小学部でも中学部でも、瀬野さんは子供たちに絶えず声をかける。「このあいだの休み、どうやった?」「故障は治ったのか?」「進路は決まった?」。親や教師のような「上から目線」ではなく、斜め上の「兄貴目線」とでも言おうか、一人一人の問題に真剣に向き合っているのがわかる。大人が子供をよく見ている。これが基本なのだろう。
「2017年のWBCに出た侍ジャパンのメンバーを見ると、野手は青木宣親選手(ヤクルト)を除き全員が少年時代、ボーイズやリトルシニアなど少年硬式野球出身です。でも、投手は、半数が中学軟式野球の出身です。
小中学校の早いうちから、硬球を使って大人と同じように練習をしていると、怪我をしてつぶれてしまうことも多いんですね。小学校ですごい球を投げていた子が、中学校でいなくなることもよくあります。
うちは、少年硬式野球チームですが、小学3年生までは軟球やソフトボールも使っています。硬球よりも軽いうえに、ボール自体に芯がなく、中が空洞です。ある調査によると、中が空洞のボールと、硬球のように芯がある球では肩、ひじの負担が違うということです。
体ができていない低学年は、それでいいと思います。練習試合でも軟式やソフトボールでやることがあります。
硬式野球チームだからと言って、子供の状態を考えずに何でも硬球を使う必要はないでしょう。臨機応変にやればいいと思います。
うちで野球を始めた子供で、肩やひじなど体を痛める子はほとんどいませんが、よそのチームからやってきた子の中には野球ひじなど、治療が必要な子もいます。ある意味で、うちは『駆け込み寺』のようになっています。
人数が増えたのは喜ばしいことですが、そういう子供もやってきます。大所帯になれば、よりきめ細かなケアや指導が必要になってきます。そういう部分も、充実させていきたいですね」(取材・写真:広尾晃)