テンポを重視した練習
練習場所は、浅草駅から徒歩10分の場所にある台東区のリバーサイドスポーツセンター。東京スカイツリーがよく見える、いかにも下町らしい立地である。自前のグラウンドを持っていないため、週2日ほどは学校外に出て、練習をしている。行きも帰りも、西村監督が運転するマイクロバスで移動する。
「学校では柔道場などの狭いスペースでしか練習できないので、そのときはドリルを中心にした形作り、グラウンドを使えるときは実戦練習と、練習の目的をわけています」
この日は、小学6年生を対象にした体験練習会が行われていた。NPBジュニアトーナメントの代表に選ばれた選手もいて、さすがにレベルが高い。現在の駿台学園中では3年生の加藤光太郎、川村士音がジャイアンツジュニア、フォークナー騰馬がヤクルトジュニア、1年生の永田一心がヤクルトジュニア、林謙吾がジャイアンツジュニアの出身である。
練習は球場外でのアップのあと、ノックからスタート。6年生も混ざっての参加となったが、ノックを打つペースが速射砲のごとく、とにかく速い。6年生はこのペースに着いていくのが、まずは大変でボーッとしていたら、打球に対する準備が遅れてしまう。
指導するうえで、西村監督が大事にしている要素のひとつに「テンポ」がある。ピッチャーの1球ごとの投球間隔は6秒、攻守交代は60秒、三者凡退で終わるイニングは2分30秒というように、時間の目安をもうけている。
テンポには「緩急」があるものだが、新チームのうちは徹底的に「速いスピード」を意識させる。短い時間のなかで、どれだけの準備をして、プレーの優先順位を決められるか。頭の思考スピードを速くしなければ、次のプレーに着いていくことができない。だから、ノックの1球1球の間合いも短い。
技術的には、捕球体勢の低さが目立った。軟球はボールが高く弾みやすいため、腰高になる内野手が多いが、駿台学園中は低い。
そもそも、西村監督が打つノックが「低く速い」ということもある。この日のグラウンドは人工芝、さらに従来のB号よりも弾みにくいといわれるM号を使っていることも、低く速いゴロにつながっているだろう。
そばでノックを見ていた勝谷コーチが、守備の指導法について教えてくれた。
「地面を這う、一番低いゴロを基準にして、捕球練習をしています。下を基準にすれば、そこから上がったボールは、グラブを上げればいい。中途半端な高さを基準にしてしまうと、下も上も考えなければいけなくなります」
ゴロに対しては、「ボールの下を見るように」とアドバイスを送る。ただ、高いバウンドを同じように見ると、バウンドが合わせにくいことがあるという。
「高いバウンドのときは、ボールの上を見て、ボールが上がるところにグラブをかぶせにいく。このほうが、前にチャージしながら捕ることができます」
軟球をさばくには、必須の技術と言えるかもしれない。