話は更に具体的なコーチングの手法、現代の選手との接し方に及んだ。
「先ほど『質問、気づき、気づかせ、提案型』と言いましたが、ポイントは会話の中で選手が言う、選手が自分で決めることです。コーチと選手が共同作業で作り上げていくようなイメージですね。今の時代は中学生でも情報を持っています。ネットで検索すれば山ほど練習方法は出てきますから。まずコーチはその情報収集に負けたら終わりです。選手が指導者に対して『こんなことも知らないのか』と感じることは実際に起きていますし、それが選手の心がコーチから離れることに繋がります。
話を選手との会話に戻しますが、重要なのは上下関係を作らないこと。選手が腹を割って話さなければ意味がありません。そのためのテクニックとして『ミラーリング』というものがあります。相手の言ったことを繰り返すことで、共感を得るというものです。そうやって選手が『コーチは自分のことを分かってくれている』とい感じるようになったら腹を割って話すようになります」
少年野球でも高校野球でも現場でよく聞かれる罵声。しかしコーチが選手に対して“叱る”必要はあっても“怒る”ことは厳禁だという。
「選手に対して教えない、気づかせるという話をしましたが、危険な行為に対してはすぐに言う、叱る必要はあります。ただし“叱る”のと“怒る”のは違います。コーチが感情的に怒ってしまっては特にジュニア世代の選手は怖いと感じるだけです。怖いと感じたら選手はその場から逃げようとします。それでは何の解決にもなりません」
次回は「選手を叱る時、褒める時のポイントや更に指導者がコーチングをするうえで必要な要素」についてお届けします。
(取材・写真:西尾典文)
関連記事