ニュース 2021.01.08. 18:00

「少年たちは野球を楽しんでいるか」子どもの自立を妨げる親の押し付け

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「文武両道」を掲げる慶應義塾高校野球部を率いる森林貴彦監督の著書『Thinking Baseball ――慶應義塾高校が目指す"野球を通じて引き出す価値"』。この本の中から少年野球に言及している部分を紹介いたします。今回は第一章の中から「少年たちは野球を楽しんでいるか/子どもの自立を妨げる親の押し付け」を紹介します。




また保護者の側にも問題がないわけではなく、そもそも子どもの力量を見誤っている保護者が多いように感じます。「うちの子の実力なら、あの高校には絶対に行けるはずだ」と思い込み、進学の際にチーム側と揉めるという話もよく耳にします。また入部後も、「なぜ、うちの子を試合に使わないんだ!」と指導者に文句を言うような、モンスターペアレント化する保護者も少なくありません。

これには、親と子の距離が近くなってきている時代的な背景が大きく影響していると思います。私が高校生の頃は、親が試合や練習を見に来ることにある種の気恥ずかしさを覚えたものですが、いまの高校生は少なくとも嫌がりはしません。もちろん時代の流れとして否定しきれない部分もありますが、親子間の距離の取り方がかなり変化しているのではないでしょうか。  いまは昔のようにきょうだいの多い家が少なく、また一人っ子の家庭が多く、親が付いてきて、子どもの野球を一日中ずっと見ているという保護者がたくさんいます。趣味は人それぞれのため否定はできませんが、どうしても「何か違う」という感覚を個人的には捨てきれません。

この親子間の距離の近さは、親が先回りして子どもの行く道にレールを敷いてしまうという問題にもつながってきます。例えば、小学6年生や中学3年生の夏にチームが負けた場合、中学や高校に入るまでの約半年の間に、野球塾に通わせる保護者がかなりいます。

〝子どもの野球が習い事になっている〟という問題は前述した通りですが、中学生や高校生でも類似する問題が起きているのです。

特に小学生に言えることですが、子どもだけで自然発生的に野球を楽しめる場をもっと作っていかなければいけません。そうでなければ、野球がどんどん硬直化したものになっていってしまうだけだと思います。

それは、指導者に対する評価も同じです。多くのメジャーリーガーを輩出するドミニカ共和国では、輩出したメジャーリーガーの数が指導者の評価の対象となりますが、日本では、甲子園で勝った指導者ほど評価される傾向にあります。これでは結局、勝ったほうがいいという流れになってしまいます。そうではなく、例えば、私立の強豪校と比較して能力はそれほど高くない選手たちを伸ばしたといったことや、将来の指導者をたくさん育てたなど、指導者を評価する視点はたくさんあるはずです。しかし現在は、全国中継される甲子園で勝つことがすべて。これではいつまで経っても、高校野球は変わりようがありません。

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