ニュース 2018.11.13. 16:43

【教えてメンタルトレーナー】「名前負け」している息子について

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今回の質問・ご相談



「名前負けしている息子について」

今年、息子(小6)の少年野球チームがはじめて県大会に出場しました。
地方の田舎町のチームですが、メンバーも揃っておりそこそこレベルは高いと思います。

はじめての県大会では初戦で都市部の強豪チームと対戦しました。
エースでキャプテンの息子は対戦が決まった時から「勝てるわけない」と弱気なことばかり言ってました。チームメイトも同じような感じでした。

「相手も同じ小学生なんだから怖がることない!」
「やる前からそんなこと言ってどうするの!」

と話しましたが本人には全然響いていませんでした。

試合が始まると実際に自分達よりも体格のいい相手を目の当たりにしてさらに気後れしたのか、らしくないミスを連発して3-5で負けました。

私も試合をやる前は大敗するのでは...と心配もしましたが、いざ戦ってみるとレベルはそんなに変わらなかったように思います(むしろ勝っていても不思議ではありませんでした)。
言葉の意味はちょっと違いますが、試合前から「名前負け」していたのだと思います。

息子は地元の中学で軟式野球を続ける予定です。中学でも県大会に出るチャンスはあると思います。その時に今回と同じようにやる前から「名前負け」しないように、どんな言葉をかければいいでしょうか?


藤代さんの答え

こんにちは、メンタルコーチの藤代圭一です。
ご質問ありがとうございます!

「都市部の強豪チーム」と耳にするだけで、身体が強ばり、負けちゃうかもしれないという不安がよぎってしまうことってありますよね。

また、僕たち大人としてはご質問者さんが仰る通り「名前負け」せずに堂々と立ち向かってほしい、という思いを持つのもとても共感します。

少し脱線しますが、本来「名前負け」とは「名前が立派過ぎて、かえって実質(人物)が見劣りすること」を指すそうですが、僕たちスポーツの世界では「相手の名前が立派で、自分を卑下してしまうこと」と捉えることが多そうです。

では、どうしたら「名前負け」しなくなるのでしょうか?
 

ポイント

・緊張は悪者ではない
・子どもの気持ちをまずは受け止める
・思考を整理するサポートをする
・相手に向いている思考を自分に向ける
・変えられるものにエネルギーを向ける
・どんなときも応援する


「緊張は悪者ではない」
まず最初のポイントですが、「緊張は悪者」と捉えてしまうと、子どもたちのネガティブな姿勢を否定してしまうことがあるかもしれません。過緊張は呼吸を浅くし、身体を強ばらせ、本来のパフォーマンスを阻害する要因となりますが、適度な緊張感はより高い力を引き出してくれます。

「思考を整理するサポートをする」
お子さんからは「勝てるわけない」という、やる前から消極的な言葉を耳にすると、僕たち大人としてはもっとやる気にさせたい!と意気込んでしまうところですが、まずは彼らの正直な気持ちに思いを寄せることが大切です。なぜなら、表面的な言葉を取り繕って、やる気を引き出したとしても、またおなじ場面が訪れたときに、自分で乗り越えることができないからです。「そっか、そう思ってるんだね」彼らの気持ちをまずは受け止める。

「思考を整理するサポートをする」
そして「どうしてそうおもうの?」「不安なことは何がある?」と質問を重ねてみてください。すると子どもなりの「不安に感じていること」を聞くことができるかもしれません。グーグルなどの世界企業でも注目が集まり、スポーツ選手も実践しているもののひとつに「マインドフルネス」があります。詳しい効果などは割愛しますが、マインドフルネスの最初の一歩は「気づくこと」なんです。「呼吸をしている」「音が聞こえる」といった具合にいまの自分の感覚、そして「いま、不安に感じている」と気づくことでストレスをすっと軽くしてくれます。

「矢印を自分に向ける」
自分の考えを否定せずに聞いてくれる姿勢に安心すると、子どもたちは自分と向き合うことができるようになります。相手に向いている思考を少しずつ「自分」に向けられるよう質問を重ねてみましょう。「県大会への予選はどうして突破できたと思う?」「どんなことを意識して取り組んできたの?」「この大会が終わったときにどうなっていたら最高?」子どもが自分のやりたいことや実現したいこと、取り組んできたことに思考を向けることができると、自然と表情が柔らかくなってくるかもしれません。

「変えられるものにエネルギーを向ける」
野球の試合中には「コントロールできること」と「コントロールできないこと」があります。この2つを整理できていないと、コントロールできないことにエネルギーを奪われ、本来の力を発揮できなくなってしまいます。
例えば、天気や気温、風といった天候や、グラウンドのサイズやコンディション、ストライクやボールといったレフェリーのジャッジや相手選手は自分たちの力では到底コントロールすることができません。また、過去や未来ももちろんコントロールできないのですが、子どもたちは「ここで打てなかったらどうしよう」とプレッシャーと戦っています。中学や高校受験を前にして「受からなかったらどうしよう」と頭を抱えていても、何も変わりません。
大切なことは「いま、自分に何ができるだろう?」と問いかけ、ペンをもって勉強したり、自分のコンディションを調整するために少し休むことが必要かもしれません。おなじように、未来に訪れる「結果」を心配することは自然ですが、そこにとらわれているエネルギーを「自分にできることは何があるかな?」と変換できるようサポートしてあげましょう。

「どんなときも応援する」
そして、僕たち大人に求められることは「どんなときも応援する姿勢」です。勝っているときだけ、うまくいっているときだけ応援してくれる人は本当の意味でのファンではありません。子どもにとってもっとも応援して欲しい人は、お父さんとお母さん。大好きな人に「どんなときも応援しているよ」と伝えてもらえることで、やる気が高まります。



*「ご用件」に「質問メンタルトレーナー」と書いて、藤代さんに教えて欲しい悩みや疑問をお送りください。

藤代圭一さんプロフィール

一般社団法人スポーツリレーションシップ協会代表理事。しつもんメンタルトレーニング主宰。
U20代表チームやインターハイ優勝チームなど全国優勝を目指すチームから地域で1勝を目指すチームまで、様々なスポーツジャンルのメンタルコーチをつとめる。
また全国各地にインストラクターを養成。その数は350名を超える。
著書に”スポーツメンタルコーチが教える「子どものやる気を引き出す7つのしつもん」(旬報社)”がある。

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