遅くありません。小学生のうちは「野球は楽しい」と思えれば、それで十分なのです。

もっと言えば、大会さえなくてもよいのではないかという思いがあります。野球は本来リーグ戦で行うべきもので、トーナメント形式の大会はそもそも無理があるのです。その結果、負けたら終わりというところに美学を求め始め、前述したように、そのドラマをメディアやファンが倒錯的に楽しむという現象が起きてしまいます。また一発勝負となれば、当然、選手起用にも偏りが生まれ、エースと心中せざるを得ないチームも出てきます。(『Thinking Baseball ――慶應義塾高校が目指す"野球を通じて引き出す価値"』森林貴彦監督/東洋館出版社)

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「少年たちは野球を楽しんでいるか」
小学生から酷使される選手の肩」
・負担の大きい少年野球の保護者
・加速する小中の野球離れ
・子どもの自立を妨げる親の押し付け

森林貴彦
慶應義塾高校野球部監督。慶應義塾幼稚舎教諭。
1973年生まれ。慶應義塾大学卒。大学では慶應義塾高校の大学生コーチを務める。卒業後、NTT勤務を経て、指導者を志し筑波大学大学院にてコーチングを学ぶ。慶應義塾幼稚舎教員をしながら、慶應義塾高校コーチ、助監督を経て、2015年8月から同校監督に就任。2018年春、9年ぶりにセンバツ出場、同年夏10年ぶりに甲子園(夏)出場を果たす。
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