高校生なんだから感情を出したりするのは仕方がないよという内容や激励の言葉が並ぶ手紙もあったが、自分の行動がこれだけ世間を揺るがす事態になっていたとは知る由もなかった。下を向きそうになった時期もあったが、同時に自分の気持ちのコントロールの大切さも知った。そのため昨秋は派手なアクションは一切封印し、ピンチを乗り切ってもベンチに戻った際に小さくこぶしを握るにとどめた。
そんな中、長澤監督は系列校の環太平洋大の体育学部に在籍するトレーナーを招いて西のメンタルトレーニングを始めた。とは言っても難しい内容ではない。過去のプロ野球や世界大会の映像を見ながら、この場面ではこの選手はどんな感情になっているのか、気持ちがどう揺れているかなどを分析するのだ。11月半ばに行われた際は09年のWBC決勝の日本と韓国戦の決勝のワンシーンを見た。
「イチロー選手の決勝タイムリーを打つまでの場面だったんですけれど、ファウルで粘っていた時は、あの冷静なイチロー選手でも自然体ではない表情が見えました。でも打つ直前から自然体になっているのが分かって。実際に余計な力が抜けていたとトレーナーさんも話されていました。イチロー選手のインタビュー映像も見ながら、この場面での心構えの意図なども説明を受けましたが、こういう大事な場面でこそ気持ちのコントロールが大事なんだと感じました」。
昨秋、8回に突如崩れてコールド負けを喫してしまった中国大会準決勝の広陵(広島)戦の自分をあらためて振り返ると、あの時の自分の感情が徐々によみがえってきた。