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少年野球の保護者負担、子どもが集まるチームはどうなってる?|ブエナビスタ少年野球クラブ編

少年野球人口が減少している——というテーマを扱う際、セットで語られることが多いのが「保護者の負担」についてだ。少年野球人口の減少は事実なのかもしれないが、東京、神奈川では新しくチームが誕生し、そのチームに多くの子どもが集まるということも決して珍しいことではない。そんなチームでは「保護者の負担」はどうなっているのだろうか? ヤキュイクでも度々取材に訪れている少年野球チーム『ブエナビスタ少年野球クラブ』(神奈川県川崎市高津区)の代表兼監督の吉井孝尚さんに話を聞いた。


<56人の子ども達を見る大人の目

創部7年目を迎えたブエナビスタ少年野球クラブ(以下ブエナビスタ)は、結成当初から練習時間は「週末1/4ルール」(現在は土日それぞれ半日ずつ活動)を採用し、お茶当番なし、怒声罵声の禁止などを掲げ、『BEST COACHING AWARD』最高賞にあたるトリプルスターを3年連続受賞(殿堂入り)。現在の部員は56人にもなる。

取材に訪れた日、グラウンドには吉井さんの他、ヘッドコーチとマイナーチーム監督の2人、不定期で指導に訪れる大学生コーチ(大学軟式野球部員)3人、そして練習をサポートする10人のお父さんコーチ、合計16人の大人の姿があった(お母さんの姿は確認できず)。月謝は4500円と学童野球チームにしてはやや高めに設定されているが、これは練習場所が河川敷中心となるため道具を保管・運搬するための道具車のリース代が必要になることと、コーチに謝礼を払う必要があるためだ。

野球はどこからボールが飛んでくるか分からないし、固くて重いバットも振る。子どものケガや急な体調変化も起こり得る。そのため一定数の「大人の目」が必然的に必要になってくることから、保護者が子ども達を見守る「見守り当番」をルール化しているチームも多い。ただそれを「負担」の一つと捉える保護者もいる。

この日は十分な「大人の目」があったブエナビスタだが、聞けばお父さんコーチは当番制や強制ではなく任意の参加だというし、学生コーチも毎回来ているわけではないという。それであれば「大人の目」が監督・コーチの3人しかない場合も考えられる。そんな場合はどうするのだろうか? 吉井代表の答えは明確だった。

「その日の大人が見れる範囲の練習をすればいいと思っています」

この日は子ども達を4つのグループに分け、それぞれで練習が行われていたが、毎回無理にこのような練習をする必要はないと吉井代表は話す。

「子どもの人数に対して大人の目が足りていないときなどは紅白戦をやったりして、その日の大人の目が届く範囲内のことしかやらないようにしていますし、(子どもが多くて紅白戦もままならない時などは)キックベースとかドッヂボールなど野球以外のことをやればいいかなと思っています」

熱中症や脱水症などの注意が必要な真夏の練習などでは、より「大人の目」が必要になる。ブエナビスタではそんな日はどのようにして子どもの安全に注意を払っているのだろうか?

「『大人の目』が少ない熱い日は練習を休みにします。危ないですから」

吉井代表は続ける。

「試合に勝ちたい、上位大会に進みたい、子どもに上手くなって欲しいという思いは私たちも同じです。でもそこにこだわりすぎると『大人の目』や天候や気温に関係なく、どうしても毎回一定の練習をさせてしまいがちになります。そうなるとどうしても『じゃあ見守り当番が必要だ』『負担を平等にするために当番制にしよう』という発想になると思うんです」

その日の状況に応じてやれること、できることを柔軟に行う。大事にしているのは目標に向けて練習することと子どもの安全とのバランスだ。

「そんなことでは強くならない」「練習をしなければ子どもは上手くならない」という反論が聞こえてきそうだが、それも否定できない。だが、ブエナビスタのこうした考え方を支持する保護者が多いからこそ、このチームには絶えず多くの子ども集まってきているのもまた事実なのだ。