――小学生年代の全国トップクラスの子ども達が集まっていたわけですが、そんな子ども達を見ていて共通していることなどはありましたか?
いい選手ばかりなんですけど、普段の所属チームで「自分で考える」ということをあまりやっていないのではないかと思いました。
また、本当に野球が好きなんだなとは残念ながら思えなかったですね。どうしても自分のチーム(小金原ビクトリー)の子たちと比べてしまうのですけども、技量はもちろん侍ジャパンで集まった子たちの方が全然上なのですが、でも自分のチームの子たちの方が野球を楽しんでいるなと思いましたね。
そのあたりのことは仁志監督も気になっていたようで、「高橋さんのチームと比べてどう思う? 正直に教えて欲しい」と言われて、私も正直にそのように答えました。自分で考える、自分から発信するというところを技量同様にこれから磨いていってほしいなと思いました。
――小学生年代では勝利を第一に掲げる「勝利第一主義」の指導に疑問の声が出ることも多いですが、こういった国際大会では「勝利第一」で臨まれたのでしょうか?
もちろん勝ちに行く試合、勝ちに行く大会なのですが、仁志監督が本当に素晴らしい方で、子ども達に対しては目の前の試合に勝つことと同様に、これからのこと、この先のことについてもずっと伝えられていました。勝つことはもちろん大事なんですけど、子ども達が常に「自分で考える」ということをすごく重視されていました。私もヘッドコーチとして携わらせていただいてものすごく勉強になりました。
――結果的に3位で大会を終了しましたが、その結果については子どもたちはどのように受け止めていましたか?
最近の子どもたちはみんなそうなのかもしれないのですが、(スーパーラウンド初戦の)韓国戦に負けた後もわりとサラっとしていて(笑)。
試合後には毎回ホテルでミーティングをしていて私が子どもたちに話をしていました。その席で仁志監督からの訓示のようなことも毎回伝えていたのですが、さすがに韓国戦のあとは少しきついことを言いました。
「君たちは何人から選ばれてここにいるの? ユニフォームの胸には何がついているの? 代表に選ばれずに悔し涙を流している子たちもいるんだよ? それを『負けました。ははは』ですましていいの? 悔しい気持ちも大事だし、悔しかったらそれを表現しようよ。負けたことから逃げていたら成長しないよ」
というようなことを話しました。どれだけ響いたのはか分かりませんが。所属チームの方針や親御さんの考えと違っていたら、子ども達もなかなか耳を傾けにくいというのはあるかもしれませんね。
――最後に代表チームのコーチを経験してみた上で、野球少年のお父さん、お母さんに何かメッセージをお願いします。
6年生にもなると子ども達の中にも自立したいという心があると思います。お父さん、お母さんには子どもに干渉しすぎずに、グラウンドの中のことは指導者や専門家に任せる、答えがわかっていても子ども達にまず考えさせる。そのようにして子ども達の成長を促してほしいと思いますね。(取材:永松欣也、写真:本人提供)
*次回は高橋さんが監督を務める「小金原ビクトリー」を紹介します。