しかし、小中学生の野球の現場にはびこる「悪しき慣習」は、なかなかなくならない。この「悪習」が、こどもの野球人口激減の大きな原因となっていることを指摘した。
少年野球の「悪しき慣習」とは、
・暴力=論外
・長い練習 =朝から晩までの長時間の練習は子供の成長を阻害する恐れがある
・罵声=暴力と同じ
・勝利至上主義=一人の投手に何試合も連続で投げさせるなど
・一方的な指示=監督、コーチが上から支配
・十把一絡げ=子供たちを一列に並ばせて一、二、三と素振りをさせるような
・喫煙=違法ではないが、指導の現場で子どもたちの前で喫煙する
・アンフェアなプレー=トリックプレーを頭脳プレーと称賛する
・根性論=野球は遊びじゃないぞ!修行だ!
など。
これらは、事故やケガ、暴力につながる可能性がある。そして「野球離れ」の原因になっている。
選手数が6人に激減
宮坂氏が監督時代の4年前に、選手数が6人に減った。宮坂氏はこの時期、地域でヒヤリングを行った。すると少年野球が地域で評判が悪いことが分かった。「罵声(選手のかけ声ではなく大人の罵声が聞こえてくる)」、「煙草」、「駐車公害」、「お茶当番の負担」、「お金がかかる」、「指導者や保護者同士が派閥を作るなどごたごたしている」。
これらのほとんどは、前述の「少年野球の悪習」が要因となっていることがわかった。
そこで、宮坂氏は3つの施策を行った。
1.スポーツ少年団になった
スポーツ少年団は日本スポーツ協会とつながっている組織。明確な理念と考え方を打ち出してこれを公開している。スポーツ少年団に入ることで、日本スポーツ協会の理念を共有していると言えるようになり、暴力の根絶 プレーヤーズファースト コーチング、科学的根拠をもとにした指導、 地域活動への参加などの方針を打ち出した。
「うちの子はバンバン殴ってください」という親には「ウチはスポーツ少年団ですから、そういうことはしません」と言うことができるようになった。また地域活動への参加の一環として、地域のお祭り、清掃活動、ボランティアへもより積極的に参加するようにした。これによって少年野球の地域での評判も改善した。
「うちはスポーツ少年団ですから」ということで、無意味な議論がなくなり「指導者のあり方」が盤石になった。
2.AEDを購入した(4年前)
選手のことよりも、大人の都合が優先されることが多い中、AEDを買ったことによって、安全に対する意識が一変した。
例えば「けが対策で氷を持ってきてください」と保護者に言ってもなかなか集まらなかったが、アイスボックスいっぱいに集まるようになった。
また、球数制限などの運動制限への理解も深まった(水沢ライナーズでは、7~8年前から6年生で85球という球数制限を実施)。
活動時間の短縮や、熱中症計(WBGT計)の導入もスムーズに実施できた。今では、心臓震盪予防するための胸パッドを全員が身につけている。そして指導への意識が高まり、公認指導者の資格を取る人が増加している(スポーツ協会資格6人、他も含め9人が有資格者)。
「安全第一」の姿勢を明確にすることで、チームへの信頼を作ることができた。
3.地域のティーボール大会を主催した
選手たちに「友達呼んできな」といって、地域の小学生を集めて実施。3チームに分け、総当たり戦を3週にわたって行い、優勝を争った。3回とも参加の子には 記念品を進呈した。
参加者にはカードを配布して参加ごとにハンコを押した。
この大会には、親御さんも来る。親子ともども、グラウンドの空気に慣れ、チームの雰囲気にも慣れてくることで、選手の獲得へとつながった。春と秋の2回実施する中で、選手が集まった。きっかけ作りとして重要だった。
3つの取り組みを中心に、4年前6人だった部員数は、2年の間に29人に増加した。