ニュース 2021.05.21. 20:38

中学チーム選びは慎重に|トータルテンボス藤田の「ハンパねえ!学童野球」

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最近、僕の野球仲間に2つの相談事があったそうです(別々の人への相談でそれぞれ違うチーム)。

1つはこの春に強豪硬式チームを退団した中3の親子からの相談。
内容は、全体練習が終わった後に上でやる事を意識した個人練習をしていたところ、指導者にその練習方法を「生意気だ」と咎められ、ソコから露骨に文句を言われる様になり試合にも干され始めて辛くなり退団を決めたというもの。

もう1つは、この春に息子さんが中学硬式チームに入団した親御さんから。こちらの内容は、入部早々に特定選手たちばかりが優遇され自分の子供が干されたような状況になっていて、退団を考えているとの事。

1つ目の相談に関しては、その子が元々附属の高校に進学して野球を続ける予定で、チームに頼って野球強豪高校への進学を目指しているわけでもなかった為、それほど悩む事もなく退団されたそうです。
2つ目の相談に関しては、情報があまり詳しくない状況ではありますが、入団して僅か2ヶ月、週末だけと考えてまだ8回ぐらいの活動、さらには1年生という事もあって、親御さんが少し心配しすぎかな? と思っています。

今回の2つの相談とも、大人のせいで子供が野球を辞めてしまう可能性もあったと思います。その根本的な問題は、チームを選びの失敗にあるのかもしれなしなぁと、僕のやっているオンラインサロン(少年野球の保護者や関係者が集っています)のメンバーとも話しました。

以前読んだ、小国綾子さんという方が書いた『アメリカの少年野球こんなに日本と違ってた』という本の中で、アメリカは移籍や退団が年1で行われていて、実力のある子やチームが自分に合わない子はドンドン移籍を繰り返していくという事が書かれていました。
向こうはキャリアアップの社会、それに対して当然という考え方があり、なんなら周りが実力のある子に対して「もっと上のチームでやるべき」と勧めてくる事もあるそうです。そういった自由なお国柄の代わりに情報は全て自分達で調べなければならないし、さらにその選択のミスに対しての責任も自分達で負わねばならないという事でした。

野球界のコネクション


野球をやっていた人間の間では当たり前のいわゆる「野球界のコネクション」。それを普通の保護者は全く知らないという事がサロンでも話に出て、そりゃそうだ、と今更ながら気づきました。
保護者の方は子供が中学のクラブチームで野球をやりたいとなったらHPを調べると思います。そこには進学実績も載っていて有名な学校も並んでいたりします。
情報を知らない家庭の方は、そのチームに入団すれば我が子もその学校に行けると思って体験会を経て入団します。
サロンメンバーに聞けば、6割ぐらいの家庭が進学先を見据えてチームを選ぶそうです。
ですが、予備校と一緒で「早慶に200名合格!」など見出しはありますが、全国50000人分の200人と一緒なんです。

高校の推薦も多種多様で色々なケースがあります。
例えばAくんという子は何も知らずにAというチームに入りました。Aくんは野球が上手く大阪の超名門校から声が掛かり入学しました。
翌年Aくんの実績ができたAというチームは入団希望者が殺到して部員が増えました。しかし2年後そのチームからその学校に野球推薦で入部する子は1人もいません。
これはそのチームにパイプがある訳ではなくAくんの実力が凄かっただけに他なりません。
逆にBくんは東京で有名な学校に進学を希望していました。調べたらBというチームは毎年その東京の高校に選手を輩出しています。その事でBというチームに入り3年間研鑽を積み晴れてその東京の高校に入学できました。
これはそのチームがパイプを持っていてしっかりと進学実績もあるという事ですね。

もちろん、ここに挙げた2つのケースだけではありません。実際はもっと沢山のケースもありますし、昔は高校と中学のチームを繋ぐブローカーなる者の存在もあったそうです。更にいえばそのパイプも永遠のモノではなく途中で高校の指導者と中学のチームの関係が悪くなりパイプが消滅といった事もあります。
ですが、強豪と言われるチームは実績があるので高校のスカウトの方の目に触れる機会が多い事も確かです。
これはプロ野球のスカウトも一緒で、例えば甲子園常連校等は毎年プロ注目の選手が多くいます。3年生の注目選手を見に行った時にキラリと光る1年生がいて、その子も追いかける。といった具合です。

なら、強豪チームに入団させた方がイイ?


ソコが考え方なのでしょうが、確かに進学を考えたり行き届いた指導を希望するのならばそれも良いと思います。ですが、そう考える家庭は多いので人気もあり部員もメチャクチャ多く、練習もそれなりに厳しいです。更に言えば学童時代に実績のある子も多数入ってきたり、なんならスカウトされて入って来ている子さえいるチームもあります。

練習体験に行き、何となくイイなぁと入団させてしまったら今回の相談者さんの様な問題も発生すると思います。
それがいけないとは思いませんが、もう少し保護者が調べて慎重にチーム選びをしないと、いざ入ってから「違ったぁぁぁぁ!」となる事もあります。
お金に余裕があってユニフォーム代なんて余裕だから辞めて違うチームに移籍しよう! という家庭ならば良いとは思いますが。

あとは、野球界は広いようでメチャクチャ狭いです。
何か問題があったりすると結構な速さで伝播します。モンスター保護者の情報も共有したりしています。

大人は箱だけ用意して子供ファーストでただ楽しく野球をやってもらえれば良い。

これが理想ですが、まだまだその理想とは程遠く大人が多く関与せねば成り立ちません。
ソコでみんなその様な考え方で理想に向かっていけば良いのでしょうが、各々考え方に相違がかなりあり、同じ方向に向きつつも「あそことは共栄したくない」や人間関係も相まってドロドロとした大人の嫌な部分が介在しているのが現実だと思います。

まあ、こういう投稿をしている僕も疎く思ってる方々も多くいると思いますが。




藤田憲右(ふじた けんすけ)
吉本興業所属のお笑いコンビ「トータルテンボス」のツッコミ担当。静岡県御殿場市出身。高校時代は野球部のエースとして3年夏の静岡県大会で2試合連続1安打完封勝利も記録。人気バラエティ番組「アメトーーク」(テレビ朝日)の人気企画「高校野球大大大好き芸人」で披露した高校野球への愛情、造詣の深さは全国の野球ファンの間でも有名。2016年には「ハンパねぇ!高校野球」(小学館よしもと新書)も執筆しており、全国の野球指導者、選手との交友関係も広い。現在は息子の学童野球を応援する傍ら、色々な学童野球の現場を見て周り様々な情報発信や問題提議なども行っているほか、オンラインサロン「トータル藤田の野球教」も運営している。
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