予防への理解を深めることも大切
次に桐光学園で選手としてプレーをした経験を持つ吉田氏が『ストレッチングの重要性』について講演。ストレッチングの目的は大きく分けて二つ。肉体の可動性の維持・向上と、怪我・スポーツ障害の予防である。そこで、肩・肘・股関節に効くさまざまなストレッチを会場に集まった人と共に実践。身体で覚える・体感することで、指導の現場に役立つ知識を植え付けていった。さらに、ウォーミングアップやクーリングダウンの重要性に話が広がり、外気温や疲労感を考慮し約15〜45分の時間を練習前後に設けることの大切さを説いた。
続いて『故障から復帰のためのリハビリプログラム』を坂田氏が講演。身体に負担のかかりやすい間違った投球フォーム(手投げ・肘下がり)が引き起こす障害の事例を紹介し、正しい投球フォームの指導を促した。また、テレビゲームなど長時間を行うと自然と姿勢が猫背になってしまい、怪我の確率も高くなる旨を説明。故障に悩む選手を多く見てきた坂田氏の「丈夫になれば上手になる」というキーワードが非常に印象に残った。
午後の講演では、プロ野球選手の代表として三浦氏が幼少期からプロになるまでの野球体験を語った。三浦氏は「(スポーツ障害は)予防をすれば必ず減る。プロアマ関係なく、学童野球からプロまで指導者が勉強することが大切。こういう場は必要だと思う」と今後の継続的な開催を望んだ。
最後には三浦氏を含めた講師陣が、来場者からの質疑応答を行った。球数制限の話題になるとそれぞれ事例を挙げ、具体的な数字を述べた。山崎氏は「選手によって違うが目安は1日50球」、坂田氏は「80球までに抑えるように」、三浦氏は「アメリカでは遠投やキャッチボールも1日の球数に入れてケアをしている。日本もある程度制限をしないといけないと思う」と持論を展開した。
指導者と医療サイドの意見交換の場として初めて行われた今回の取り組み。会場に集まった学童野球に携わる約500人は熱心に耳を傾けていた。野球はスポーツ障害が多いということから、子どもに野球を勧めない保護者も昨今は多い。しっかりとした予防・対策への知識を現場サイドが持つことで、安全かつ安心して野球を楽しめる場を作ることが急務だ。プロとアマ、現場と医療の垣根を越えた取り組みが、野球界の未来を変える大きな一歩となることを心から願いたい。(取材・撮影:児島由亮)