ニュース 2017.08.03. 11:30

改めて考えみる「よく噛んで食べる」ことの効果

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以前に比べると食糧事情も格段に向上し、季節を問わず年中食べられる食材が増え、外食産業やコンビニエンスストアの台頭、スーパーに並ぶお惣菜や仕出し弁当などは、日常生活に必要不可欠なものとなりつつあります。また食事の欧米化が進んでいると言われ、「軟らかい」「食べやすい」食料が多くなり、食事にかける時間や咀嚼回数も減っているという興味深い資料があります。「料理別咀嚼回数ガイド」(風人社)に掲載されている斎藤滋氏ほかの復元食による研究によると、一回の食事にかける時間と咀嚼回数は、

●弥生時代の復元食 3990回(51分)
●鎌倉時代の復元食 2654回(26分)
●戦前の復元食   1420回(22分)
●現代の食事     620回(11分)

というように時代とともに食事時間と咀嚼回数が減っていることが報告されています。食卓に並ぶ食事がそもそも食べやすいものが多いことを考えると、よく噛んで食べる=咀嚼回数を増やすこと、は意識的に行わなければ、何となく食事を流し込んでしまうようになってしまうでしょう。

よく噛んで食べることはジュニア選手にとってさまざまなメリットが挙げられます。咀嚼回数が増えると顎、頭部、顔面の筋肉をより多く動かすため、血流がよくなり、脳の活性化を促すことが知られています。特に朝食はエネルギー源の確保だけではなく、しっかり噛むことでボーッとした頭を目覚めさせることにも役立ちます。また咀嚼回数が増えると唾液の分泌が多くなり、唾液に含まれる消化酵素が食事の吸収を助けるため、栄養の吸収率はよく噛んで食べたときのほうが効率がよいと言われています。さらに唾液には免疫力を上げる抗体が多く含まれているので、風邪を始めとする感染症予防にも効果が期待できます。

最近では軟らかい食材を使った食事だけではなく、ゼリータイプの飲料や栄養補助食品などあまり噛まなくても食べられる商品も増えています。こうしたものに頼った食生活を長く続けていると、必然的に噛む回数が減ってしまうことが考えられます。食事タイムは余裕をもって設定し、ゆっくりよく噛んで食べることを心がけてみましょう。一度、自分が口に入れて何回噛んで、飲み込んでいるかを数えてみるとその少なさに驚くと思います。また軟らかい食べものばかりではなく、食べ応えのあるものを選んで取り入れること大切です。雑穀ご飯や玄米入りご飯、ごぼうやレンコンなどの根菜類、食物繊維を多く含むキノコ類などをうまく取り入れ、栄養バランスとともに咀嚼回数を意識したものにするとよいですね。


著者プロフィール

アスレティックトレーナーの西村典子さん
アスレティックトレーナー/西村典子(にしむらのりこ)
東海大学スポーツ教育センター所属、東海大学硬式野球部アスレティックトレーナー。日本体育協会公認アスレティックトレーナー、NSCA-CSCS, NSCA-CPT。学生スポーツを中心としたトレーナー活動を行う一方で、スポーツ傷害予防や応急処置、トレーニングやコンディショニングに関する教育啓蒙活動を行う。また一般を対象としたストレッチ講習会、トレーニング指導、小中学生を対象としたスポーツ教室でのウォームアップやクールダウンといったさまざまな年齢層への活動がある。一般雑誌、専門誌、ネットメディアなどでも取材・執筆活動中。
大阪府富田林市出身。奈良女子大学文学部教育学科体育学専攻卒。
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