「疲労骨折」は時間をかけて進行する
こうした突発的に起こる骨折とはまた違った状況で起こる骨折があります。それが「疲労骨折」です。
疲労骨折は、身体の疲れなどいわゆる疲労によってもたらされるのではなく、同じ動作を何度も何度も繰り返し行ったり、強い外力が一部分に加わり続けることで骨(と骨膜)にジワジワと慢性的な痛みをもたらすようになります。この状態からさらに強い力が加わり続けるとやがて骨の連続性が断たれて亀裂を生じるようになります。これが疲労骨折と呼ばれる状態です。
針金を毎回同じところで折り曲げているとやがては折れてしまうように、使いすぎによる「金属疲労」が疲労骨折の語源といわれています。疲労骨折を起こしやすい部位としては、足のすね部分にある脛骨(けいこつ)や腓骨(ひこつ)、足の甲の骨である中足骨(ちゅうそっこつ)や舟状骨(しゅうじょうこつ)などですが、まれにバッティングのスイングを繰り返し行うことで肋骨に疲労骨折を起こすこともあります。
疲労骨折の典型的な症状としては運動痛と圧痛(押すと痛みが出る)があり、場合によっては痛みのある部分が腫れていたり、骨が少しふくらんでいたりすることがあります。また疲労骨折が厄介なケガとして知られているのは、すぐには気づきにくいことや「我慢すれば練習ができる程度の痛み」であるという点です。
初期段階では練習を始めて負荷がかかると痛みが生じるようになり、練習が終わると軽くなることが多いといわれています。しかし、この状態のまま痛みを我慢して練習を続けていると、やがては練習後にも痛みが続くようになり、しばらくすると練習前から練習後までずっと痛みがあるという状態になってしまいます。身体を動かしているときに「関節以外の部位」に痛みを感じる場合には疲労骨折を考える必要があるでしょう。
疲労骨折の場合、まず原因を取り除くことから始める必要があります。すなわち繰り返し加わる外力を軽減させるということです。同じ動作を繰り返して痛みを生じたのであれば、その動作を一定期間(軽度であれば1〜2ヶ月程度)行わないようにすると、しだいに痛みは軽減されていくことが多いようです。
しかし再び同じ部位に外力が繰り返し加わると再発することも多いため、練習が単調にならないようにランニング、トレーニングに変化をもたせることが大切です。また身体の使い方やフォーム、練習環境、練習量、使用している用具(スパイク等)などによっても疲労骨折を生じる場合がありますので、こうした要因を一つずつチェックすることも忘れずに行いましょう。
著者プロフィール
アスレティックトレーナー/西村典子(にしむらのりこ)
東海大学スポーツ教育センター所属、東海大学硬式野球部アスレティックトレーナー。日本体育協会公認アスレティックトレーナー、NSCA-CSCS, NSCA-CPT。学生スポーツを中心としたトレーナー活動を行う一方で、スポーツ傷害予防や応急処置、トレーニングやコンディショニングに関する教育啓蒙活動を行う。また一般を対象としたストレッチ講習会、トレーニング指導、小中学生を対象としたスポーツ教室でのウォームアップやクールダウンといったさまざまな年齢層への活動がある。一般雑誌、専門誌、ネットメディアなどでも取材・執筆活動中。
大阪府富田林市出身。奈良女子大学文学部教育学科体育学専攻卒。
東海大学スポーツ教育センター所属、東海大学硬式野球部アスレティックトレーナー。日本体育協会公認アスレティックトレーナー、NSCA-CSCS, NSCA-CPT。学生スポーツを中心としたトレーナー活動を行う一方で、スポーツ傷害予防や応急処置、トレーニングやコンディショニングに関する教育啓蒙活動を行う。また一般を対象としたストレッチ講習会、トレーニング指導、小中学生を対象としたスポーツ教室でのウォームアップやクールダウンといったさまざまな年齢層への活動がある。一般雑誌、専門誌、ネットメディアなどでも取材・執筆活動中。
大阪府富田林市出身。奈良女子大学文学部教育学科体育学専攻卒。