ニュース 2018.10.17. 13:23

「バットは下から!フライを打とう!」子供たちの可能性を伸ばす悟塾(前編)

大きく、高く。打球をどんどん飛ばしていく子供たち。どの顔も笑顔にあふれ、心から野球を楽しんでいるように見える。
場所は福岡市内にある室内練習場「BALLHOUSE」。平日の19時。悟塾「小学生プロ育成プログラム」のスクールが行われていた。

「フライでいいけん。下から打つ!下から打つ!を意識して!」

西村悟塾長(35)から声をかけられると、子供たちは思い切りバットを振り、ボールを打ち上げていった。打ち終わった子供たちに感想を聞くと「アッパースイングがレベルスイング! っていうくらいの気持ちで打ってます!」、「下から振れと言われて、昔は全然打てんやったけど、今ではめちゃめちゃ打てるようになった!」と元気いっぱいに答えてくれた。塾生には初心者もいれば、3~4年通っている小学生もいる。ふだんは地域の野球チームで練習・試合をしているが、チームと併用して、空いた時間に塾に来るという熱心な生徒たちだ。

「『試合で打てました!』って報告をもらうことが何よりうれしいですね。ここでは、90度どこにでも同じ強さの打球が打てる打ち方を教えています。日本のプロ野球の少ないイスを狙うのではなく、メジャーリーグで活躍するくらいの気持ちで夢を大きく持ち続けてほしいですね」と西村塾長は語った。

「ヘッドを立てろ」という言い方も注意が必要。本質の向こう側をやさしく説明しています

高校時代のメッキが剥げて、大学時代に挫折を味わった西村塾長

自分がしてきた失敗を、子供たちにさせたくない」という純粋な思いから、2013年6月に野球塾を開塾した。中学時代にジャイアンツカップ出場、東福岡高校では神宮大会で日本一になり、センバツ8強を経験した西村塾長。順風満帆な、華やかな野球人生を歩んでいた。しかし、東海大学に入ると状況は一変。大きな挫折に直面する。

「メッキがはがれたというか、活躍できなくなりました。後になって原因がはっきりわかりました。正しい技術を身につけないままガムシャラに練習をしたせいでオーバーワークになり、ケガをしてしまったのです。練習の方向性を間違ったまま、中・高校時代は量だけをこなしていました。結果が出ていたから、技術を省みるきっかけがなかった。自分に技術がないと気が付いたのは、だいぶ後になってからです」。

小学4年生のりょうが君。「このスクールに来たら、試合でホームランを3本も打てた!」とニッコリ
高2秋は公式戦23試合で打率.449を残し、センバツ注目選手として全国区になった。しかし当時の西村塾長は「安打と打点は稼げるのに、なぜホームランが打てないんだろう…」と疑問に思っていたという。「足もあったので、弾丸ライナーの長打は打ったんですが、スタンドインができない。そもそも、ホームランが打てない打ち方って間違った打撃だったんですよ」と話した。
 
目先の勝利を目指すあまり「小手先だけの技術に走った」高校時代。結果が出ていただけに、それでいいと思っていた。甲子園に出たことにも満足感があった。少年時代からの勢いがピタッと止まり、技術の壁にぶち当たったのが大学時代。「打てないことを、木のバットのせいにする人がいるけど、そうじゃない。正しい技術があれば木でも打てたはずなんです」とふり返った。

人間の脳は言いすぎるくらい言わないと動かない。「アッパースイングでいいよ」と教えます
大学卒業後、西村塾長はプロ(NPB)を目指して独立リーグに入団。徳島インディゴソックスー福岡レッドワーブラーズー愛媛マンダリンパイレーツとチームを移行していく中で、多くの指導者、選手と出会い、自分の打撃を一から見直した。その結果、4年間で首位打者、打点王、本塁打王の打撃部門すべてのタイトルを獲得。NPBのフェニックスリーグでは打率5割を残した年もあった。

27歳のとき、遅咲きの外野手として異例のドラフト候補に名前が挙がった。年齢的なハンデもありNPB入団には至らなかったが、遠回りしたぶん、失敗を多く経験することができた。そのことが本質的な打撃論を導き出し、確信を持って人に伝えられるようになった断言する。

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