ニュース 2018.06.04. 12:48

「文武両道 ービジネス界で活躍する元球児ー」星川太輔さん(後編)




——商社では主にどのような業務を行っていたのですか?
自分のいた会社は商品企画から製造、販売までの全てを一気通貫で担当するスタイルでした。国内外問わず仕入先の選定や在庫管理など実際の“モノ”を扱うのも初めての経験でしたね。最初は右も左も分からず業務内容はもちろん、日々戦略的思考と数字に追い込まれて本当に大変でしたけど、経営を学ぶという意味ではプラスのことばかりでした。3年で独立しようと考えていたのですが、最終的には4年在籍して今の会社を立ち上げました。

——現在は再び野球の世界に関わることになりましたが、そう決断した理由を教えていただけますか?
一つは野球のことが好きな人が本当に多いと感じたことが理由です。自分ももちろん野球が好きですけど、それ以上に本当に好きな人がいっぱいいる。そういう人のためにも、自分が今まで培ってきた知識や人脈を使って野球界のためになることをしたいと改めて思うようになりました。

——今は事業以外にも『一般社団法人Double Education』や『Players' future-first Club』というFacebookでのグループを立ち上げて、普及活動にも力を入れているそうですね。
普及活動については本当に急務だと思っています。『Players' future-first Club』は昨年夏に立ち上げました。大人の為ではなく子供の将来のために野球の指導をされている指導者の方が全国にいらっしゃいます。その方々の活動を集約して発信できるプラットフォームを作ることで大きな変革エネルギーに変えられないか、と思い志ある有志で作りました。年明けに筒香嘉智選手が少年野球界での勝利至上主義からの脱却を提言されましたが、我々も同様の考えを持っています。FBページに我々の主旨をまとめておりますのでご賛同いただける方は是非加入していただければと思います。

他方で、野球界は様々な問題がありますがどのような状態になればベストなのでしょうか。昔のように『スポーツと言えばまず野球』という状態には戻らないですし、それがベストではないと思っています。あくまで数あるスポーツの中で野球がどんな位置づけになるべきなのか、そういう日本全体のスポーツ産業を捉えた上でその中で野球をどうしたいのかという提案が野球側から必要だと思っています、野球のあるべき論だけを論じているのではなく。

これからやってみたいことはたくさんあります。体育からスポーツ、教育からビジネスへ従来のいいところを残しつつどうやって変換していくか、また12球団ではなく14や16とプロ野球球団を増やす、などいろいろチャレンジしたいです。いずれにせよ関わる人がハッピーになるのはもちろん、単にボランティアではなく有償でビジネスとして回る、そういう仕組みに変えていくことが重要ではないでしょうか。

——最後に現役の球児、野球少年、保護者の方にメッセージをお願いします。
今の野球界を見ていると、指導者のパワーが凄く大きくてそれに盲目的に従っているケースが多いように感じます。何のために野球をやるのか、1年後どういう状態になりたくてそのために年間スケジュールをどう組むのか、どんな相手チームと何のために試合をするのか、今日は何のためにどんな練習をするのか、自分たちで考えれることはもっともっとあるはずです。自分がこれまで接してきた超一流の選手はただ才能があるだけでなく自分でそういうことを考えられる力を持っている人達でした。野球でプレイヤーとして成功したいと思うのであればなおのこと、なぜその練習をするのか、なぜこれだけの回数をやるのか、そういったことを普段から自分の頭で考えるようにしてもらいたいですね。それは野球以外のことにも必ず役に立つのだと思います。

お忙しい中ありがとうございました。
(取材:西尾典文/撮影:編集部)

星川太輔さんプロフィール
1976年生まれ。東京都出身。中学2年まで野球部でプレーしたものの、慶応志木高では応援部に所属し団長を務める。慶応義塾大学進学後、硬式野球部で投手としてプレー。卒業後は株式会社アソボウズ(現データスタジアム株式会社)に入社し、データアナリスト、プロスポーツチーム向けコンサルティング事業を担当。2009年の第2回WBCではデータ分析担当として侍ジャパンの優勝にも貢献。同年にデータスタジアムを退社後、商社(株式会社ミスミ)での勤務を経て株式会社リバー・スターを設立し代表取締役に就任。トラックマンの代理店などの傍ら、野球の普及活動にも取り組んでいる。

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